防音室を作るうえで知っておきたい関連する法律
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自宅で楽器の演奏やホームシアター、カラオケなどを楽しみたいと考えた時には、音で近隣住民に迷惑をかけないようにするためにも、防音室を用意しなければいけません。一昔前までであれば、庭付き一戸建てで、各住宅そのものがそれなりの面積を確保していたこともあり、多少の音であれば近隣トラブルにまでは発展しなかったケースもあるのですが、昨今では、集合住宅で生活する方が増えた、戸建てでも家と家の距離が近くなっているなどといった理由から、ちょっとした生活音でも騒音トラブルに発展するケースがあるのです。
この記事を読んでいただいている方の中にも、自宅に防音室を用意しようかどうかで迷っているという方も多いと思います。そこで、この記事では、専門業者に依頼して高性能な防音室を作りたいと考えている方に向け、防音室に関係する法律の知識について解説します。
消防法について
一つ目は「消防法」です。消防法は、火災の予防や火災による被害を最小限に抑えるための措置や対策を定めている法律とされるため、防音室の工事とは全く関係がなさそうに思えますよね。しかし、この法律は、火災から国民を守るために作られているという特性上、住宅などの建物とは密接な関係があるのです。
消防法は、工場や倉庫など、大型施設の建設や改修時に関係すると考えられがちですが、建築物に対する防火や消防上、必要になると考えられる規則が設けられていて、火災の予防・警戒・鎮圧、そして災害時の傷病者の搬送が適切に実行できるようにということが目指されています。つまり、一般住宅は当然として、全ての建築物に関係してくる法律と言えるのです。
火災報知器の設置について
防音室と消防法の関係について注意しなければならない点は、「火災報知機の設置」に関する定めです。
日本では、平成23年より、日本全国の自治体条例によって、全ての住宅において火災報知機の設置が義務付けられています。これについては、住宅を新築する時に限らず、既存の住宅に対しても、設置が義務化されているのです。
防音室についても、火災報知機の設置は必要となります。ただ、火災報知機に関しては、設置していないからと言って罰則などは特に用意されていません。しかし、防音室は「室内の音が漏れない」だけでなく、「室外の音が侵入してこないようにする」という特殊性に注意しなければいけません。どういうことかというと、防音室内で作業している時には、防音室の外で発生している音が聞こえにくくなるため、防音室に火災報知機を設置していない場合には、警報が鳴ったとしても気付くことができない可能性があるのです。したがって、万一の際、速やかに避難できるようにするには、防音室にも火災報知機を設置し、室外で起きた異変を知らせてくれるようにしておくことが大切です。
なお、火災報知機の設置に関して、その基準や設置ルールは、住宅や居室の延べ面積、収容人数、用途などにとって代わります。また、自治体ごとに定められる条例に関しても、異なる基準などが設けられている可能性があるので、その点は注意しましょう。
火災報知器を設置しなかった時
上述しているように、防音室への火災報知機の設置に関しては、未設置でも罰則規定などはありません。ただ、罰則がないとしても、未設置のままの場合、火災保険が下りない可能性が出てくるので注意が必要です。
火災保険については、保険適用外となる条件が保険会社ごとに変わるため、将来的に保険がおりないことで困らないようにするためには、しっかりと保険適用外の項目を確認するほか、火災報知機を設置するのが望ましいです。特に、防音室は、室外の音が聞こえにくくなるという特性上、万一の際に避難が遅れるリスクのことを考えると、しっかりと設置しておくのがおすすめです。
建築基準法について
次は建築基準法です。建築基準法は、日本国内に建築する建築物について、守らなければならない基準や条件について定めた法律になります。建築基準法は、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と総則で記載されています。
つまり、国内に住宅などの建築物を建てたり、増改築する際には、建築基準法の定めを必ず守らなければならないのです。これは、防音室を設置したり、防音リフォームを実施する際も当然で、建築基準法に定められている基準に則って施工しなければいけません。
2025年4月の建築基準法改定が防音室に影響を与える?
2025年4月に施行された改正建築基準法では、特定用途の建築物における構造基準や安全性確保に関する規定の一部が見直されています。主な対象は、居住用住宅や多人数利用施設などとなるのですが、これにより一定の用途における建築や改修については、耐震性や避難経路の確保に関する基準が強化されています。
なお、防音室の新設や防音リフォームなどの防音工事については、今回の改正については直接的な適用範囲外とされています。そのため、基本的には既存の建築基準法に則って工事が実施されれば、改正による追加対応や手続きが求められることはありません。したがって、これから防音工事の実施を検討していると言う方も、そこまで心配する必要はないでしょう。
ただ、建築基準法は、「生きた法律」と呼ばれているように、制定後、何度も改正が繰り返されているという特徴があります。人の住環境は、時代によって移り変わるため、それに合わせて法律に改正を加えなければならないからです。つまり、防音室と建築基準法の関係性については、今後、現状の基準が大きく変更される可能性がないとは言えないのが実情です。
防音室の窓の設置について
防音室の性能だけを考えた時には、音漏れの弱点となってしまいがちな「窓」はない方が良いと考えられます。しかし、建築基準法では、居室には採光と換気のための窓の設置が義務付けられているので、「防音室にも窓は必要なのだ」と考える人が多いです。この点については、窓の設置は必ずしも必要というわけではありません。
そもそも、建築基準法上の居室については、「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」という定義が設けられています。住宅で言えば、キッチンやダイニングルーム、リビングや寝室がこれに当たります。ただし、居室への窓の設置に関しては、「その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない」という特例が用意されていて、防音室については、以下のように除外されているのです。
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「用途上やむを得ない居室」に該当するものとする。
(1) 開口部を設けることが用途上望ましくない居室
1) 大音量の発生その他音響上の理由から防音措置を講ずることが望ましい居室
ア 住宅の音楽練習室、リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)
イ 放送室(スタジオ、機械室、前室等で構成されるものをいう。)
ウ 聴覚検査室等外部からの震動・騒音が診察、検査等の障害となる居室
引用:国土交通省webサイトより
上記のように、いくつかの条件を満たす必要があるものの、住宅に設置される防音室は、必ずしも窓を設置しなくても構わないのです。ただ、防音室は、ご家庭によって用途などが変わると思いますが、しっかりと防音対策をしたうえであれば、窓はあった方が快適性の面では良いと思います。
まとめ
今回は、防音行為に関係してくる法律について解説しました。
日本において、建物に関係する法律と言えば、建築基準法を思い浮かべる方が多いと思います。実際に、建築基準法では、住宅建築に関しては、細かな基準やルールを設けていて、日本国内に建てる住宅であれば、そのルールにしたがって工事を実施しなければならないのです。防音工事に関しても、新築時に防音室を作る場合には、設計段階でいろいろな注文がつく可能性があるでしょう。
この他にも、消防法は、人命や財産を守るための法律となるため、防音室作りでも少し注意しなければならないポイントがあります。特に、火災報知機については、防音室内で作業している時は、室外で作動してもそれに気づくことができないケースがあるのです。防音室は、音漏れだけでなく音の侵入を防ぐという性能を持っているので、家族の安全を考えると、防音室の中でもきちんと鳴動するようなシステムを組み込む必要があるかもしれませんね。