「楽器可物件」だから選んだのにクレームが…そもそも楽器可物件は防音されているわけではない!
皆さんは意外に思うかもしれませんが、小学校などでの音楽教育のおかげが、日本人は、諸外国と比較して楽器を演奏する人の割合が多いと言われています。もちろん、多くの方は大人になってからは特に楽器の演奏などはしなくなると思いますが、それでも趣味の範囲で何らかの楽器を楽しんでいるという方も一定数いると思います。
ただし、集合住宅などで生活する方が増えてきた現在、日本人が楽器に触れる機会が多いという特性でトラブルになってしまうケースが多くなっていると言われています。もちろん、集合住宅でも分譲マンションなどになると、楽器演奏のための専用の防音室を用意することができるのですが、賃貸住宅の場合、後付けで楽器演奏に耐える防音対策をすることなどほぼ不可能です。そのため、日常的に楽器の演奏をたしなんでいるという方であれば、「物件の防音性能」に着目して賃貸する部屋を選んでいると思います。
それでは、物件として「楽器の演奏が可能」としている部屋を借りれば、自由に楽器の演奏ができるものなのでしょうか?実は、不動産会社などで見せられる物件資料に落とし穴があるのです。この記事では、賃貸住宅でも近隣の方に気兼ねなく楽器の演奏を楽しむため、物件選びの際に注意しておきたいポイントを防音工事の専門家目線でご紹介していきます。
賃貸住宅での防音事情について
それではまず、賃貸住宅における防音事情について解説していきましょう。近年では、建築技術が飛躍的に向上していますし、よっぽど神経質な大家さん、管理会社でもなければ、部屋の中で一切の楽器演奏を禁止するなどと言うことにはなりません。例えば、アコースティックギターや電子ピアノ、お子様のリコーダーなど、比較的迷惑をかける心配が少ない楽器まで細かく禁止してしまうと、いまどき部屋がなかなか埋まらなくて、大家さん側が困ってしまうからです。
ただし、そうはいっても本格的なピアノやドラムセットなどを持ち込んで、時間を気にせずに自由に演奏して良いかと言うと、ほとんどの方は「常識的にそれはダメでしょ!」と思いますよね。こういった本格的な楽器になると、多くの方は物件に何らかの防音対策がなされている部屋を選ぶのですが、実はそういった防音物件にもいろいろな段階が存在するのです。以下で賃貸物件における防音の段階をご紹介しておきます。
①楽器『防音』物件
これは、物件の中に完全に防音に特化した居室があり、24時間いつでも演奏を楽しむことができる物件になります。当然、グランドピアノやドラムセットなど、本格的な楽器の持ち込みもOKですし、プロの音楽家のために用意された物件と言った感じです。
賃貸住宅でも、楽器の演奏で絶対にトラブルになりたくない…と考えるのであれば、当然このタイプの物件を選ぶのが安心です。ただし、こういった物件は建築コストがかなり高くなってしまいますし、ニーズの問題などから家賃がかなり割高になります。さらに、日本国内には、まだ完全な防音物件と言うものが少ないのが実情で、大阪や東京など、大都市圏であれば見つかる可能性があるといった感じです。なお、物件が少ないので一度入居すると、なかなか退去しないことから、部屋が空くのをかなり待つ必要があるケースもあります。
どうしても防音室付きの防音物件を探したいのであれば、音楽大学の近くに多くなるので、そういったエリアで探してみましょう。
②楽器『遮音』物件
「楽器を生業にしているわけではなく、趣味の範囲で毎日演奏したい」と言った音楽愛好家レベルの方が狙うのがこのクラスです。上述のような、完全に防音に特化した防音室までは備え付けられていないものの、建物そのものが防音性を意識した造りになっていて、楽器の演奏が認められているという物件です。こういった物件は、幹線道路沿いや線路に面した物件などに多く、もともと騒音が多い地域なので、壁や窓部分にしっかり防音対策が施されている感じです。
注意が必要なのは、こういった物件は、あくまでも物件の外にある騒音源からの音が室内に入ってこないようにするという目的で対策が施されているという点です。要は、部屋と部屋の境界壁に関しては特に防音対策などが考慮されていない物件も多く、楽器を演奏する時間帯によってはクレームになってしまうケースも考えられます。居室内の防音性能に関しては、隣の部屋との間にクローゼットがある、バスルームなどが挟まれているなど、緩衝地帯が生じるような角部屋を選べば、お隣とのトラブルを防ぎやすくなります。
このタイプの物件は、遮音具合が物件によってまちまちなので、不動産会社さんなどに楽器の演奏がどの程度認められるのかをあらかじめ確認しておきましょう。なお、上述した防音物件よりも家賃はお手頃になるのでおすすめです。
③『楽器可』物件
最後は「楽器可」と言う物件です。正直、この物件は注意が必要です。と言うのも、楽器可物件は、あくまでも「入居者同士の常識の範囲内で楽器の演奏は認めています」と言うだけで、特に防音や遮音の対策などが施されているわけではないのです。
例えば、築年数が経過してきた物件などで、細かく禁止事項を決めてしまうと入居者が集まらないからなどと考え、大家さん側の空室対策として条件が緩和されているだけです。こういった物件は、「集合住宅に住む限りは近隣の音が聞こえるのはお互い様なのだし、入居者同士でうまくやってね」と言った非常にあいまいなルールの下で楽器の演奏が認められているだけです。したがって、お隣に神経質な方が住んでいる場合、楽器を演奏するたびに怒鳴り込まれる…なんて危険も普通にあります。あくまでも楽器の演奏を認めているだけで、騒音を出しても良いという許可ではないことから、お隣の方が「うるさい!」と言えば楽器の演奏ができなくなるでしょう。
『楽器可』物件を選ぶときの注意点について
それでは、入居者側が勘違いしがちに『楽器可』物件について、実際に契約する前に確認しておきたいポイントもご紹介しておきましょう。上述したように、楽器可物件と言うものは、特に防音対策などが施されているわけではないと言うケースがほとんどで、あくまでも入居者間同士でトラブルにならないようにするなら「楽器の演奏を認めますよ」と言うだけの話なのです。そのため、家賃設定などに関しては、近隣の競合物件などと比較しても、特に高く設定されているようなこともありません。
ただ、『楽器可』だから「いつでも好きな時に楽器の演奏ができる!」という考えで借りてしまうと、ほぼ間違いなく近隣トラブルになってしまうでしょう。なお、楽器可物件は、以下のようなルールが設けられていることもあるので、契約する前にきちんと確認しておきましょう。
演奏時間の制限について
楽器可物件は、特に防音対策がなされているわけではないので、24時間好きな時に楽器の演奏ができるとは考えない方が良いです。そして、ほとんどの場合、「夜8時までは楽器の演奏可」など、演奏時間の制限に関するルールが設けられていると思います。ただ、このルールに関して「常識の範囲内で楽器の演奏を認める」と言った非常にあいまいな規約にしている場合は注意しましょう。
常識と言うのは、人によって微妙に異なりますし、夜7時以降に楽器を演奏するなんて非常識…と考える方もいれば、夜中もテレビなどの演奏音が聞こえてくるわけだし別にいつ鳴らしても構わないでしょ…などと考えてしまう方もいるのです。
こういった曖昧なルールしか設けられていない物件は、管理体制にも疑問が残るので、自分が他人に迷惑をかけることよりも、迷惑をかけられてしまうリスクが高い点を注意しましょう。
演奏可能な楽器の制限について
「楽器可」は、ほとんどの場合、演奏可能な楽器に制限が設けられていると思います。「楽器可」と記載されているからと契約を急いでしまうと、入居後に自分が演奏しようと考えていた楽器が賃貸借契約書の中で禁止されていた…なんてことになるケースがあります。
したがって、時間制限などのルールを確認する時には、自分が演奏を考えている楽器が認められているのかをきちんと確認しておきましょう。
まとめ
今回は、賃貸住宅で暮らしている方が悩んでしまうケースが多いで、物件内での楽器の演奏についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、日本人は子供のころに楽器に必ず触れる機会があることから、大人になっても何らかの楽器を趣味として楽しんでいるという方が非常に多いです。しかし、楽器が広く復旧している国の割に、それを演奏できるような防音物件に関してはかなり少ないのが実情です。
実際に、音楽大学に通っているような方であっても、防音物件に入居することができず、カラオケボックスにいって楽器の練習をしているという方が非常に多いと言われています。なお、賃貸住宅で楽器の演奏が認められていても、物件によっては「演奏は認めているけど騒音は出してはいけない」と言った感じに、とんちのような状況になっているケースがあるので注意してください。