防音室をいつ造る?新築とリフォームで作る時の主な違いについて
今回は、防音室を作る2大タイミングについて比較していきたいと思います。一般的に、防音室を作る工事というのは、既に完成している、生活をしている住宅において、防音性能を高めるためのリフォームを行うとイメージしている方が多いと思います。それでは、家を建てるタイミング、いわゆる新築時に防音室を作っておくことはできないものなのでしょうか?
当然、注文住宅であれば、家を建てるタイミングで、防音室を一緒に作っておくという選択は可能です。建売住宅については、既に建築が完了した住宅を購入する方法ですので、こちらの場合「防音室付き建売住宅」以外は、リフォームで防音室を作ることになります。
このように、防音室を作るタイミングについては、新築時と住み始めてからという2つの選択肢が存在します。この2つのタイミングについて、それぞれの特徴や注意点について、いまいち分かっていない部分も多いと思いますので、当記事でご紹介していきます。
タイミングで異なる防音室の広さについて
防音室は、通常の部屋と比較すると、壁や天井、床の厚みが増してしまいますので、どうしても全体的に狭くなってしまいます。そのため、広い空間の防音室を検討しているお客様からは、天井の高さだけは確保しておきたいという要望を頂くことがあります。
新築時とリフォームで防音室を作る場合の広さに関する違いは以下のような感じです。
リフォームの場合、狭さを我慢する必要がある
リフォームで防音室を作る場合、既存の部屋に防音対策を施すことになるので、壁の厚みが増す、天井や床に二重構造を施すなどと言った理由で、全体的に部屋の広さが狭くなってしまいます。例えば、一般的な部屋の高さは、2m30cm~2m40cm程度の天井高が確保されているのですが、防音工事後には2m~2m15cm程度にまで低くなります。壁についても4面の壁に対して防音対策を施す場合、1畳強(約1.7㎡)は狭くなると考えておきましょう。もう少しわかりやすく言うと、6畳の部屋を防音室に作り替える場合、5畳程度の部屋に仕上がるという感じです。
これが、新築時に防音室を作る場合には、希望する広さ、天井高を確保した状態で防音室を実現することができます。注文住宅の場合、設計段階から要望を反映してもらい、図面を起こすわけですので、通常の部屋と同じぐらいの天井高を確保することは難しくありません。ただ、部屋の面積を確保する場合には、敷地面積の上限があるわけですので、他の部屋の広さで調整は必要です。
このように、新築時に防音室を作る場合と、リフォームで防音室を作る場合を比較すると、前者の方が「広い空間の防音室を実現できる」という点がメリットになります。
タイミングで異なる防音室の使い勝手について
意外に見落とされがちですが、防音室は、新築時に作る場合と、リフォームで作る場合で、防音室としての使い勝手が変わってしまう場合があります。というのも、防音室は、通常の部屋よりも壁が分厚くなる分、狭くなってしまいます。楽器防音室レベルの高性能な防音室になると、通常の部屋よりも30cm以上狭くなるケースもあります。
こういった防音室特有の条件から、部屋としての使い勝手が大幅に変わってしまう場合があると考えておきましょう。
リフォームの場合、自由度が低い
リフォームで防音室を作る場合は、既存の部屋の防音性能を高めるという考え方になります。壁や床、天井などに防音対策を施すのにあわせ、既存のドアを防音ドアに交換するといった対策が一般的です。そして、この対策については、ドアの位置など、部屋の構造そのものは変更せずに対策を施すのが一般的です。したがって、元の部屋の出入り口が、角に設けられている場合は、壁が分厚くなる分、ドアの可動域が狭くなってしまい、出入りがしにくくなってしまう場合があるのです。もちろん、防音工事を行う時に、ドアの位置を変更することは可能ですが、その場合、防音工事以外の部分にも費用がかかってしまうことになります。
これが新築時に防音室を設ける場合には、ドアの可動域などを想定して、設置位置を決めることになります。したがって、防音室の出入りに不都合を感じるようなこともなく、快適に利用できるはずです。もちろん、ドアの設置位置を決めるのに別途費用がかかるなんてこともありません。
このように、新築時に防音室を設けるという選択は、利用者が最も使いやすいと感じる防音室を作れる点がメリットになります。
タイミングで異なる換気性能について
音はほんの小さな隙間からも漏れてしまいます。防音室は、こういった隙間をきちんと塞ぐことで音漏れを防いでいます。つまり、防音室は、通常の居室と比較すると、気密性が非常に高くなるという性質を持っています。逆に言うと、機械換気を行っていなければ、空気の入れ替えが非常に難しい部屋になるという意味です。
換気が不十分になってしまうと、部屋の中に嫌な臭いがこもったり、湿気が高くなることでカビの繁殖を招く恐れがあります。さらに、部屋の広さや防音室の用途などによっては、室内の酸素濃度にもかかわってきますので、換気システムをきちんと取り入れる必要があるのです。
リフォームの場合、建物の中で空気を循環する
換気システムについては、新築とリフォームではかなり違う場合があります。というのも、リフォームで防音室を作る場合、換気設備を導入したくても、既存の建物の構造に関わる部分に触れる工事(外壁に穴を開けるなど)は極力避けなければいけません。したがって、防音室の換気は、建物の中(廊下、ホール、隣の居室など)で空気を循環するような換気システムにするというのが一般的です。簡単に言うと、新鮮な外気を取り込むことが難しいわけです。
これが新築時の設計段階で防音室を考える場合、建物外から新鮮な空気を取り込み、循環させることができる換気システムの構築、施工が可能になります。さらに、換気口部分の遮音性能などもきちんと考慮してシステム選びを進めることができますので、換気口が防音上の弱点になり得ないのです。
このように、新築時に防音室を設計しておけば、新鮮な空気が循環する空間を作れるうえ、防音環境も壊さずに済むという点が大きなメリットになります。
タイミングで異なるネットワーク環境について
防音室の利用用途が、ネットでの動画配信やスタジオ利用など、インターネットの接続環境が重要な場合、特に注意が必要です。というのも、防音室は、高い防音性能を実現するため、重い素材で構成されています。そのため、携帯の電波やWi-Fiがつながりにくくなってしまう場合があるのです。
防音室内でのネット利用が必須という場合には、防音室まで有線LANを引っ張るのがオススメなのですが、施工のタイミングでこの部分にも違いが存在します。
リフォームの場合、インターネットの接続環境が悪化するかも
リフォームで防音室を作る場合、快適なインターネット環境を求めている方は、LANケーブルを防音室内にまで引き回す工事が必要になります。ただ、施工条件などによっては、防音室内へのLANケーブルの引き込みが難しい場合もあります。このような場合、Wi-Fiで対応するしかないのですが、防音室を構成する材料の特性上、どうしても通常の部屋と比較すると、速度低下を招いてしまう場合があります。このような場合には、電波を増幅する機器をプロバイダーなどからレンタルしてもらうなどと言った対応になるのですが、それでも電波環境が改善できない可能性があると考えた方が良いです。
新築時に防音室を設計する場合であれば、インターネット環境に関する心配はないと考えて構いません。もちろん、設計者に「防音室内でインターネットを利用したい」ということを伝え、あらかじめ配線用の設備を整えてもらう必要がありますが、家の設計段階で計画していれば、防音室内でも快適なインターネット環境を実現することが可能です。
最近は、動画配信者様からの防音工事の依頼が多くなっていますが、このような場合には快適なインターネット環境が必須です。防音工事が完了してから電波環境の問題に気付いた場合、手直しするのにさらなる費用がかかってしまいますので、リフォームで防音室を作る場合も、最初にネット利用のことは伝えておきましょう。
まとめ
今回は、防音室を作るタイミングについて、新築時とリフォームの違いについて、いくつかのポイントに注目してみました。この記事でご紹介したように、一般的にリフォームで作るものというイメージが持たれがちな防音室ですが、注文住宅の場合、新築に合わせて防音工事を行うことも可能です。ただ、ハウスメーカーによっては、新築の施工中に防音工事業者の同時施工を認めない場合がありますので、新築に合わせて防音室を作りたいと考えている方は、「防音工事が同時施工で出来るか?」を最初に確認しておくのがオススメです。
なお、この記事の内容を見ていると、防音室は新築と比較するとリフォームで作る場合のデメリットが多いと感じてしまった人もいると思います。この部分に関しては、当たり前のことで、新築時に防音室を作るということは、何もない状態で一から防音室を仕上げて行けるわけですので、部屋の広さや天井高、導入する設備の自由度は必然的に高くなるのです。リフォームの場合、既に存在する部屋に手を入れるわけですので、出来ることと出来ないことがどうしても生じてしまうなど、自由度は低くなります。ただ、防音性能に関して言えば、リフォームで防音室を作る場合でも、十分な性能を発揮させることは難しくありませんし、そこまで心配する必要はないと思いますよ。
これから新築の購入を検討している方で、楽器の演奏やホームシアターなど、「将来的に防音室が欲しい!」とお考えなら、新築時に実現するのがオススメです。なお、建売住宅を購入して防音室を作る場合は、新築に変わりはありませんが、防音工事の扱いはリフォームになります。