自宅に防音室を作るなら組み立て式とオーダーメイドならどっち?
今回は、自宅に本格的な防音室が欲しいとお考えの方に、事前に抑えておきたい防音室工事に関する基礎知識についてご紹介します。コロナ禍により、テレワークやリモート学習が拡大してきた近年では、防音室とは言わないまでも部分的な防音工事を進めたいと考える方が増えています。例えば、窓のみ、壁のみ、床のみといった感じに、それぞれのご家庭が抱える悩みに合わせて最も安価な方法で防音対策をとるという方法です。
しかし、簡易的な防音対策については、話し声や足音などの生活音の対策はできるのですが、自宅で楽器の演奏を考えているといった本格的な防音性能が欲しい人には不向きと言えます。楽器の音は、皆さんが考えている以上に大きいですし、四方八方に音が拡散していくため、部分的に対策してもあまり意味がないのです。そこで、楽器の演奏を検討している方が取り入れるのが、本格的な防音室です。
ただ、ほとんどの方が防音室に関する知識を全く持っていないことから、何も考えずに導入してしまうと、後悔してしまう結果につながる可能性が高いです。そこでこの記事では、防音室の導入に失敗しないため、事前に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
後悔しないために抑えておきたいポイント
それでは、自宅に防音室を導入しようとお考えの方が知っておきたいポイントをいくつかご紹介していきます。
なお、自宅に防音室を設けるという場合でも、防音工事業者にリフォームしてもらい防音室を作るというケースと大手楽器メーカーなどが販売している組み立て式の防音室を設置するという2つのパターンが存在します。この二つについては、組み立て式の方が安価で、導入にかかる日数が少ないことから、手軽という点が注目されることが多いですね。しかし、防音工事業者に一から防音室を作ってもらう場合、部屋の内装はもちろん、音響環境など使用者の好みに沿った唯一の防音室を作れるという非常に大きなメリットが存在します。
基本的には、予算が許すのであれば、自由設計で防音室を作れる施工タイプの方がおススメです。こちらであれば、性能面もお客様の要望や周辺環境に合わせて最適なものを作ることができます。これ以外のポイントとしては以下のようなことを頭に入れておきましょ。
ユニット型防音室の設置スペースについて
まずは、組み立て式防音室の設置スペースに関するポイントです。メーカーの公式サイトなどで確認すればわかりますが、組み立て式防音室は、最も小さいものであれば、0.8畳サイズのものから存在します。基本的には、ボックスの大きさを選んで部屋の隅などにおいてもらうという防音室になるので、設置スペースはユニット型防音室の大きさ分があれば良いと考えてしまう方がほとんどです。
しかしそのようなことはなく、小さいものを選んでもそれなりのスペースが必要になるのです。組み立て施工などのことを考えずに購入してしまうと、いざ組み立ててもらうときにスペースが足りない…なんてことになってしまう可能性があります。以下に、それぞれの大きさごとの必要スペースの参考値ご紹介しておきます。
- 0.8畳タイプ(クラリネット・ボーカル用)
最も小さなタイプです。基本的に人が立っているだけの簡易タイプなので、ボーカル用やクラリネットなど、小さなスペースで練習ができる楽器に適しています。このタイプでも、設置には4畳程度のスペースが必要です。 - 1.2畳タイプ(サックス・フルート・ギター用)
椅子を持ち込んだり楽譜代を設置しても問題ない大きさです。このタイプも、4畳程度のスペースが必要です。 - 2~2.5畳タイプ(アップライトピアノ用)
2畳以上になるとアップライトピアノを設置できます。ただし、室内で音が反響しますので、長時間音を出して演奏するのはきついです。このタイプになると、6畳程度のスペースが必要です。 - 3~3.7畳タイプ(グランドピアノC3サイズまで用)
C3サイズまでのグランドピアノ用です。設置のためには、6~8畳程度のスペースが必要です。 - 4.3畳~タイプ(グランドピアノC5サイズなど)
C5以上のグランドピアノやアンサンブル用のユニット型防音室の場合、8畳程度のスペースが必要です。
なお、上記の設置スペースはあくまでも目安です。部屋の形などによっても設置に必要なスペースが変わりますので、購入前に設置予定の部屋を見てもらうと良いでしょう。ちなみに、ユニット型防音室は、高さも違いがあり、音の跳ね返りに差が出ます。基本的には、ピアノや管楽器の演奏を想定する場合、天井が高いハイタイプがオススメです。
防音室の性能について
防音室は、目に見えない音の問題を解消するために導入するものです。それでは、防音室の性能はどこで判断すれば良いと思いますか?よくある失敗事例としては、防音室の性能に注目するのではなく、導入にかかるコストで比較して「性能が足らなかった…」と言うケースがあります。ここでは、防音室の性能を見極めるための基礎知識をご紹介します。
防音室を選ぶときには、遮音性能「Dr**」と書かれている、数字の部分に注目すると良いでしょう。この数字は、防音室の壁でどれだけの音をカットできるのかを示す数字で、数字が大きければ大きいほど音を小さくすることができます。
例えば、防音室を導入するため業者と打ち合わせをしていると「Dr30~50」という説明があると思います。そしてこの防音室の性能に関しては「-30~-50dB」の性能を持つという意味なのです。つまり、ピアノを演奏するときには100dB程度の音が出るのですが、この音を50~70dB程度まで小さくできるという意味です。
なお、こういった遮音性能は、防音室だけが持つのではなく、一般の戸建て住宅の壁でも木造で-30dB程度、高気密住宅で-40dbB程度の遮音性能を持っています。窓に関しても何の対策がなくても-15dB程度の遮音性能があります。つまり、防音室は、もともと住宅が持つ性能もプラスしてどこまでの性能を持たせるのかを考えるのです。
ちなみに、大手メーカーが販売しているユニット型防音室は、Drが30・35・40の3タイプが基本です。施工タイプであれば、要望に合わせてDr50程度まで発揮できます。そして防音室の性能を検討する際には、どのような時間帯に防音室を利用するのかがポイントになります。そもそも防音室というものは、室内で生じた音を完全に無音にすることを目指しているわけではありません。先ほどご紹介したように、100dBの音を防音室外では50dB程度にまで小さくすることを目的にしているわけです。これは、どのような場所でも、さまざまな雑音に囲まれているため、その雑音と同程度の音量まで小さくすれば、騒音トラブルの可能性が少なくなるからです。つまり、周囲の雑音が大きい昼間にしか防音室を利用しないのであれば、多少の音漏れがあったとしても問題ないと言え、その逆に周囲が静かな夜間に使用する場合は、お金をかけてでも高性能な防音室を作る必要があるのです。防音室の性能に関しては、普段の使い方なども考慮して決めるようにしましょう。
施工タイプの違いついて
それでは最後に、ユニット型防音室と施工タイプで迷った方が知っておきたいポイントをご紹介します。上述しているように、予算が許すのであれば、自由設計である施工タイプの方がオススメだとは言われています。しかし、そのほかの細かな違いもきちんと理解して選ばなければ後から後悔してしまう結果になるかもしれません。
以下でそれぞれの違いを比較しておきます。
- 施工期間について
ユニット型であれば最短4時間程度で完成します。大きなユニット型防音室でも数日で設置できます。一方、施工タイプの防音室は、最短でも10日程度で、条件などによっては1か月程度かかる場合もあります。 - 防音室の大きさ
ユニット型は、購入時に部屋の大きさを決めます。一般的に、0.8~4.9畳の中から最適なものを選ぶ形です。施工タイプは自由設計ですので、大きさは自由自在です。 - 遮音性能
ユニット型は、Dr30・35・40から選ばなければいけません。施工タイプは、使用する楽器や時間帯、予算などに合わせて遮音性能を自由に決めることができます。 - 設置条件
ユニット型の場合、賃貸などでも設置可能で、移設などもできます。なお、かなりの重量があるので、木造アパートの2階以上になると設置不可となるでしょう。また、設置には管理会社や大家さんの許可が必要です。施工タイプの場合は、大家さんからの許可が基本出ませんし、賃貸の場合は施工できないと考えておきましょう。区分マンションなどであれば、交渉の結果認めてくれる場合もあるかもしれません。もちろん移設は不可能です。
まとめ
今回は、自宅に防音室を導入しようと考えている方に向け、実際に施工を依頼する前に知っておきたい基礎知識をご紹介してきました。
この記事でご紹介した内容を無視している方が意外に多く、ユニット型防音室を購入したものの、スペース的な問題で設置できない…、予算をケチったら防音室があるのに、騒音でクレームが出た…など、最悪な結果を招いて、導入を後悔してしまうという方も少なくないようです。
ここでご紹介した内容は、本当に基礎の基礎ですので、絶対に頭に入れておきましょう。