コロナ禍で調湿建材が注目!?実は防音室を長持ちさせるためにも調湿効果が大切!
以前、「防音工事の匠が作る防音室は、高機能塗り壁材『深呼吸』が標準仕様!実はこの内装材、すごい効果を持っています!」という記事の中で、防音室と調湿効果の関係性について解説したのですが、そもそも「調湿効果とは?」というご質問を受けることが多くなったので、今回は、コロナ問題の中で一気に注目度が高くなった、調湿建材について解説します。
防音室にとって調湿効果が重要なのは、通常の部屋と比較すると非常に気密性が高い部屋となることから、防音室は湿気を逃がすことが苦手で、目に見えない壁の中がいつの間にかカビだらけになっている…という被害が多いからです。実際に、他社で施工した防音室について、数年で性能が落ちた気がする…と言った相談を受けた際、壁の中を確認すると、吸音材として施工されているグラスウールがカビだらけで、防音効果が落ちていた…なんてことは非常に多いです。さらに、この問題は、防音性能の低下だけでなく、カビの胞子を人が吸い込むことで、アレルギーなどの健康被害を引き起こすこともあるなど、非常に危険な問題なのです。
そのため、防音工事の匠では、防音室そのものが調湿効果を持つような工夫を行っています。ただ、建材の調湿効果の部分について、疑問に感じる方も多いので、この記事では調湿建材がどのようなものなのかを解説します。
調湿建材とは?
それではまず、調湿建材がどのような効果を持っているのかについて解説します。近年では、住宅の内装などに用いる建材の中に、調湿効果を持つことを謳われているものがあります。このような調湿建材について、お客様の中には「販売メーカーが独自で設定しているだけで、内装材が調湿なんてできない」と考えている方も少なくないようです。
ただ、住宅業界で使用されている調湿建材については、メーカーが勝手に謳っているのではなく日本の製品規格であるJISで、明確な基準が定められていて、それに沿った能力を持っています。JIS規格による調湿建材の能力は、「1㎡に塗り広げられた建材が24時間で何グラムの水分を吸湿し、放湿したか」で評価される仕組みになっていて、調湿建材を謳えるのは24時間で70g以上の調湿性能が必要とされています。
JIS規格では、環境の湿度や温度について厳密な基準が決められており、水分(湿気)を吸湿するだけでなく放湿まで行う素材でなければ、調湿建材とみなされません。
調湿建材の種類と湿度調整のしくみ
それでは、世の中で調湿建材として出回っている材料については、その他の建材とは違って湿度を吸ったり吐いたりできるのはなぜなのでしょうか?実は、世の中に出回っている調湿建材にも、原材料の違いが存在します。
- 土質系:粘土・鉱物など
- 石質系:天然石・無機鉱物など
- 木質系:木材・パルプ・木チップなど
調湿建材は、上記の3種類のどれかが原材料になっていて、天然素材が使用されているもの、もしくは天然素材の特徴をまねた構造で人工的に作られたものが存在します。
これらの調湿建材は、表面に目に見えないほど微細な穴がいくつも開いていて、その穴から空気中の水分を出入りさせることで湿気の調整を行っています。一般的に、人が快適と感じる湿度は、およそ40~60%と言われていることから、住宅に採用される調湿建材は、湿度が50~60%になるように設定されています。
調湿建材は、吸湿と放湿を行う
調湿建材は、空気中に含まれる水分を吸い込む、吐き出すことによって室内の湿気を調節します。調湿効果と聞くと、高い湿気でジメジメとした気候の日本の梅雨について、室内の湿気を吸い取ることで快適な室内空間を作るというイメージが強いでしょう。ただ、こういった効果は、『除湿』と呼ばれるもので、調湿というのは、冬場の乾燥対策にも有効なのです。
冬は気温が低くなりますので、室内環境を快適にするためには、エアコンやヒーターなどを使って室温を温めます。ただ、室温を温める時には、空気中の水分が蒸発してしまい、乾燥しがちになってしまいます。そのため、日本の冬は加湿器などを使って、室内の調湿を行う方法が一般的になっています。
これが、調湿建材を用いると、加湿器などの特別なことをしなくても、建材自体が水分を吐き出し、室内の調湿を行ってくれます。
調湿建材を用いるメリット
それでは、上記のような機能を持つ調湿建材を用いるメリットとはどのようなことが考えられるのでしょうか?
まず、リビングや寝室などに調湿建材を取り入れる場合、そこで過ごす人の快適性を保てるというのが大きなメリットです。冬場は、空気が乾燥しますので、その中で生活を進めるだけで、肌荒れや喉の痛みを引き起こす恐れが高くなります。また、乾燥はウイルスの生息環境に適しますので、風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなります。コロナ禍で、調湿建材が注目されたのは、適度な湿度を保つことで、新型コロナウイルスの感染確率が低下すると期待されたためです。
調湿建材は、建材が保持している水分を放湿することで、室内を程度な湿度に保つことができます。そのため、前述のようなさまざまな健康被害を防止するのに非常に効果的な働きを期待できます。
さらに、調湿建材は、湿気を吸収することで、高湿状態になるのを防ぎ、カビの繁殖などを防いでくれるという効果も期待できます。高温多湿になりがちな日本の気候は、6月~10月にかけては、湿気の高さを要因として壁紙やカーテンなどにカビが繁殖してしまうというトラブルが多いです。こういったカビの被害は、単に住環境の見た目が悪くなるだけでなく、カビの胞子などを人が吸い込むことで、健康被害を引き起こすといった問題も潜んでいます。
調湿建材は、空気中の不要な水分を吸い込んでくれますので、常に快適な湿度状態を保ってくれます。そのため、住宅内でのカビの発生を抑える効果が期待できます。防音工事の匠が、防音室に調湿建材の利用を標準化しているのは、こういった効果を期待してのことです。特に防音室は、その気密性の高さから、カビによる被害の可能性が高いため、室内の調湿は細心の注意を払わなければいけません。
ちなみに、冬場の調湿に関しても、建物を守る効果を期待できます。木造住宅が多い日本では、極端な乾燥状態が続くと、住宅に使用されている木材が乾燥し、反りや割れが発生する可能性が高くなります。さらに、乾燥状態は静電気が生じやすくなりますので、火災リスクが高くなります。調湿建材を利用することで、適切な湿度を保つことができれば、こういった家そのものの問題も解消することができます。
主な調湿建材
それでは、快適な住空間を維持してくれる調湿建材について、具体的にどのようなものがあるのかについてみていきましょう。ここでは、代表的な3種類をご紹介します。
ゼオライト
一つ目は『ゼオライト』と呼ばれる調湿建材です。ゼオライトは、火山活動によって数百万年もの長い年月をかけてできた天然の鉱物です。この鉱物は、水の分子よりも少し大きいぐらいの微細な管状の穴を持っていて、無味無臭かつ人や動物に無害です。そのため、園芸用品や洗剤、ろ過材などとしても用いられています。
ゼオライトは、主に以下のような機能を持っているとされています。
- ・水質浄化
- ・防臭・消臭効果
- ・調湿効果
- ・ホルムアルデヒド吸着分解
ゼオライトは、非常に優れた消臭効果を持つのですが、これは、多孔質の表面に悪臭の成分を取り込み消臭する機能と、悪臭を生み出す雑菌の発生を抑えるという両法の機能を兼ね備えているからです。
調湿効果については、JIS規格の基準である「1㎡当たり70グラム以上の吸放湿量」を上回り、1㎡当たり100グラム以上の吸放湿量となっています。ゼオライトは、調湿効果だけでなく、優れた消臭効果を持っていることから、キッチンや洗面所、トイレといった水廻りの内装用材料として用いられることが多いです。
珪藻土
防音室に用いられる調湿建材がこの「珪藻土」です。藻類の一種「珪藻」の殻の化石が堆積してできた珪藻土は、コンロや耐熱用レンガ、壁材などの材料として古くから活用されています。近年では、非常に高い吸水性を持つことから、珪藻土マット(バスマット)として利用されているケースをよく見かけます。なお、珪藻土は、調湿以外にもさまざまな機能を持っています。
- ・調湿効果
- ・吸音効果
- ・断熱効果
- ・ホルムアルデヒド除去
- ・消臭効果
日本家屋では、塗り壁の材料として長く漆喰が使用されてきましたが、珪藻土は漆喰よりも高い調湿効果、消臭機能を持つことが知られてからは、内装には珪藻土が良く使用されるようになっています。
さらに、珪藻土は音を吸収する吸音効果まで期待できる素材で、500~1300ヘルツの音を30%以上も吸音するという研究結果が存在します。こういったさまざまな効果を持つことから、防音工事の匠では、防音室に珪藻土由来の調湿建材を採用しています。
エコカラット
3つ目の調湿建材はエコカラットです。なお、上述したゼオライトや珪藻土は天然素材なのですが、エコカラットは、建材メーカーとして有名なLIXILが製造販売している建材です。エコカラットは、土壁が持つさまざまな機能性を取り入れた人工素材で、最新技術により機能的な内装材に仕上がっています。天然素材とは異なり、豊富なデザイン性を持つ点が大きな特徴になるでしょう。
- ・吸放湿性能
- ・脱臭効果
- ・空気清浄効果
- ・有害物質低減
エコカラットは、建材メーカーが販売している壁材ですので、豊富なデザイン、カラーバリエーションがあるのがポイントです。したがって、調湿効果を得るために、空間のデザインにこだわれないのはちょっと…と悩んでいる方にはオススメです。
参考:LIXIL エコカラット
まとめ
今回は、近年、住宅の内装材として人気が上昇している調湿建材について解説しました。調湿建材は、その名称通り、建材自身が調湿効果を持っており、それを施工することで、人が快適と感じるような湿度環境を保ちやすくなる素材を指しています。この調湿建材は、コロナ禍で、室内の異常乾燥を防ぐことができるため、感染拡大防止の面でも効果的なのではないかと考えられ、一気に注目度が上がったような気がします。
なお、防音室については、非常に気密性が高い部屋に仕上がることで、高湿状態が大きな弱点になり、吸音材などにカビが繁殖することで、早期の防音性能低下を引き起こす恐れがあるのです。防音工事の匠では、こういった被害を防止するため、防音室に調湿建材を標準化しています。防音工事の匠は、安全で快適な防音室をお約束しますので、お気軽にお問い合わせください。