塗装工事は家の防音対策として有効!?屋根・外壁塗装による防音対策のメリットと注意点
近年では、住宅周りの建材は、飛躍的に進化している高性能なものが登場しています。例えば、断熱材などの進化により、住宅の断熱性が向上したことで、日々の生活で消費するエネルギーが削減でき、光熱費削減や環境負荷低減などを目指せるといった商品が一般的になっています。
そして、住宅周りの建材の中でも、外壁や屋根の塗装工事に使用される塗料の進化はすさまじいスピードで進んでいます。塗装工事の塗料は、建物の外観イメージを保持するためのものというイメージが強いのですが、最近では、塗るだけで外壁や屋根に遮熱や断熱効果を持たせることができるような機能性塗料が登場しています。そして、そんな塗料の中には、住宅周りに存在する騒音をシャットアウトしてくれる防音効果をもたらすものまであると言われているのです。
そこでこの記事では、外壁や屋根の塗装工事で家に防音効果をもたらせることのメリットや、塗装による防音対策の注意点をご紹介します。
防音のメカニズムについて
塗装工事による防音効果について解説する前に、まずは防音のメカニズムについて簡単に紹介します。まず、『防音』という用語についてですが、これは何らかの特定の対策を示しているのではなく、あくまでも概念的なものです。防音は、遮音と吸音という二つの対策を組み合わせることで、最終的に生じる効果の事を指しています。
したがって、自宅の防音効果を高めたいと考えているのであれば、この遮音と吸音の二つの違いについて知っておく必要があります。
※厳密には、防音はもっと複雑です。
遮音について
遮音は、『遮る(さえぎる)』という言葉が使われているように、音が届かないようにする対策の事を指しています。皆さんの耳に聞こえている音は、空気の振動が広がることで伝わるのですが、この振動そのものを、何らかの物体で跳ね返したり、通さないようにする対策が『遮音』で、外からの騒音が室内に入ってくるのを防ぐというのが主な目的です。
具体的な遮音対策としては、鉄やコンクリート、石膏など、重量があり、かつ密度が高い物体を配置し遮音効果を高めるといった方法となります。遮音は、重くて密度が高いものほど高い効果を得られます。
吸音について
吸音は、空気中を伝わってきた音を吸収して反響しないようにする対策の事です。遮音は、伝わってきた音を遮ることでカットするのですが、吸音は伝わってきた音の威力を抑制するといった感じです。
音は、物にぶつかって反射すると反響します。そのため、ぶつかる壁が多ければ、あちこちで反響が発生するようになります。山の上で叫んだ時に、自分の声が遅れて聞こえる「やまびこ」と呼ばれる現象も、声が反響して起こっている現象です。吸音は、音が反射しにくい素材を壁や天井などに設置することで、音がその物体にぶつかった時に吸収され、反響音が減り、静かになるという効果をもたらすのが目的です。
具体的な吸音対策については、多孔質と呼ばれる表面にたくさんの穴がある物体を利用します。例えば、グラスウールやロックウールなどの断熱材や、もっと身近なものであればフェルト生地のような物が吸音効果を持ちます。音が、こういった多孔質の物体にぶつかった時、穴の中で音エネルギーが熱エネルギーに変換され、音が小さくなるというメカニズムになります。
防音は「遮音+吸音」で実現する
遮音と吸音は、上述したように、それぞれが異なる働きを持っています。そして、どちらか一方の機能だけを高めてあげても、期待するような防音効果を得ることができません。
例えば、遮音は、音を小さくする効果を持っていないため、音が伝わってきたときにはなす術がありません。また、吸音は音を跳ね返す力を持っていないので、物体の吸音効果を超えるほどの大きな音が伝わってきたときには、吸音材だけで静かな空間を作ることができないのです。
つまり、防音効果を期待する時には、遮音と吸音について、バランスよく機能するように組み合わせることが大切です。
防音環境を塗装工事で実現するメリット
それでは、塗装工事によって屋根や外壁に防音効果をもたらせる場合のメリットについて考えてみましょう。塗装工事と防音効果は、その関連性を感じない方が多いと思いますが、実は、断熱塗料として有名な日進産業の『ガイナ』という塗料は、騒音対策に効果を持つ塗料としても有名です。
それでは、こういった防音効果を持つ塗料を使用した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
①外壁全体の工事よりも安価
一つ目のメリットは、防音対策として外壁の工事を行うのと比較すると、はるかに安く対策ができるという点です。防音対策の目線で外壁工事を行う場合、遮音性を高めるため重量のある建材を採用する、また吸音効果をもたらせるために壁の中に断熱材を充填するなど、かなり大掛かりな工事が必要になります。こういった工事は、既存の壁を一度解体する工事まで必要になりますので、6畳程度の部屋を防音化する場合でも数十万円以上のコストがかかります。これが、家全体の壁を防音化するためには、200万円以上のコストを覚悟しておかなければならないでしょう。
一方、ガイナなど、防音効果を期待できる塗料を使用した塗装工事の場合、よほど外壁面積が広い家でもない限り、その工事費は、100万円前後が相場です。つまり、外壁塗装による壁の防音化は、安価に美観の回復と防音効果を得られるという非常に大きなメリットが期待できます。
②工事期間中も日常生活に影響が少ない
塗装工事は、本格的な防音リフォームと比較すると、日常生活への影響が少ない点もメリットです。塗装工事は、外壁や屋根に行う訳ですので、家の中にいれば工事の影響をほとんど感じることはありません。もちろん、工事の際は、足場で家が囲まれる、塗料の臭いがあるので窓を開けられないなど、我慢しなければならない問題はいくつかありますが、工事しながら普通の生活を進めることは問題なく可能です。
これが、家全体の防音化を目指す場合には、多くの建材の置き場が必要になりますし、サッシやドアの交換まで行う時には、一時的にその部屋が使えなくなったりします。つまり、塗装工事は、日常生活にあまり影響を与えずに、防音効果を期待できる点がメリットです。
塗装による防音対策の注意点
ここまでの情報を見ると、塗装工事を行うことで防音効果まで得られるとは「なんてすごい塗料なの!」と驚いた方も多いかもしれません。しかし注意してほしいのは、防音工事業者からすると、塗装工事で得られるような防音効果など、たかが知れています。現在、あなたが何らかの音の問題を抱えているとして、「防音効果がある塗料」を使って塗装工事を行っても、気にならないほど小さな音になるとは考えない方が良いです。
上述した騒音対策ができると言われている塗料『ガイナ』の防音効果というのは、我々のような防音工事業者が行う防音対策と比較して、「効果がある」と言っているのではなく、あくまでも一般的な塗料と比較した場合に、音の振動を減退することができるという意味で「騒音対策にも有効」と言っているだけです。つまり、比較対象が、何の防音効果も持っていないものとなっているわけですので、人の悩みになるような大きな音を解消できるほどの効果を期待することは難しいと考えるべきです。
例えば、以下のようなケースで防音対策をしたいと考えている場合、外壁塗装で防音効果を求めるのは難しいと考えましょう。
- ・住宅の前が公園で子供の遊ぶ声がうるさくて、それを防止するための防音対策
- ・電車や自動車の走行音が室内に入ってこないようにしたい
- ・楽器やカラオケを自宅で楽しめるようにしたいといった、本格的な防音工事
このように、何らかの騒音を外壁部分でシャットアウトし、室内を静かな空間にしたいと考えている場合、外壁塗装でそれを実現することはできないと考えた方が良いです。もちろん、何の効果もないというわけではないのですが、人の耳で聴き分けられるレベルまで音が小さくなる可能性は少ないです。人の耳は、10dB減音できたとしても、そこまでの違いを感じないという方も多いので、塗装による防音効果は、しっかりと発揮できていたとしても、何の効果も感じないという人が多いでしょう。
上述したガイナなどは、断熱効果を持つ塗料として有名ですので、その副産物として外壁の防音性を高められるという点は確かにメリットだとは思います。しかし、主目的が防音なのであれば、しっかりとした防音対策を行うべきと考えてください。
まとめ
今回は、急速に進化している住宅周りの建材について、塗装工事に使用される塗料の防音性に注目してみました。この記事でご紹介したように、機能性塗料の中には「塗るだけで騒音対策になる!」と紹介されているものがあるのですが、防音工事業者からすると、塗装工事で作られる塗膜で人の耳で聴き分けられるほどの防音効果を得ることは非常に難しいと言わざるを得ません。記事内で紹介したように、音を遮る効果は、物体の重さや密度、厚さなどが関係してくるのですが、塗装工事による塗膜は、ほんの数mmしかありません。このような薄くて軽い物質では、高い遮音効果を実現することが難しいわけです。
もちろん、塗料に何の防音効果もないと言っているわけではなく、防音工事として塗装工事を選ぶのが間違いという意味です。あなたが、美観維持を目的に自宅の塗装工事を検討しているのであれば、その副産物として多少なりとも外壁や屋根の防音性能が高まるのであれば、損はしないと思います。ただ、現在、何らかの音の悩みを抱えている方が、その音の問題を塗装工事で解消するのは間違いです。人が悩むほど大きな音は、適切な防音工事を行わなければ防ぐことができませんので、我々のような防音工事業者に相談してください。