防音の基礎知識。吸音と遮音の仕組みを簡単に説明します!

今回は、防音工事を検討している方に向け、意外と知らない防音の中身について解説していきたいと思います。

まず皆さんに抑えておいていただきたいのは、防音工事の『防音』というものは、具体的な対策を差しているのではなく、あくまでも概念だということです。防音は、文字通り「音を防ぐ」ということを意味しているのですが、音を防ぐためにはさまざまな効果をもたらす対策を施さなければいけません。そして、最終的に「防音効果」という結果を出すために必要になる技術が『遮音』や『吸音』『防振』などと言ったものです。

自宅で楽器の演奏を検討している方が我々のような防音工事業者に防音室を依頼する場合、上述の、吸音や遮音、防振対策をうまく組み合わせることで防音室を作り上げていくのです。最近では、ホームセンターなどでさまざまな建材を手に入れることができるようになっているため、防音工事もDIYで賄おうとする方が増えています。しかし、「防音工事の基礎知識」を知らないことで、満足のいく防音効果を発揮させることができず、音漏れでクレームが出てしまうなんて話をよく耳にするようになっています。

そこでこの記事では、防音工事の基礎の基礎として、吸音と遮音の仕組みをご紹介します。

防音の仕組み

防音と聞くと、音を漏らさない、もしくは音が侵入しないようにするための対策と誰もが考えてしまいますよね。しかし、冒頭でご紹介したように、防音という言葉はあくまでもが概念的なものであり、吸音、遮音、防振、制振などの技術を組み合わせて得られる結果が防音という言葉になるのです。例えば、防音工事業者に音漏れ対策として依頼する遮音工事も防音ですし、反響音対策として依頼する吸音工事も防音ということになるのです。

防音工事というものは、現場環境やお客様の要望に合わせて、最適な対策を施すものですの、防音という言葉の中には吸音、遮音、防振、制振の4つの意味があると考えておきましょう。ここでは、それぞれの意味について簡単に解説していきます。

吸音について

吸音は、文字通り音を吸収する対策のことを指しています。具体的には、音(空気音)が吸音材を通過する際に、吸音材の中で摩擦することによって、音エネルギーが熱エネルギーに変換され、減退することを言います。なお、吸音材の中で摩擦熱が起こり、音が減退する仕組みではありますが、吸音材自体が発熱するということはありません。
防音工事に採用される吸音材は、グラスウールやロックウールなど、そのほとんどが多孔質素材で給気を通す素材となっています。多孔質である理由は、音が素材の中に入り込まなければ、摩擦による吸音効果が生まれないからです。逆に言えば、多孔質でないものは吸音効果が低いとも言えます。

吸音率について
吸音材の性能を表すときには『吸音率』が用いられています。吸音率は、吸音材に音を当てた際に生じる入射音から反射音を引いた数値となっています。簡単に言うと、その素材が、どれだけ音を反射させないのかという数値を考えていただければ良いと思います。
具体例を出してみると、ある素材について、2000Hzの音に対する吸音率が0.8だった場合、2000Hzの音の80%を通すが、残りの20%は反射するという意味になります。吸音率に関しては、「0.8」と記載されている場合、80%の音を消すと考える方が多いのですが、その逆で80%の音を通すという意味になります。この部分は勘違いする人が非常に多いので注意しましょう。

遮音について

次は遮音についてです。文字通り「音を遮る」ための対策で、遮音材を設置することで、外部からの音の侵入や、室内の音を外に漏洩するのを防ぐための対策となります。
遮音材は、音を通しにくいという特徴を持っており、音が遮音材に当たった時には、跳ね返すことで音の侵入や漏洩を防ぎます。なお、遮音材にも、材料や質量などで違いが存在しており、採用する遮音材によって遮音できる周波数などが変わっていきます。例えば、低音の遮音を目指すのであれば、より質量がある遮音材が必要なるといった感じです。

透過損失について
遮音材の性能は透過損失で表されます。透過損失とは、入射音から透過音を引いた数値のことを指しています。簡単に言うと、室外に存在する騒音値(dB)をどれだけ遮音材で低減できるのかを表す数値になります。例えば、特定の周波数帯で、入射音を100dBとし、透過音が80dBだったとしましょう。この場合、遮音材の透過損失は20dBという計算になります。
なお、遮音材についても、吸音材と同様、各周波数帯によって透過損失の数値が違います。

防振について

防振は、簡単に言うと振動が伝わることを防ぐ対策のことです。具体的には、物体A(衝突する側)と物体B(衝突される側)の間に防振材を設置し、衝突の際に起きる振動について、その伝わりを少なくして、固体伝搬音を減退させる対策のことを指しています。
分かりやすい例を挙げると、床に振動が伝わらないように、柔らかいクッションマットを敷くといった対策です。防振材は、その多くが柔らかい素材で作られており、衝撃を吸収することで衝突の力を和らげます。

集合住宅での振動音について
近年では、マンションなどの集合住宅において、振動を原因とする騒音トラブルが増えています。これは、足音によるものが主なのですが、要は、足と床が衝突することで発生する振動が床を通じて下の階へ伝わり、固体音として生じるのが大きな原因です。なお、固体音の伝わり方はマンションの床の仕様によって変わります。一般的には、コンクリートスラブ(躯体)の上に下地調整材を使いそのまま床フローリングを敷く「直床」と呼ばれる構造になっているのですが、これだとそこまで防音効果が高くありません。したがって、防音工事では、コンクリートスラブ(躯体)と床フローリングの間に空間を取り、コンクリートスラブとの接点を少なくする二重床と呼ばれる方法が採用されます。これであれば、振動があまり伝わらなくなるので、足音などによるトラブルの心配が少なくなります。

まとめ

今回は、防音の基礎知識として防音効果が得られる仕組みについて解説しました。この記事でご紹介したように、皆さんが良く用いる『防音』という言葉については、何か具体的な手法を表しているのではなく、あくまでもいろいろな対策を行った結果得られるものです。

防音効果を求める場合には、どのような音を小さくしたいのかによって必要な対策がかなり違ってきます。例えば、楽器の音色や人の声などの空気音については吸音と遮音をバランスよく施さなければいけません。さらに、周囲へ振動として伝わっていくものについては、吸音対策や遮音対策ではなく、振動を抑えるための防振対策が重要になるのです。

最近は、ホームセンターなどで材料を集めて自分で防音対策を試みる方が増えていますが、この基礎の部分を抑えておかないと、見当違いな対策を行ってしまい、無駄なコストをかける結果になりかねませんので注意しましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

[trustindex no-registration=google]

古民家再生ショールーム防音工事の匠はショールームがあります

ピアノ防音室

実際に防音工事の匠が施工した防音室で防音性能を体験することで、当社の防音室の機能・音響などを体感していただけます。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物にショールームがある会社さんが多い中、特に施工後にショールームと性能や音の反響がちがうといったトラブルが戸建てのお客様に多い業界ですが、町家再生事業として難易度の高い防音室を防音性能が最も出にくいとされる木造町家のショールームをご用意いたしました。

このページの先頭へ