楽器別、防音室の選び方をご紹介します!

今回は、自宅に防音室を導入しようと考えている方に向け、楽器別にどのような防音室が必要なのかについて解説していきたいと思います。

一口に防音室といっても、何のために防音室が必要なのかによって実現しなければならない機能性などが大きく変わってきます。例えば、防音室を導入する理由が、自宅でピアノやトランペット、ギターなど、近隣住宅に気兼ねなく演奏をしたいからというのであれば、楽器の演奏音が外に漏れ出ていかないように高性能な防音室が必要です。ただ、「お隣の生活音が気になるから…」「目の前の公園で遊ぶ声がうるさいから…」など、外部からの騒音を防ぐ目的なら、本格的な防音室は必要ありません。

そして、防音室の機能については、中で演奏する楽器の種類によっても、求められる性能が大きく変わると考えてください。というのも。楽器の中には、空気音の対策よりも、固体音の対策が重要になるようなケースもあり、使用する楽器ごとにきちんと防音室の設計をしなければ、防音室があるのにクレームが…なんてことになりかねないのです。
そこでこの記事では、これから防音室の導入を検討している方に向けて、楽器の種類別の注意点をご紹介します。

楽器別、防音室の特徴について

それでは、楽器別の防音室の特徴について簡単に解説していきます。上述しているように、自宅に防音室を導入する場合でも、その利用目的は人それぞれです。楽器用防音室といっても、防音室の中で演奏する楽器にはさまざまなものがありますし、楽器によって音の大きさや種類などが異なることから、防音室に求められる機能が違ってしまう訳ですね。

ここでは、代表的な楽器について、防音室を導入する際の注意点をご紹介しておきます。

ピアノ用防音室について

それではまず、防音工事の匠でも、お客様からの相談が最も多い、ピアノ用防音室について解説していきます。なお、ピアノにも、アップライトピアノ、グランドピアノ、電子ピアノなど、さまざまな種類が存在していますが、ここではアップライトピアノとグランドピアノについて解説しておきます。

  • アップライトピアノ
    アップライトピアノは、グランドピアノほどの音量にならないと考えている方が多いのです。ただ、音色の幅では、グランドピアノの方が圧倒的に大きいですが、ピアノが出す音エネルギーの面で考えた場合、大きさが異なる2つのピアノは、ほぼ同じ程度の音エネルギーとなります。つまり、空気音対策については、アップライトピアノでもグランドピアノでも、同じレベルの対策が必要です。なお、ピアノ用防音室の注意点としては、想像以上に振動が床に伝わる楽器ですので、固体音対策をしっかりしなければならない点です。ピアノによる騒音トラブルは、打鍵音やペダルを踏む時の振動が床を伝わり、階下の方とトラブルになるケースが多いので、床面の防音対策をしっかりと行ってもらうようにしましょう。なお、アップライトピアノは、背面から音が出る楽器ですので、ピアノの向きに注意して設置するようにしましょう。
  • グランドピアノ
    グランドピアノは、上下・横に音が響きやすくなっていますので、その点を考慮して空気音や固体音の対策をしてもらうようにしましょう。上述しているように、音のエネルギー的にはアップライトピアノと同程度なのですが、音色の幅が大きいので、その点には注意しなければいけません。なお、グランドピアノは、アップライトピアノと比較すると、ピアノ本体がかなり大きくなります。アップライトピアノであれば、防音室の仕上がりで2~3畳程度あれば演奏可能ですが、グランドピアノの場合、4畳程度ないと使いづらい防音室になってしまいますので、どの部屋に防音対策を施すのかは慎重に検討すべきと考えておきましょう。

このように、同じピアノでもアップライトピアノとグランドピアノでは注意すべきポイントが多少異なります。なお、ピアノが出す音量については、演奏者の技量によっても異なりますので、その辺りも考慮して必要な防音性能を考えておきましょう。

> 防音室の匠が提供するピアノ用防音室

木管楽器用防音室について

次は木管楽器を自宅で演奏したいという方が注意しておきたいポイントについてです。ちなみに、木管楽器と金管楽器の違いがイマイチ分かっていないという方も多いようですが、気になる方は、以下の記事を参考にしてみてください。

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  • フルート
    フルートは、音域が高い楽器ですので、比較的防音が容易な楽器に分類されると考えて構いません。フルートの音は、壁に反射しやすいという特徴があるので、低音が出る楽器よりも音漏れがしにくいのです。ただ、それなりに高い技量を持った人が演奏する場合、90dB程度の大きな音が出ますので、しっかりと音漏れしないような対策が必要になります。ちなみに、フルートの防音室であれば、周囲の環境にもよりますが、遮音性能はDr-30~35でも夜間の演奏が可能な場合があります。このように、防音が比較的容易なフルートは、ユニットタイプの小さな防音室を設置するケースが多いのですが、この場合、ギリギリのスペースで演奏することになるので、自分が吹いている音が壁で反響し、長時間の演奏が難しいという声が多いです。フルート用の防音室でも、快適に利用したい場合、それなりの広さを持った防音室を作るのがオススメです。
  • クラリネット・オーボエ
    クラリネットやオーボエについては、音の大きさ的にはフルートと同程度の90dBぐらいになります。また、音域も基本的には中音域の楽器ですので、比較的に防音がし易い楽器と考えて構いません。ただ、クラリネットでも、バスクラリネットを演奏する場合は、低音が出ますし、音も大きくなるので、壁から音が抜けてしまいやすくなります。したがって、演奏する楽器によっては、フルートよりも高性能な防音室が必要と考えておきましょう。なお、クラリネットやオーボエは、フルートのように横に構えないので、防音室内のスペースは狭くても構いません。ただ、椅子や楽譜を置いて演奏する場合には、3畳程度確保しておくのがオススメです。
  • サックス
    木管楽器の中でも特に人気の高い楽器がサックスです。なお、サックスには、ソプラノサックスやアルトサックスのような中高音域のものと、テナーサックスやバリトンサックスのような中低音域が特徴のものがあります。つまり、どのタイプのサックスを演奏するのかによって必要な防音性能が大きく異なってしまうという点に注意しましょう。低音が出るテナーサックスやバリトンサックスは、音の大きさも非常に大きく、110dBほどになります。低音が壁を抜けて伝わってしまう可能性がありますので、夜間の演奏を想定している場合、高性能な防音室が必要と考えておきましょう。ソプラノサックスやアルトサックスも音は大きいのですが、中高音域の楽器ですので、防音は比較的容易です。ただ、防音室内で音が反射しますので、吸音対策をしっかりしないと、長時間の演奏が苦しくなります。

木管楽器は、狭い演奏スペースでも問題のない楽器と考えられているため、防音にかかるコストを安価にするため、小さなユニット型防音室を検討する方も多いです。ただ、ギリギリのスペースしかないユニット型防音室を選んでしまうと、防音室内で音が反響してしまい、とても長時間の演奏が出来ない…と後悔してしまう方も多いです。防音室は、単に音漏れを防げばよいのではなく、使い勝手のことも考えておかなければいけません。

> 防音室の匠が提供するクラッシック楽器用防音室

金管楽器用防音室について

次は、トランペットやトロンボーンなどの金管楽器についてです。金管楽器も、使用する楽器によって音の特徴が大きく異なることから、防音室に求められる性能などが違ってしまいます。

  • トランペット
    トランペットは、楽器の中でも非常に大きな音が出るというイメージを持っている方が多いです。実際に、110dBほどの大きな音が出る楽器なのですが、音域は中高音ですので、壁に音が反射して外には出にくい性質を持っています。さらに、トランペットは、音が出るベルの正面と、側面では大きく音の大きさが異なり、なんと側面になると約10dBほども音が小さくなるのです。「何だ10dBか…」と思うかもしれませんが、人の耳で感じる場合、10dB違うと、音が半分程度に聞こえると言われています。したがって、トランペットを演奏する時には、防音室を作った上で、配慮したい方向と反対を向いて演奏するようにしましょう。
  • トロンボーン
    トロンボーンは、音の大きさだけで見ると、トランペットと同程度の110dBぐらいの音量になります。ただ、トランペットよりも音が出るベルが大きくなりますし、低音が出るという性質から、より高性能な防音室が必要と考えておきましょう。なお、トロンボーンは、スライドをいっぱいに伸ばした場合、2m以上の長さになってしまいますので、それなりに広いスペースが必要になると考えておきましょう。一般的に、対角線上に防音室を利用すると考えても、2畳以上の広さが無いと使いづらい防音室になってしまうでしょう。

> 防音室の匠が提供するクラッシック楽器用防音室

弦楽器用防音室について

最後は弦楽器です。弦楽器は、そこまで大きな音が出ない楽器と考えるかもしれませんが大きな間違いです。他の楽器と比較しても、楽器ごとの特性が全く異なるので、防音室を作る時には、慎重に性能を検討しなければいけません。

  • ヴァイオリン・ヴィオラ
    弦楽器の中でも、ヴァイオリン・ヴィオラは高音域が特徴ですので、比較的防音が容易と考えておきましょう。ただ、音の大きさは、100dBぐらいになりますので、しっかりとした性能を確保しておかなければいけません。また、防音室内の音響について、しっかりと響くような音環境を求める方が多いです。なお、ヴァイオリン・ヴィオラ用の防音室は、スペース的にはそこまでの広さを求めないのですが、天井の高さには注意が必要です。というのも、演奏者の身長などによっては、立って演奏する場合、天井が210cm以下になると、弓が天井にあたってしまうことがあります。
  • チェロ・コントラバス
    チェロやコントラバスも、音の大きさは100dBぐらいなのですが、低音楽器ですので、高い遮音性能が必要と考えてください。さらに、このタイプの弦楽器は、エンドピンから振動が床に伝わりますので、その部分の振動対策が必要になります。例えば、エンドピンの下に分厚い防振ゴムを設置しておくといった対策がオススメです。
  • アコースティックギター
    アコースティックギターの中でも、フォークギターは中音域が出る楽器ですので、防音は比較的容易です。ただ、クラシックギターは、チェロとほぼ同じ低音域の楽器となりますので、防音がしにくくなると考えましょう。なお、音量的には80dBぐらいですので、そこまで高性能な防音室は必要ありません。しかし、弾き語りでヴォーカルの録音なども考えているという場合、音響調整は慎重に行っておくべきです。
  • エレキギター・エレキベース
    エレキギター・エレキベースは、上述した弦楽器の防音とは根本的にモノが違うと考えておきましょう。というのも、エレキギター・エレキベースに関しては、アンプを通して音を出すケースが多く、この場合の音量は120dBもの大きな音が出ます。さらに、アンプの振動が周囲に伝わってしまうことになるので、防音が非常に難しい部類の楽器です。エレキギター・エレキベースは、ユニット型防音室では、満足に音漏れを防ぐことができない可能性が高いので、我々のような防音工事業者が一から防音室を作らなければいけません。

弦楽器は、演奏する楽器の種類によって、求められる性能の幅が非常に広いので注意しましょう。特に、エレキギターやエレキベースになると、弦楽器用の防音室というよりは、スタジオレベルの防音性能が必要になります。

> 防音室の匠が提供するクラッシック楽器用防音室
> 防音室の匠が提供するライブハウス用防音室

まとめ

今回は、楽器の種類別に、防音工事の注意点を解説してきました。この記事でご紹介したように、防音室を必要とする理由は人それぞれですし、防音室内で何をするのかによって必要な性能が大きく異なるということを忘れないようにしましょう。

なお、管楽器や弦楽器用の防音室については、ユニット型防音室を自宅に設置することで対処しようと考える方も多いです。もちろん、高性能なユニット型防音室であれば、音漏れにより近隣住宅に迷惑を掛けてしまうようなことはほとんどなくなると思います。ただ、ユニット型防音室は、非常に狭い作りになっているうえ気密性が高いので、長時間防音室内で楽器の練習をするのがなかなかしんどい…という声が多いです。

ユニット型防音室は、フルリフォームタイプの防音室よりは、安価で導入できますが、本体価格と設置工事、使いづらさを考えると、フルリフォームタイプの防音室の方がコスト的にもメリットが多いという方も多いですよ。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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