ピアノのよくある故障個所と修理費用について
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ピアノは、その他の楽器と比較しても、寿命は長いと言えます。もちろん、お手入れ状況などによって寿命は変わりますが、適切なメンテナンスなどが施されている場合は、60年程度は問題なく使用できると言われています。
さらに、ピアノの内臓部品を適切に交換するなど、オーバーホールと言われる処置まで行っていれば、100年以上使用することも不可能ではないとされているのです。しかし、適切なお手入れやメンテナンスを怠ってしまうと、意外に早く故障してしまうことがあるので、その点は注意しましょう。また、ピアノの設置に適していない条件の場所に設置している場合も、早期の故障を引き起こすなど、とても繊細な楽器なのです。
そこでこの記事では、ピアノの設置環境に適した条件や、お手入れを怠った時に発生するピアノの故障について解説していきたいと思います。
ピアノの設置に適した条件とは?
それではまず、ピアノの設置に適した条件について解説していきます。ピアノは、その他の楽器と比較すると、本体が非常に大きいという特徴があります。比較的小さいとされるアップライトピアノでも、200kg以上の重量となる楽器ですし、置き場所に困ってしまうケースも珍しくありません。また、その大きさから、「とにかくスペースが確保できる場所に置けば良い」と考えられがちなのですが、広さだけに注目して設置場所を決めてしまうと、ピアノの早期劣化を招いてしまう恐れがあるのです。
ピアノは、木材が主原料として作られている楽器なので、温度や湿度の変化に非常に敏感です。温度・湿度の変化が大きい場所に設置した場合、木材が膨張と収縮を繰り返すことで、すぐにダメになってしまう可能性があるのです。したがって、ピアノを長持ちさせるためには、広さだけでなく、温度や湿度条件についても、適した環境を用意してあげる必要があるのです。
一般的に、ピアノの設置に適した条件としては、以下の要件を満たしていることが求められます。
- ■温度条件
15〜25℃ - ■湿度条件
冬季 35〜65%/夏季 40〜70% - ■日当たり
直射日光が当たらない場所(ピアノ本体の温度が上がり、傷んでしまう原因になります) - ■エアコンとの位置関係
エアコンの真下や、冷気が直接当たらない場所に設置する(真下に設置すると、エアコンから生じる水滴がピアノに落ちる) - ■床暖房との関係
基本的に床暖房がない部屋に設置する(床暖房があると、使用時とそうでない時の温度差が大きくなるため、ピアノへの負担が大きくなる)
ピアノの設置場所は、上記のような条件を確認しながら決めましょう。
よくあるピアノの故障と修理費用
ピアノは、適切な場所に設置して運用していたとしても、ちょっとしたことで故障してしまうことがあります。
そこでここでは、ピアノのよくある故障事例や、実際にピアノが故障した時の対処などについて解説していきたいと思います。
鍵盤が動かない、特定の音が出ない
ピアノの故障で最も多いとされているのが「鍵盤」に関するものです。
ピアノを弾くときには、鍵盤を押すことで音が出るのですが、故障したピアノでは、押した鍵盤が戻って来なくなる、購入したばかりの頃と比較すると、鍵盤の動きが鈍く感じるなどといった事態が生じます。また、特定の鍵盤について、音が出なくなるといった問題もあるでしょう。
こういった鍵盤周りの故障については、湿気によって鍵盤の部品が膨張している、内部に異物が混入してしまっているといった原因が考えられます。正常に戻すためには、修理しなければならないのですが、ピアノ内部をいじる必要があるため、鍵盤関連の故障については、自分で対処するのではなく、専門業者に修理を依頼するようにしましょう。なお、一部の鍵盤が元に戻らなくなる、音が出ないといった場合の修理費用は、以下のような感じになります。
- ・一箇所につき1,500円〜2,500円
- ・一箇所増えるごとに追加として+500円〜1,000円
費用については、ピアノの損傷個所や状況によって変わりますが、鍵盤の膨張と言った単純な理由の場合は、上記の費用程度で周知可能だと思います。
※業者によっては別途基本料金がかかります。
鍵盤を弾くと、押している鍵盤とは別の場所から金属音がする
この状況は、一般的に「共鳴」と呼ばれる現象です。ピアノ内部で、別のパーツから音が生じている場合もあるのですが、実は近くの家具などの金属部品が振動して音が鳴っているケースもあります。
このような現象が現れているのは、調律を怠っている場合が考えられます。したがって、対処としては専門業者に調律を依頼するという方法となります。なお、内部の状況によっては、パーツの交換が必要になるケースもあるでしょう。
調律師にピアノのメンテナンスを依頼する場合の費用は、以下のような感じです。
- ・アップライトピアノの場合:6,000円〜10,000円
- ・グランドピアノ:10,000円〜15,000円
なお、パーツの交換などが必要になるケースでは、別途パーツ費用が必要になるでしょう。
外装のひび割れ
これは、ピアノを設置している場所の湿度や温度の変化によって、ピアノ本体が経年劣化しているというものです。長年使用していれば、いずれ必ず生じる問題と考えておいた方が良いでしょう。
修理方法としては、専門業者に依頼して、ピアノの外装を塗装し直してもらうという方法になります。ただ、ひび割れの大きさによって、対処がかなり異なり、費用も大きく変わるので、念のため複数の業者から相見積もりを取るのがおすすめです。部分的な補修であれば、比較的安価なのですが、全面塗装となると、皆さんが考えている以上にコストがかかります。
- ・部分的な補修の場合:6,000円〜30,000円
- ・全塗装:100,000円〜400,000円
上記のように、修理の方法によって費用感が大幅に変わります。悪質な業者の中には、部分的な補修で済むような傷について、全塗装を提案してくる場合もあるようなので、複数の業者から修理方法の提案を受けた方が良いでしょう。
弦が切れる
長年使用しているピアノの場合、演奏中に弦が切れてしまうといった故障が発生することも珍しくありません。この場合は、当然弦を張り替えなければ、演奏を続けることはできません。また、弦が切れていないという場合でも、定期的に弦の交換が必要になりますし、長年使用していなかったピアノを再使用する際には、弦の交換が必要になります。
ピアノの弦の交換については、調律師が行ってくれるので、普段調律をお願いしている方に相談するのが最も良いです。定期的に調律を行っていれば、弦が切れる前に交換を提案されることがあると思うので、そのタイミングで交換するようにしましょう。
なお、弦の交換費用に関しては、1本当たり5,000~10,000円程度を想定しておきましょう。ピアノの弦は、音域によって値段変動があるため、交換する位置によって費用が微妙に異なります。
ハンマーの消耗により音ムラが出る
長年使用しているピアノの場合、弦を打つハンマーが削れてしまうなど、部品の消耗によって音ムラが生じてしまうことがあります。同じ高音部で、響き方が異なる…と言った違和感を感じる場合、ハンマーに原因があるかもしれないので、専門業者に確認してもらうと良いでしょう。ハンマーが削れてしまうと、購入した当初の音の響きが変わってしまうのです。
ピアノのハンマーを修理する場合、「ファイリング」と呼ばれる方法があります。これは、弦を叩くハンマーを削り直すという方法なので、一般の方が自分で作業するのは難しいです。なお、ハンマーファイリングの頻度は通常は8年に1回くらいの頻度で行うべきとされています。
専門業者にファイリングを依頼する場合の費用は、15,000円〜18,000円が相場です。
まとめ
今回は、ピアノのよくある故障事例と、修理方法について解説しました。
ピアノは、楽器の中でも特に大きくて、見た目は非常に頑丈そうに見えます。そのため、特にメンテナンスなどをしなくても、長く良い状態で使うことができると考えてしまう人もいるのです。しかし、記事内で紹介しているように、木材が主原料となっているピアノは、温度や湿度の変化によって音が出なくなったり、音ムラが生じてしまうなど、非常に繊細な楽器だということを忘れないようしましょう。適切な頻度のメンテナンスを怠ってしまうと、上記で紹介したような問題が突然発生する可能性が高いので、しっかりとメンテナンスを行ってください。
なお、ピアノは定期的な調律が必要不可欠な楽器で、使用頻度が高いピアノに関しては、半年に1回程度の頻度で調律が必要になります。小まめに調律しておけば、調律師さんがメンテナンスの提案も行ってくれると思うので、これも定期的に行うようにしましょう。