グランドピアノの防音室が欲しい!マンションにおけるピアノ防音の基本

今回は、マンションなどの集合住宅に住んでいる方の中で、グランドピアノの演奏をマンションでもできるようにしたいと思っている人に向け、マンションでのピアノ防音について解説します。

ピアノは、音の強弱の幅や音域が広い楽器で、クラシック音楽だけでなく、ジャズやポップスまで幅広いジャンルで愛されている楽器です。また、子供の情操教育に適した楽器とされていることから、習い事ランキングなどでも常に上位に位置する楽器となります。

ただ、ピアノの中でも、アコースティックピアノであるグランドピアノは、ボディ全体が共鳴体となるため、低音から高音まで幅広い音が室内に響いてしまいます。そのため、マンションなど、隣人との生活空間が近くなる環境では、ピアノの演奏による音漏れでトラブルに発展してしまうケースが非常に多いとされているのです。実際に、日本国内で防音工事が注目され始めたのは、集合住宅にてピアノ騒音による凄惨な事件が起きたことがきっかけとされています。

この記事では、自宅マンションで、グランドピアノの演奏を考えている方に向け、音漏れを心配することなく演奏できるようにするためのピアノ防音のポイントを解説します。

マンションでのグランドピアノ演奏の注意点

マンションなどの集合住宅は、一戸建てと異なり、各ご家庭の生活空間が非常に近い位置に存在する上、構造物でつながっているのが特徴となります。さらに、集合住宅では、さまざまな生活スタイルを持つ人が、同じ建物を共有して、近い場所で暮らしているのです。

そのため、ピアノに限らず、マンションなどの集合住宅での楽器演奏は、演奏音がうるさいという苦情が生じやすいです。さらに、グランドピアノに対する苦情については、演奏音だけでなく、階下のの住人から「振動が伝わってくる…」と言った苦情が出てしまうことも多いです。マンションなどの集合住宅では、楽器の演奏がトラブル源になりやすいということが分かっているため、演奏可能な楽器の種類や時間帯が管理規約などで決められているケースが多いです。しかし、マンションの規約を守った状態でグランドピアノなどを演奏した場合でも、隣人や階下の人から苦情が出てしまった…と言う相談が少なくないのです。

音は、空気を伝わって広がっていくというイメージですが、実は床や壁、天井などの物体を伝わって広がるものもあるのです。床などに入射した音は、物体内に伝わり外部へ放射されるため、建材を振動が伝わって拡散する音には特に注意が必要なのです。
マンションは、各ご家庭の生活空間が物体でつながっているわけなので、グランドピアノの演奏により近隣に迷惑をかけないようにするには、しっかりとした防音対策が必要です。

グランドピアノなど、ピアノ防音の基本

音の伝わり方、また防ぎ方については、戸建てなのかマンションなどの集合住宅かという建物の種類や、木造、鉄骨造、RC造なのかと言う建物構造などによっても大きく変わります。ただ、グランドピアノなど、アコースティックピアノの防音を考えた時には、基本的に空気伝搬音と固体伝搬音の両方の対策が必須であると考えてください。

空気伝搬音は、ピアノから出る演奏音そのもののことで、鳴らした音が空気を伝わって広がっていくものです。一方、固体伝搬音と言うのは、振動が建材などを通して伝わっていく音のことを指しています。グランドピアノは、本体全体が共鳴体であり、さらに床に触れている楽器であるため、演奏時には固体伝搬音が発生するのです。例えば、「ペダルを踏む音」や「鍵盤を叩く音」は、ピアノを通して床に伝わる固体伝搬音で、これらの音が階下に伝わることで、苦情に繋がりやすいのです。

グランドピアノなどのアコースティックピアノの防音は、壁などの対策により空気音を防ぐだけでなく、床や天井と全体に対策を施すことが必要です。

グランドピアノ用防音室の基本

それでは、マンションなどの集合住宅にて、グランドピアノの演奏を考えた時、どのような防音室が必要になるのかについても解説します。

先程ご紹介したように、グランドピアノが生じさせる音は、ピアノの演奏音と言った空気伝搬音だけでなく、ペダルを踏むときの音が本体から床に伝わるなど、固体伝搬音も存在するのです。そのため、しっかりとした性能を持つ防音室を作るには、壁・天井・床に対して遮音・防振構造(浮遮音層)とするのが必須と考えてください。壁だけ二重構造にしたとしても、ピアノの脚から振動が床に伝わり、物体を通して他の部屋にまで拡散していきます。そのため、その振動を伝えないようにするには、防音空間をマンションから浮いている空間にする必要があるのです。

これは、窓の防音性を高めるため、二重サッシにするという対策をイメージすると分かりやすいです。ガラスとガラスの間に隙間が作られるように、壁や床、天井に関して、全て浮いている空間を作ることにより、楽器の演奏音はもちろん、振動すらも減退させる防振構造にすることができるわけです。

ちなみに、グランドピアノなど、楽器用の本格的な防音室については、「部屋(箱)の中にもう一つの部屋(箱)を作る」と言った解説がなされ、箱の中に浮き構造で箱を設置することから、ボックスインボックス工法などと呼ばれます。アコースティックピアノやドラムなど、振動音の対策も必要な楽器防音の場合は、この工法の採用が基本となります。

マンションでのピアノ防音の手法

グランドピアノ用の防音室など、本格的な防音環境が欲しいと考えた時に、専門業者に依頼して、オーダーメイドの防音室を作るのが一般的です。ただ、この方法に関しては、多額の費用がかかってしまう…という明確なデメリットがあるのも事実です。

そこでここでは、マンションでのピアノ防音に関して、オーダーメイドの防音室以外にどのような方法があるのか、またコストをかけてオーダーメイドの防音室を作るメリットなどを紹介します。

マンションでのピアノ防音の手法

マンションのピアノ防音に関しては、専門業者に依頼して防音室を作るという方法以外にも手段があります。例えば、以下のような方法であれば、コストを抑えることが可能です。

  • ・ピアノに消音器を設置する
  • ・ハイブリットピアノを使用する
  • ・ユニット型防音室を設置する

ピアノの防音対策には、上記のような方法があります。例えば、消音器やハイブリットピアノは、ピアノ本体に対策を施すことで演奏音を生じさせないようにするという対策になります。ピアノを弾く場合、ヘッドホンなどを装着することで、自分は音を聞きながら外部には演奏音を出さないようにすることが可能です。注意が必要なのは、消音器やハイブリットピアノを活用した防音の場合、ピアノの上達にはあまり適していない、振動音の対策はできないというデメリットがある点です。ハイブリットピアノや消音器の装着の場合、自分の演奏音を生で聞くのではなく、電子音に変換された音を聞くことになります。また、鍵盤を叩いたときの感触などが変わるため、ピアノの上達を妨げる可能性があるとされるのです。さらに、音が生じなくなるのはあくまでも演奏音だけで、ペダルを踏むとき、鍵盤を叩くときの振動音は生じてしまいます。そのため、階下の方からの振動に対する苦情はとめられない可能性が残ります。

次に、ユニット型防音室については、グランドピアノが入る大型のタイプの場合、防音工事とさほど変わらないレベルのコストがかかります。例えば、大手メーカーの3畳用のユニット型防音室の場合、本体だけで160万円ほどが販売価格となっています。ここに運搬、設置費用が追加されるため、200万円近いコストになってしまうでしょう。
さらに、ユニット型防音室は、室内の音響環境を微調整することができないという致命的な問題が存在します。吸音材を後から設置するなど、反響音を抑える対策は自分でも行えますが、高いお金をかけているのに、完全に自分好みの音響環境が手に入らない…という点は大きなデメリットになるでしょう。

オーダーメイド防音室のメリット

専門業者によるピアノ防音は、既存の部屋に対して防音リフォームを施すことで、防音室に作り替える方法となります。この方法の場合、工場で製造される製品であるユニット型防音室とは異なり、お客様の用途や目的、予算などに合わせて最適な防音室にすることが可能です。防音性能はもちろん、レイアウトや内装デザインの自由度も高く、デッドスペースを限りなく少なくすることで、収納棚や楽譜棚などを造作することも可能です。

防音室の遮音性能に関しては、書斎やテレワーク用の簡易的な防音室から、生ドラムが叩けるレベルの性能まで、お客様の要望に合わせて選択することが可能です。もちろん、技術力が高い防音工事業者の場合、仕上がりの性能保証をしっかりと行ってくれるため、高いお金をかけたのに、出来上がった防音室に不満を感じるなんてこともありません。防音室内は、お客様が希望する音響環境に調整することができるので、長時間防音室の中で過ごせることも大きなメリットになるでしょぅ。

なお、集合住宅での防音工事については、基本的に分譲マンションなど、お客様の持ち物件でなければ施工が難しいです。賃貸マンションなどになると、居住者が工事にかかる費用を支払うと言っても、防音工事の許可が下りない可能性が高いです。さらに、退去時には原状回復義務が定められているため、防音工事の費用だけでなく、解体の費用も掛かってしまうため、莫大な出費になってしまいます。賃貸の場合は、引っ越しの際も移動させることができるユニット型防音室の設置が良いでしょう。

まとめ

今回は、マンションなど、集合住宅でグランドピアノの演奏を検討している方に向け、マンションでのピアノ防音の基礎知識をご紹介しました。

記事内でご紹介したように、ピアノは単に演奏音が騒音問題の原因となるだけでなく、打鍵音やペダルを踏むときの振動が生じるため、振動音の対策が必要不可欠なのです。そのため、各家庭の生活空間が構造物でつながっている集合住宅の場合、防音空間を独立させるため、浮き構造の防音室を作らなければいけません。

もちろん、浮き構造の防音室は、高度な技術が必要になるため、防音室を作るための費用はそれなりにかかってしまいます。現在、マンションなどの集合住宅に住んでいて、自宅に高性能な防音室が欲しいとお考えなら、お気軽に弊社に相談ください。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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