一般の方がほとんど耳にすることが無い、防音工事に関する専門用語について
今回は、防音工事にまつわる専門用語について代表的なものをいくつかご紹介していきたいと思います。と言うのも、防音工事業界で使用される用語については、皆さんの一般生活の中ではほぼ確実に耳にすることが無いと言えるほど特殊な用語が使われており、何の前知識もない状態で業者との打ち合わせに入ると、業者さんが言っていることの意味を間違って捉えてしまい、工事後に後悔してしまう結果を招いてしまう可能性があるからです。
もちろん、分からない言葉が出てくれば、その場で業者に質問すれば良いのですが、防音工事の打ち合わせでは分からない言葉だらけで「話の腰を折るのもな…」と気を使ってしまう方が非常に多いのです。近年では、防音工事の需要が非常に高くなっており、本来は防音工事の専門業者ではない内装業者が防音工事の依頼を受けるようになっています。そのため、「本当に技術を持った専門業者なのか?」を見極めるためにも、ある程度業者が何を言っているのかを理解できなければいけない時代と考えましょう。
この記事では、防音工事の打ち合わせでよく出てくる用語について、「これは覚えておきたい!」と思えるものをピックアップしてご紹介していきます。
防音対策に関する用語
まずは、自宅に防音工事をしたいと検討している方が絶対に押さえておくべき用語からご紹介します。一般的に防音工事と言うのは、壁や窓、床に天井などの防音性能を高める工事だとイメージをされており、『防音』そのものが対策の名称なのだと考えている方がほとんどだと思います。しかし、一般の方にも広く用いられている『防音』という用語については、あくまでも概念的なものであり、具体的な対策を指している用語ではないのです。以前、「防音工事の基礎知識。防音・遮音・吸音の違いって知っていますか?」という記事の中でも触れていますが、一口に防音工事と言っても、さまざまな対策を施して、最終的に「音がおさえられる」という結果が出るのです。
ここでは、防音工事に頻繁に登場する、各対策の意味についてご紹介しておきます。
吸音
まずは『吸音』です。文字の並びから「音を吸収する対策」と言うことはイメージできますよね。
これは、音を反射させずに吸い取る対策のことで、正確には、空気の動きに対する抵抗によって、その振動を減退させることで音を小さくすることを指しています。そして、それをもたらす対策が吸音対策となるのです。なお、下で紹介する『遮音』とは正反対の対策となるのですが、どちらも防音と言う結果をもたらすためには非常に重要な要素になります。
吸音は、音を抜けさせて反射させないようにする工夫で、反射を防ぐ値が高くなるほど吸音能力が高いということです。
遮音
『遮音』も、その文字の並びからイメージしやすいと思います。これは『遮』という文字から分かるように、音を遮る対策のことです。正確には、空気中を伝わってくる音を遮断して、外に透過していかないようにすることが遮音対策などと呼ばれます。
防振
『防振』は、防音工事などよりも、耐震補強などで登場しそうな用語ですね。文字通り、振動を防ぐことを意味しています。
振動と音の関係が分からない人も多いかもしれませんが、そもそも音は空気を振動させて伝わる音と、壁などの構造物を振動させて伝わる音があり、どちらも振動が関係しているのです。そして、防振対策については、日常生活で絶対に発生する足音など、壁や床への振動が隣家や階下の部屋に伝わらないようにする対策のことを指しています。要は、足音による振動を防いで、音として伝わらないようにするという感じです。
制振
防振と似た用語で『制振』というものがあります。こちらは、音の振動をできるだけ短い時間で制し、音が発生するのを防ぐことを指しています。制振は、揺れを制御するものを用意し、発生した振動を熱エネルギーに変換して発散させることで、音の大きさを減退させる対策になります。
音の単位に関する用語
防音工事では、聞きなれない単位で音の大きさなどが表現されます。日常生活では音楽関係者以外はほぼ耳にすることが無いと思いますので、それぞれが何を意味するのかをきちんと押さえておきましょう。
『dB(デシベル)』
『dB(デシベル)』という単位は、防音工事を検討した時に、初めて目にするという方が多いと思います。実際に、今まで見たこともない単位で、何を意味した数字なのか全く分からないとなってしまうケースも多いです。ただ、防音工事を検討して、業者と打ち合わせを行う場合、必ず登場しますので、どういった単位なのかはきちんと押さえておきましょう。
『dB』は、音の大きさや強さを表現するもので、音のエネルギーである音圧を表すときに使用する単位となります。音の大小はこの音圧で決まるのです。ちなみに、法律などでも騒音レベルというものが定められており、そこでもこの単位が利用されます。
参考資料:深谷市「騒音の大きさの目安」
『Hz(ヘルツ)』
ヘルツは、ラジオのチャンネルなどの単位でもありますので、見たことはあるという方が多いと思います。これは、周波数を表す単位で、1ヘルツが「1秒間に1回の周波数・振動数」と定義されていて、音の高低に関係します。
一般的に、人の耳で聞くことができるのは、「20~20000Hz」の範囲と言われており、周波数が大きくなるほど高い音で、数値が小さくなるほど低い音になります。なお、防音を考えた場合、低い音ほど難しくなります。
その他、防音工事で良く聞く用語
ここまでは、防音工事の基礎の基礎として頭に入れておくべき用語をご紹介してきました。そして、ここからは、一応頭に入れておいた方が良いかなと思える用語をいくつかご紹介しておきます。なお、このサイト内の他の記事の中にもちょくちょく出てくる用語ですので、防音工事業界では頻繁に耳にする可能性があるものと考えておきましょう。
空気伝搬音
楽器などの音源から放出された音で、空気中を伝わって聞こえる音を『空気伝搬音』と言います。要は、ピアノの音と言われて、皆さんがイメージする音そのものと思っておきましょう。
この空気伝搬音は、距離減退によって、音源からの距離が離れるほどレベルが減退しますが、塀などの遮蔽物などによっても減退します。そのため、これを防音するためには、壁や床の重量を大きくしたり、気密性を高める、多重構造にするなどの対策がなされます。
個体伝搬音
振動源から発生した振動が建物の構造体である床や壁などを振動して伝わり、受音室の壁などを振動させて空気中に放射する音のことを『個体伝搬音』と言います。ピアノの騒音トラブルなどは、ピアノの音そのものが問題となるのではなく、ピアノの脚から床に振動が伝わり、それが階下に伝わってしまう…と言うケースが非常に多いです。要は、マンションなどで床の防音工事を行うのは、個体伝搬音の対策の為です。
個体伝搬音の伝搬経路における減退は空気伝搬音よりも小さく、減退傾向は伝搬経路の地盤や固体の形状、さらに音として放射する面の構造などによって変わります。個体伝搬音の防音対策は、振動源の下にクッション性の高い緩衝材を使用することや、建物の構造強度の向上などが施されます。
軽量衝撃音(LL)
スプーンなどの硬質な物を床に落とした時に生じる比較的軽めで高音域の音の性能表示です。
重量衝撃音(LH)
子供が飛び跳ねたり椅子を動かすときに生じる鈍くて低い音の性能表示です。
グラスウール
グラスウールは防音工事でよく使用される建材で、ガラスを高温で溶かして繊維化したものにバインダー(接着剤)混ぜ、熱して押し固めて成形された吸音・断熱材でとなります。
このグラスウールという建材は、内部に連続した無数の空気室を持つ多孔質材料となるため、入射した音エネルギーが内部の細かい空気室に伝わることで、材料や空気を振動させ、音のエネルギーを熱エネルギーに変換するのです。この原理を持つことから、低音域から高音域までの音に対して優れた吸音性を発揮します。
ロックウール
ロックウールも防音工事に良く使用される建材です。ロックウールは、内部の空気の壁が音エネルギーをしっかりと吸収するため、音漏れを大きく軽減することができます。ロックウールは、人間が最も感じやすいと言われている「250Hz~2.0KHz」の周波数域の音を中心に、ほぼすべての音域に対して優れた遮音性を発揮すると言われています。
まとめ
今回は、防音工事を検討している方が、業者と打ち合わせを行う前に頭に入れておきたい業界用語についてご紹介してきました。
この記事でご紹介した用語については、防音工事業者の口からよく登場するものの、ほとんどの方は初耳だったのではないでしょうか?防音工事は、一般のリフォームとは一線を画すほど専門性が高い工事になりますので、使用される言葉も聞き馴染みにのない用語が多いと思います。したがって、「何を言っているのだ?」と思った時には、遠慮なく話を止めて、その意味を質問するようにしましょう。
そうしなければ、あなたの要望が正確に伝わりませんし、業者が伝えたい細かなニュアンスがズレてしまい、出来上がる防音室が要望と異なる…なんてことになる恐れがあるのです。