防音室のレンタルサービスについて。防音工事と比較した時のメリットとデメリット
今回は、自宅に防音室を作りたいと考えた時、その費用負担を軽減してくれるのではないかと言われている、防音室のレンタルサービスについて解説します。
「部屋を防音室にしたい!」と考えた時には、我々のような防音工事の専門業者に依頼して、利用用途に叶う性能を持つ防音室を作ってもらうという方法をイメージする方が多いです。しかし、部屋を丸々防音工事を施し、防音室に作り替えるという方法は、やはり防音工事にかかるコストがネックになってしまう場合があります。例えば、6畳程度の部屋を夜間でも演奏可能なレベルのピアノ室にしようと思えば、150~250万円程度の工事費がかかることになるため、まとまったお金を用意するのが難しい…となかなか防音工事の実施に踏み切れないという方も多いです。
一方、防音室のレンタルサービスに関しては、月々1~3万円程度の費用を支払うことで、初期費用もなく高性能なユニット型防音室を設置することができます。つまり、防音工事のネックである、高額な初期コストの問題を解消してくれているわけですので、「まとまったお金を用意するのが…」と防音室を諦めていた方にとっては、非常に魅力的なサービスに感じるはずです。
しかし実は、この防音室のレンタルサービスには、さまざまな落とし穴が存在していますので、この記事では、防音室レンタルサービスのメリットやデメリットを解説します。
防音室のレンタルサービスとは?
それではまず、防音室のレンタルサービスがどういったものなのかについて簡単に解説します。防音室のレンタルサービスは、その名称通り、既製品の防音室を一定期間貸し出してくれるサービスになります。基本的に、ヤマハやカワイなど、ユニット型防音室を製造・販売しているメーカーやその関連会社、全国各地の楽器販売店などが防音室のレンタルサービスを行っています。つまり、防音工事業者に依頼して部屋にリフォームを施すようなことはなく、ユニット型防音室を購入するわけでもなく、一時的に借り受けるといった感じのサービスです。
例えば、以下のような感じで、ネット上で集客が行われています。
上の画像は、ヤマハミュージックさんが行っている楽器やユニット型防音室のレンタルサービスです。
ユニット型防音室は、さまざまな大きさの防音室が用意されていて、最も狭いもので0.8畳、広い物であれば3畳程度のものがあります。そして、レンタル料金は、防音室の広さによって異なり、最も安価な物であれば、月額1万円程度でレンタルすることが可能です。なお、ユニット型防音室を購入する場合であれば、防音室の性能もいくつか用意されているのですが、レンタルの場合は「Dr-35」に限定されるなど、制限がある場合が多いので注意しましょう。
防音室のレンタルサービスは、一般に販売されているユニット型防音室を、期間を決めてレンタルできるサービスです。費用は月額で支払うことになるため、イニシャルコストの負担がなくなるという点が大きなメリットとみなされています。ただ、階段上げなどの特殊作業が必要な場合、その費用分は初期に請求される可能性があります。また、レンタルした防音室を返却する時には、解体・運搬の費用がレンタル料とは別にかかるので注意しましょう。
防音室レンタルサービスのメリット
それでは、防音室のレンタルサービスのメリットについて代表的なものをご紹介します。レンタルで防音室を用意する場合、防音工事を行うのと比較すると以下のようなメリットが考えられます。
- ・まとまったお金を用意しなくても良い
最大のメリットは、基本的に月額費用のみで防音室を実現することができますので、防音室を用意するためにまとまったお金が必要ない点でしょう。防音工事を行う場合、200万円近いお金が必要になる場合があるのですが、レンタルで防音室を用意すれば、月額1~4万円程度の費用を支払うだけで済みます。これは、ユニット型防音室を一括で購入する場合と比較しても、大きなメリットと言えるでしょう。 - ・大掛かりな工事が不要
防音室のレンタルサービスは、既製品のユニット型防音室を借りるという方法です。つまり、部屋に大掛かりな工事をする必要がなく、短期間で防音室を用意することができます。特に、賃貸住宅や分譲マンションの場合、大掛かりなリフォーム工事が認められていない場合があり、こういった住宅が防音室を用意したいと考えた時には、非常に大きなメリットになると思います。
防音室のレンタルサービスについて、基本的にまとまったお金を用意する必要がないというのがメリットと考えられます。それ以外の点については、そこまで大きなメリットがあるとは言えず、その逆に以下のようなデメリットに注意しなければいけません。
防音室レンタルサービスのデメリット
ここまでの解説を見ると、まとまった初期費用もなく本格的な防音室が用意できる防音室のレンタルサービスは、非常に魅力的だと感じた人が多いと思います。当然、メリット面だけを見ると、とても優れたサービスに見えてしまうものです。
しかし実は、防音室のレンタルサービスには、決して見落とすことができないさまざまなデメリットが山積しているのです。ここでは、防音室のレンタルについて「良いな!」と感じた方が絶対におさえておきたいサービスのデメリットをご紹介します。
契約期間が意外に長い
「レンタルサービス」と聞くと、数日~1カ月単位で対象物品のレンタルができると感じてしまうのではないでしょうか?しかし、防音室のレンタルは、そこまで便利なものではなく、最低レンタル期間と最長レンタル期間が決められているのです。
例えば、上で紹介したレンタルサービスの場合、防音室をレンタルしたい時は、最低でも15カ月は借りなければいけません。そして、最長のレンタル期間は、48カ月と決まっていますので、一生モノの防音室として利用したいと思っている方にとっては、何度もレンタル契約を繰り返す必要があるわけです。その逆に、「防音室を体験してみたい!」程度の考えの場合でも、1年以上は借りなければならないわけです。
自宅に防音室を用意したいという方であれば、1~4年間だけなど、期間限定で必要になるケースは少ないです。つまり、このレンタル期間が縛られてしまう上、最長も最短も中途半端な期間設定になっている点が大きなデメリットです。
トータルで考えると決して安くない
レンタルサービスは、初期にまとまった費用が必要ないという点は確かにメリットと言えます。しかし、防音室を用意するためにかかるトータルのコストで考えると、決して安価なサービスではないという点が非常に大きなデメリットになります。
例えば、アップライトピアノを設置できる広さを持つ防音室のレンタルの場合、2畳タイプのユニット型防音室が、月額31,000円でのレンタルになります。これを最長レンタル期間である48カ月借りた場合、150万円近い金額になってしまうのです。また、レンタル終了時には、撤去費用として10万円程度かかるため、たった4年間使用できるだけの防音室に160万円のコストをかけることになるわけです。
防音工事による防音室は、150~200万円前後かかると言われますが、リフォームで作った防音室は使用期間などなく、一生モノの防音室として利用できます。(※性能は徐々に劣化します)そう考えると、防音室のレンタルサービスにかけるコストは、少し高すぎるとまで言えるのではないでしょうか?
防音室の性能や広さが限られている
防音室が欲しいと考えている方でも、利用目的はさまざまです。グランドピアノの演奏用となれば、広い空間が欲しいでしょうし、ホームシアターなどになると音響環境にもかなりこだわりたいものです。
これが、防音室のレンタルサービスの場合、防音性能は「Dr-35」の物に限定されていて、さらに防音室の広さも2畳程度のものまでしか貸し出していないお店が多いのです。つまり、防音室の利用目的によっては、最適な防音環境を用意することができず、無用の長物になってしまう可能性があります。そもそもユニット型防音室は、工場製造品となるので、画一的な性能が実現するものの、利用者の好みに合わせて性能や音響環境を微調整するということができません。
こういったことから、防音室のレンタルサービスでは、自分に最適な防音室を用意することができないという点が大きなデメリットになります。
まとめ
今回は、自宅に防音室を用意する方法の中でも、レンタルで防音室を用意する場合のメリット・デメリットをご紹介しました。
記事内でご紹介したように、防音室のレンタルサービスについては、初期にまとまった費用が不要で月額のみで防音室を用意することができる点がメリットと考えられています。しかし、その他の防音室の性能やトータルコストなどの面を考えると、専門業者による防音工事よりも優れた方法とは決して言えないと思います。
防音室は、利用者に最適な防音環境が出来なければ、お金をかける意味がありません。レンタルサービスの場合、防音室の広さや防音性能に限界がありますし、さらに既製品のユニット型防音室なので、音響環境を自分好みに合わせるなんてことができません。そのため、トータルでかなりのコストをかける割に、手に入る防音環境は自分にとって最適なものにならないという、非常に中途半端な結果になる恐れがあります。
なお、防音工事業者に防音室を依頼する場合でも、リフォームローンを取り扱っている業者であれば、初期にまとまったお金を用意せずに防音室を実現することが可能です。したがって、防音工事の業者探しの際に、分割払いが可能かを最初に確認すると良いでしょう。
防音室のレンタルサービスは、引っ越しを前提としている音楽系の学生さんや賃貸で大掛かりな工事ができないという方であれば、オススメ出来る方法ですので、どのような防音室があるか確認してみるのはオススメですよ。