騒音の苦情の大半は集合住宅で発生している?今、賃貸物件には高い防音性が求められる!

今回は、近年の賃貸物件選びのポイントとして、年々その重要度が高くなっていると言われる、居室の防音性能について解説していきたいと思います。コロナ禍以降は、テレワークが一般化されるなど、人々の在宅時間がどんどん長くなっていて、集合住宅での騒音トラブルが急増していると言われています。こういった状況が要因なのか、近年ではアパート経営者の方から、物件内で騒音による居住者間トラブルが起きないよう、防音対策をしたいのですが…と言った問い合わせが増加しています。

木造の建物が多いアパート経営では、入居者からの苦情・クレームは避けられない問題なのですが、その中でも音の問題に関する苦情は昔から多いと言われています。そして、コロナ問題以後は、日中も自宅で仕事をする方が増えており、上下階の入居者間で足音でトラブルになるとか、web会議の話し声でトラブルになるなんてことが急増しているのです。こういった問題に関しては、「お互い様なのだからある程度は我慢してほしい…」と言うのがオーナー様の考えだと思います。しかし、物件の貸主には、賃借人に対して「使用収益させる義務(民法601条)」があり、入居者が平穏に通常の生活を営める環境を提供しなければならないと定められているのです。

そこでこの記事では、アパートなどを経営している大家さんに向けて、集合住宅での騒音トラブルとその対策をご紹介していきます。

賃貸住宅での騒音事情について

コロナ禍以降、騒音トラブルが増加しているという情報は皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか?例えば、テレワークやリモート学習が当たり前になったことで、今まで気づけなかった日中の家周辺の騒音を実感し始めた…と言う方も多いですし、夜間も飲食店が時短営業の影響で、早めに帰宅するのが習慣化した方も多く、通常の日常を取り戻した現在でも早めに帰宅することで音の悩みを抱えているという方が少なくないとされています。

そして、こういった騒音問題に関しては、建物の特性上、一戸建てに住む人と比べてマンションやアパートなどの集合住宅に住む人の方が迷惑に感じていると言われています。さらに、集合住宅での騒音問題の難しい点は、騒音の原因が洗濯機や掃除機の音など、誰もが生じさせてしまう可能性がある生活に欠かせない音であるケースがほとんどなのです。つまり、音を根本的に排除することが難しいことから、解決のための対策がなかなか見えてこないわけです。ここではまず、近年増加していると言われている騒音問題事情を簡単にご紹介しておきます。

近隣騒音を迷惑に感じた方の約8割が集合住宅

環境省が公表した資料では、近隣騒音について迷惑に感じたことがあると回答した人は、なんと全体の60%を超えており、生活者の2人に1人以上は近隣騒音に悩まされた経験があるという結果になっています。さらに、注目したいのは、近隣騒音を迷惑に感じたことがあると答えた方について、それぞれの住居形態を見ると、なんと約80%が集合住宅在住者と言う結果になっているのです。これからも分かるように、近隣騒音によるトラブルの多くは、集合住宅で発生しているわけです。

そして集合住宅における主な騒音源は以下のような物だと言われています。

  • ・洗濯機や掃除機、エアコンの室外機などの住宅用設備の騒音
  • ・浴室や便所の給排水音、扉の開閉音など
  • ・テレビ、ピアノ、ステレオなどの音
  • ・人の声や足音、ペットの鳴き声などの生活・行動による生じる音

このように、人が生活するうえで、どうしても生じてしまうような生活音が他人に迷惑をかけているというのが現状です。正直、お互い様と言えるような音なのですが、不特定多数の人が入居する集合住宅では、ライフスタイルの違いなどから戸建てに比べて騒音トラブルが起きやすいわけです。さらに、コロナ禍以降は、人々の在宅時間が長くなっていることから、余計に騒音トラブルが多くなっているのです。実際に、環境省の調査によると、騒音に係る苦情件数は、令和4年度で20,436 件で、以下のグラフから分かるようにコロナ以前と比較してもかなり増加していると言えるのです。

引用:環境省「令和4年度騒音規制法等施行状況調査の結果について

このような状況は、アパートなどの賃貸経営者にとっては非常に悩ましい問題となっています。上述したように、貸主には、賃借人が「平穏に通常の生活を営める環境を提供しなければいけない」と言う義務があることから、苦情を無視するわけにはいかず、何らかの対処をしなければならないからです。

大家さんの騒音苦情への対処とは

自分が所有する物件で騒音に関するトラブルが生じた場合、物件オーナーとして何をしなければならないのでしょうか?上述したように、集合住宅での騒音源は、人が生活するうえでどうしても生じてしまうような騒音が多いですし、正直対処のしようが無いのでは…と考えてしまう方も多い事でしょう。しかし適切な対応をしなければ、大きな問題に発展してしまいますので、まずは騒音についての相談・苦情について、しっかりと調査を行い、騒音主に何らかの注意をしましょう。なお、集合住宅で騒音問題が発生した時には、被害を訴えている入居者だけでなく、当事者以外の入居者からも細かく状況をヒアリングする必要があると考えましょう。

物件オーナー様などが確認すべきポイントは以下のような内容です。

  • ・騒音に気付いたのはいつからか(わかる範囲で具体的に)
  • ・どのような音なのか(設備音、足音、話し声など)
  • ・音が聞こえる頻度や時間帯など(毎日なのか、特定の時間帯なのか)
  • ・どこから音が聞こえるのか(上の階、隣の部屋など)

上記のようなポイントをしっかりと確認しておきましょう。ただし、集合住宅での騒音問題に関しては、被害を訴えている方が「絶対に正しい」と言う視点を持つのはNGです。例えば、被害を訴えている方が神経質すぎるケースなどもあり、騒音主側では対処のしようが無い程度の受忍限度の範囲を超えていないケースもあるからです。そのため、音の問題について、当事者以外の入居者にも「騒音を感じることがあるのか?」と確認しておきべきです。

こういった状況確認が適切にできたら、いよいよ具体的な対策を実施していくことになります。

賃貸住宅での騒音への対処とは

それでは、近年急増していると言われている集合住宅での騒音トラブルについて、どのような対処をしていけば良いのかについて解説していきましょう。現在では、賃貸経営を行っている方でも、管理に関しては管理会社に任せているというケースが多くなっています。ただ、管理会社の中には、入居者からの騒音のクレームがあったとしても放置してしまうケースがあると言われているので、オーナー様自身で物件の管理状態は細かくチェックしておきましょう。

騒音問題の対策については、上述した初動調査により、「確かに受忍限度を超えた騒音がある!」と判断できた場合、できるだけ早く解決に動かなければならないと考えてください。そうしなければ、優良な入居者であるはずの被害者が、騒音を原因で退去してしまうことになり、賃貸経営に悪影響が生じてしまうでしょう。そして、騒音主に何も注意しなければ、トラブルを引き起こす人だけが残ってしまい、その後の賃貸経営に影を落とす結果になります。

ここでは、いくつかの騒音問題への対策をご紹介しておきます。

①騒音主に注意をする

まず、賃貸物件での騒音トラブルの解消方法として王道なのが、騒音主に騒音を出さないように注意を促すという対策です。この対策については、まずは、全体掲示板などで「騒音の苦情があるから騒音を出さないように!」と言う注意勧告を掲示する。そして、それでも騒音が解消しない場合、騒音主と考えられる人に手紙などで、「騒音を出さないように」といった注意喚起をするという流れが一般的です。

多くの場合、こういった手段をとれば騒音問題を解消できますが、それでも騒音を出すという場合、強制退去などの強い措置をするしかないでしょう。

②物件の防音対策を高める

近年増加している、集合住宅での騒音対策がこちらです。上述したように、集合住宅での騒音トラブルは、人が生活するうえでどうしても生じてしまうような音が原因となっているケースが多く、騒音主と指摘される方についても、悪気があって騒音を出しているわけではないケースがほとんどなのです。そのため、「騒音を出さないで!」と注意されたとしても、問題を解消することができないケースがあるわけです。特に、コロナ禍以降は、人々の在宅時間が長くなっていることが要因のケースもありますので、入居者の努力ではトラブルの解消が難しいケースが多いのです。

そのため、ここ最近、退去者が出たタイミングなどに、居室の防音性能を高めるためのリフォームが行われるようになっています。例えば、窓部分の防音性を高めるため、防音ガラスに交換したり、サッシを交換したりするケースがあります。他にも、隣室との境界壁に遮音材や吸音材を設置して、防音性を高めるなどと言った手法が多いです。
なお、こういった居室の防音対策は、「防音性が優れた部屋!」「断熱性が高く空調コストが安くなる部屋!」などとアピールできるようになるため、単なる防音対策ではなく空室対策になるという点が大きなメリットになります。

まとめ

今回は、コロナ禍以降、急増していると言われている、集合住宅での騒音トラブル事情についてご紹介してきました、この記事でご紹介したように、コロナ問題以前と以後を比較した時には、何らかの音に悩み騒音の苦情を訴える人の数が急増しています。これは、コロナ禍以降、テレワークと言った新しい働き方が国内でも一般化してきたことで、人々の在宅時間が長くなったことが主な要因と言えるでしょう。

特に、アパートやマンションなどの集合住宅は、人々の生活空間が非常に近いことから、騒音トラブルが発生する可能性が非常に高くなるでしょう。そのため、物件探しをする方の多くが、「居室の防音性能」に注目するようになっていると言われています。現在、賃貸経営を行われている方で、空室対策目的で防音工事をお考えなら、ぜひ弊社までお問い合わせください。

参照:環境省「令和4年度騒音規制法等施行状況調査の結果について

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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