空室対策で『ペット可』をご検討中の賃貸オーナー様へ!実施する前に押さえておきたい注意点!
今回は、賃貸物件オーナー様に向けて、空室対策などのために、もともとペット不可だった物件を『ペット可』物件に切り替えする前におさえておきたい注意点をご紹介します。
コロナ禍の現在では、テレワークの影響などで在宅時間が長くなっている、飲食店の時短営業などで外食の機会が少なくなった…などという影響からか、ペットを飼い始めるという方が急増していると言われています。もともと、「命の大事さを教える」などという目的で、お子様が生まれたタイミングなどにペットを飼い始めるなんてことは多かったのですが、コロナ禍の現在、一緒にいられる時間が増えたことで、単身者が犬や猫などを飼い始めることも多いようです。
しかし、日本国内の賃貸物件事情を考えてみると、『ペット可』物件というのは非常に少ないのが現状です。最近でこそ「ペットを飼う人のための物件」などが登場していますが、まだまだ「ペット不可」の物件の方が多く、東京などの首都圏ではペット可物件は全体の約10%強ぐらいしかないと言われています。こういった事情から、「ペットを飼いたい」と考えている方にアピールする目的で、もともとペット不可だった物件が『ペット可』に切り替えているそうです。
しかし、安易に『ペット可』物件にしてしまうと、想定外の問題がたくさん生じてしまい、余計に空室が生じてしまう危険もあると言われているのです。そこでこの記事では、防音工事業者目線で、ペット可物件に切り替えることの問題点をご紹介します。
ペット可にすることのメリットとは?
それではまず、ペット不可物件が『ペット可』に切り替えることで得られるメリットをいくつかご紹介しておきましょう。もともとペット不可の物件が『ペット可』にするのは、以下のようなメリットを期待してのことだと思います。
入居率の改善
「空室対策を考えてペット可にする」わけですから、最も大きなメリットは物件の入居率改善という点が大きなメリットと捉えられているのだと思います。近年では、ペットは単なる愛玩動物として飼うのではなく、家族の一員として迎えると考える方が多く、大型犬などでも室内飼いすることも珍しくありません。しかし、賃貸住宅で暮らしている方からすれば、ペットを飼いたいと考えても、現実的に『ペット可』の物件が少なく、なかなか飼えない…という事情もあるのです。
ちなみに、一般社団法人ペットフード協会が行った「平成30年全国犬猫飼育実態調査」によると、今後のペットの飼育意向率は、犬が「20.7%(現在の飼育率は12.6%)」、猫が「15.8%(同9.8%)」となっており、ペットを飼育できる環境が整えば犬または猫を迎えたいと考えている方も多いのです。
さらにここにきて、新型コロナウイルス問題の影響で、テレワークが当たり前となってきており、単身者でもペットを飼うことができるという状況が整ってきています。したがって、周辺にペット可物件が少ないという場合、『ペット可』にするだけで、劇的に入居率がアップするということも考えられます。
収益改善
入居率がアップすれば、自然と家賃収入が増えますので、収益状況も改善されます。さらに、ペット可にするために、何らかの設備を整えるなどという場合、初期投資が必要になるものの、家賃を上げられるという点も収益を改善させる要因になってくれるでしょう。一般的に、ペット可物件にする場合、家賃や敷金などを上げるという対応がとられます。これは、退去時のクリーニング費用などが高くなることや、ペット用の設備を整えるという名目があるからですね。
そして、ペット可物件にすることで収益改善がされるもう一つのポイントは、「長期的に入居してもらえる可能性が高まる」という点です。これは、上述したように、賃貸物件がたくさんある中でも『ペット可』の物件はまだ少なく、次の物件を探してもなかなか好条件の物件が見つからないためです。長期入居してくれるということは、空室対策のことも考えなくて良くなりますので、収益が安定するというメリットも得られます。
ペット可にするなら、防音対策が必要!
ここまでの情報だけを見ると、現状『ペット不可』にしている物件で、空室に悩んでいる…という場合、『ペット可』にするというのは起死回生の一手になりうると考えてしまいますよね。ペット可にするだけで、入居率の向上と家賃アップが可能だというのであれば、「今すぐにでも行いたい!」と考えてしまう方法だと思います。
しかし、ペット不可物件を『ペット可』にするのは、そこまで単純な話ではありません。確かに、今までは「ペットを飼いたい」「ペットを飼っている」という方は物件の入居対象から外れていたため、ペット可にすることで、その対象範囲が増えるというのは非常に大きなメリットになり得ます。しかし、逆に言えば「ペットを飼っていない人しか住んでいない」という理由であなたの物件を選んでいる方も少なくないと思います。
世の中には、犬や猫のアレルギーを持っていて、近くにペットを飼っている家庭がいては困ってしまう…なんて方も存在します。さらに、犬・猫の毛や糞尿などが共用部分に残されてしまうことで入居者同士のトラブルが増加してしまう恐れも存在しています。
そして、何より押さえておかなければいけないのが、ペットが生じさせる音は考えている以上に大きなもので、『ペット専用物件』でもない限りは、ほぼ確実に騒音トラブルが生じてしまうことになるということです。ペット専用であれば、ペットに寛容な人ばかりが暮らすことになるので、そこまで大きなトラブルは生じないと考えられるのですが、後から『ペット可』にした場合、犬や猫を嫌う人も住んでいて、鳴き声や足音でストレスを感じてしまうようになる可能性もあるのです。
したがって、空室対策などで『ペット可』にする場合、ペットを受け入れる前に騒音トラブルを防止するための防音工事が必要不可欠と考えてください。賃貸物件であれば、入居者に防音工事をさせるわけにはいきませんし、オーナー側が費用を出して以下のような防音工事をする必要があると考えましょう。
- 窓の防音対策
犬の鳴き声は、大型犬であれば90dB以上、小型犬でも80dB程度の音量になると言われており、確実に騒音トラブルになるレベルと考えてください。もちろん、飼い主にきちんとしつけをしておいてもらうということが大前提になるのですが、それでも犬種的に良く吠えるという犬もいます。こういった犬の鳴き声を軽減するためには、窓部分の防音対策が非常に効果的にです。築古の賃貸物件であれば、単板ガラスにアルミサッシなどという組み合わせも考えられますが、これでは確実に音漏れしてしまいます。したがって、ペット可にする前に、二重窓にする、防音ガラスや樹脂サッシに交換するなどの防音対策を行いましょう。 - 壁の防音対策
壁の防音性を高めることも、ペットの鳴き声対策として有効です。可能であれば、壁の中に吸音材と遮音シートを設置するなど、壁部分の防音性を高めておくようにしましょう。なお、猫は爪とぎのために壁を引っ搔いたりしますので、一般的なクロスを使用してしまうと、すぐにボロボロになってしまいます。したがって、クロスもペット専用の物を導入するのがオススメです。ペット専用のクロスは、引っ掻きに強い、抗菌などの処置が行われているなど、入居者からも人気です。 - 床の防音対策
意外と見落とされがちなのが床の防音です。犬や猫などのペットは、人間よりも軽いですし、歩く時なども軽快でそこまで騒音の心配はないと考えてしまう方がいます。しかし、ペットはフローリングと爪が衝突して、カチャカチャといった音が階下に響いたりしますので、ペットの足音に関する騒音トラブルも多いです。なお、猫に関しても、高いところが好きな動物で、明け方に活発的になるという習性から、人間が寝ている時に高いところから飛び降りて、「ドンッ」と言った衝撃音が階下に響いて苦情を入れられてしまう…なんてことが考えられます。フローリング材の中には、遮音性が高い物がありますので、そういったものを採用するか、クッション性の高いカーペットを導入するなどがオススメです。
今までペット不可にしていた物件が、空室対策のために『ペット可』にする場合、上記のような防音対策を居室に施すことが必要だと考えておきましょう。なお、ペット可にするということは、書面などで現入居者に対して、事前に通知しておく必要があります。この際に、上記のような防音対策を行うこと、共用部分でのペットの扱いのルールなどを明確にしておけば、そこまで大きな問題になることは少ないと考えられます。逆に、何の対策も行わないまま『ペット可』にしてしまうと、入居者間でのトラブルが発生したり、もともと住んでいた入居者がみんな退去してしまったり、賃貸経営を余計に圧迫してしまう結果になる恐れもあります。
まとめ
今回は、コロナ禍でペットを飼いたいという人が増加していることにより、賃貸住宅業界で効果的な空室対策を捉えられている『ペット可に変更する』ということの注意点をご紹介してきました。
上述したように、在宅時間が長くなっていることで、ペットを飼いたいと考えている方が増えている中でも、日本の賃貸住宅事情を考えると、なかなかペットを気軽に飼えるような状況にはないというのが実情です。というのも、東京などの関東圏で調べてみても、ペットを飼育できる賃貸物件は、全体の10%強で、ほとんどの物件はペットの飼育が禁止されているからです。これに関しては、マンションなどの賃貸物件は、各居室が構造的につながっていることから、ペットの鳴き声や足音による騒音トラブルの可能性が非常に高く、ペットを飼っていない人とペットを飼っている人が混在する場合、住民間のトラブルが高確率で起きてしまうからです。
こういった事情を考えると、もともとペット不可にしていた物件が『ペット可』に切り替えるのは、非常に高いハードルがあると考えた方が良いでしょう。ペット可にすることで、入居対象者が増えると言われますが、ペットを嫌う人も存在しますので、一概に入居率が改善できるともいえないのです。
ペット可にすることで確実に入居率を高めたいと考えるのであれば、「きちんと防音対策を行っているから騒音の心配がない!」という状況を作り、それをきちんとアピールすることが大切です。なお、防音対策を施せば、楽器の演奏も認められるようになりますので、さらなる空室対策効果も期待できるでしょう。
現在、空室対策としてペット可への変更をお考えのオーナー様は、『防音工事』が必要だと考えておきましょう!