マンションでの防音工事の注意点について

近年では、マンション暮らしの方が増えてきており、生活空間の近さから騒音トラブルに発展してしまうケースが多くなっていると言われています。分譲マンションは、鉄筋コンクリート造で、非常に気密性が高いこともあり、戸建てと比較すれば「外からの音に悩まされることは少ない」と考えている方が多いのではないでしょうか?確かに、木造の一戸建て住宅と比較すれば、建物自体に生じてしまう隙間なども少ないですし、外壁なども分厚い事から、外部からの騒音は気にならないと考えてしまうのは致し方ない事だと思います。

しかし、実際にマンションに住んでみればわかるのですが、非常に頑丈で気密性が高い造りなはずなのに、隣や上の階から聞こえてくる生活音に悩まされてしまう…と言うケースが少なくないのです。さらに、プロの演奏家や、子供の楽器を習わせようと考えた場合には、各居室が構造物でつながっているという建物構造から、戸建て住宅以上に騒音問題が起きやすいとも言われています。

そこでこの記事では、マンションに住んでいる方が自宅の防音工事を行う場合、どういった工事があるのかや、工事を行う前に注意しておきたいポイントをご紹介していきます。

マンションで起こる騒音問題とは?

それではまず、近年社会問題にもなっている集合住宅で発生する騒音トラブルの種類について簡単にご紹介しておきましょう。集合住宅で起きる騒音問題と聞けば、賃貸業界に増えている、3階建ての木造アパートや軽量鉄筋アパートなどをイメージする方が多いですよね。最近では、賃貸アパートでもそれなりの防音性能を持つようになっていますが、それでも、上階からの足音や、夜中に隣の部屋のテレビの音が聞こえてくる…なんてことは当たり前のようにあります。しかし、こういった問題が、数千万円以上のお金をかけて購入する鉄筋コンクリート造のマンションなどで起こるものなのでしょうか?

実は、頑丈そうに見えるマンションでも、騒音問題とは無縁と決して言えないのが実情なのです。最近弊社にも増えている、マンションでの騒音問題の具体例を以下で挙げておきます。

  • ペット問題
    ペットを家族とみなすようになっている現在では、集合住宅におけるペットトラブルが急増しています。例えば、早朝に犬が吠えてしまい近隣迷惑になるとか、足音がうるさいと階下の住人からクレームが来た…などと言う事例が増えています。犬や猫は、人間よりも体重が軽いですし、軽快に歩いている姿から足音は問題にならないと考えがちです。しかし、フローリングに爪が当たるカチャカチャという音が階下に響き、トラブルになるということが増えていますので、床材の交換などを検討しましょう。
  • 子育て問題
    マンション暮らしが増えた近年、非常に多くなっているのが子育てにおける騒音問題です。「子は宝だ」「泣くのが仕事だ」などと言っていられるのは、あくまで親族のみであり、毎日のように夜泣きの声が近隣に響き渡れば、「いい加減にしてほしい…」となってしまうものですよね。実際に、子育てによる鬱などは、子育て以外にも、隣家からの「静かにしろ」と言う感じの静かな圧も大きな原因だと考えられます。近年では、マンションでの子育て目的の防音工事も増えています。
  • その他生活音
    テレワークが急増している昨年からは、洗濯機の振動音が…掃除機の音が…などと言った生活音による騒音問題が増えています。上述したように、各家庭の生活空間が、構造物でつながっているマンションは、ちょっとした音でも伝わりやすい傾向があり、思わぬ騒音問題に発展してしまうこともあるようです。
  • 楽器やホームシアター
    マンションで楽器の演奏をする場合、防音対策をきちんとしなければ、ほぼ確実に騒音トラブルに発展してしまいます。コロナ以前であれば、昼間なら子供にピアノを練習させても苦情などはなかったという場合でも、テレワークで家で仕事をするようになった現在、昼間でも楽器の練習がしにくくなった…と言う声が増えています。

このように、マンションでは、さまざまな音の問題が表面化してきており、防音工事の相談が急増しているのです。

マンションでの防音リフォームの種類

それでは、現在マンション住まいの方が実際に行っている防音リフォームの種類についてご紹介していきましょう。ここでは、ある程度の費用相場も一緒にご紹介しておきます。

床のリフォームについて

まずは、床の防音対策です。子供が室内を走り回る時の足音や、ペットの足音、掃除機や洗濯機の音を階下に伝えないための対策です。つまり、自分たちが騒音源にならないようにするという、配慮側の防音対策となります。床の防音対策では、遮音性の高い床材に張り替えを行う、床材の下に吸音材などを施工するという方法があります。

  • 床材を張り替える
    遮音性が高い床材の張替えは、既存床材を撤去し、新しい床材に張り替えていくという手法です。面積が70㎡程度で25~30万円程度です。
  • 床材の下に吸音材を
    床材の下に対策を施す場合、同じ面積でも30~80万円程度のコストがかかります。費用の振れ幅が大きいのは、使用する材料によるからです。

壁のリフォームについて

壁の防音対策は、お隣の部屋からの音に悩んでいる場合や、赤ちゃんの夜泣きの声がお隣に迷惑をかけないようになど、両方の意味での防音対策の依頼があります。方法的には以下のような感じです。

  • 壁の中に吸音材と遮音材を入れる
    一度壁を解体し、中に吸音材と遮音シートを充填し、もう一度壁を作るという手法です。費用的には20~25万円程度が一般的です。(面積によります。)
  • 防音仕様の換気口に
    壁に換気口がある場合、防音仕様のものに交換しなければいけません。換気口は音漏れの原因になるので、これを放置して壁の対策をしても意味がありません。費用としては、2~3万円程度です。

窓のリフォームについて

マンションの防音リフォームとして最も多いのが、窓部分の防音対策です。住宅の防音性能に関しては、窓が弱点になっているケースが非常に多く、この部分の防音性能を高めることで、外から侵入する音への対策はもちろん、自宅から漏れる音も少なくすることができます。なお、窓ガラスやサッシに関しては、共用部分の扱いで、住人が勝手に交換できないマンションも多いです。まずは、管理規約などを確認するか、管理組合に問い合わせして、どの方法が可能かを確定させることからスタートしましょう。一般的には、以下のような手段が存在します。

  • 防音ガラスに交換する
    単板ガラスが採用されている場合、防音性能が高い窓ガラスに交換するという手法があります。ただし、規格が合わない場合は、サッシごと交換する必要があります。マンションによっては、許可が無ければ施工できないケースもあるので、管理組合に確認してください。費用は、採用するガラスによりますが7~15万円程度を想定しておきましょう。サッシごと交換する場合がもっとかかります。
  • 内窓を設置する
    これは、窓の内側に、もう一枚窓を設置するという方法です。窓と窓の間に空気層ができるので、防音性が高まるわけです。窓1枚につき7~15万円程度です。

防音室を作る

最後は、楽器の演奏を考えているという方や、ホームシアターを設置したいという方が行うリフォームです。分かりやすく言えば、住宅の中の一室を防音室に作り替えるといった手法です。注意が必要なのは、マンションの場合、防音室を導入しても、楽器によっては騒音問題が起きてしまう可能性がある点です。

  • 防音室の施工をしてもらう
    専門業者に依頼して、一から防音室を作ってもらうという方法です。予算や用途などに合わせて自由設計できるので、ジャストスペックの防音室ができるという点が大きなメリットです。費用は、どこまでの防音室を作るのかによって全く異なり、安い物であれば170万円程度からできますが、ドラム室などになると300万円以上かかると思っておきましょう。
  • ユニット型防音室を設置する
    大手楽器メーカーなどが販売しているユニット型防音室を購入して設置するという方法もあります。管楽器など、省スペースで練習できるような楽器にはオススメです。

まとめ

今回は、近年増加している、マンションでの防音リフォームについて、どういった工事が行われているのかをご紹介してきました。鉄筋コンクリート造のマンションは、木造戸建て住宅より気密性が高いのは間違いないので、建物そのものが持つ防音性能は高いと言えます。しかし、各家庭は壁一枚、床一枚で遮られているだけですし、構造物でつながっているという現実があることから、音が非常に伝わりやすいわけです。

こういったこともあり、マンション暮らしをする方が増加するのに比例して、集合住宅での騒音トラブルも増えていっているわけです。さらに昨年からは、コロナ問題が契機となり、自宅で仕事をするという方が増えたことで、昼間に生じる音でトラブルになってしまうケースが増えているのです。
これからマンションを購入して生活をする予定の方は、騒音トラブルに巻き込まれるリスクがそれなりに高いということは覚えておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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