オーダーメイド防音室と比較した時のユニット型防音室のメリット・デメリット

今回は、自宅の防音対策の中でも、比較的高い性能を求める方が導入することが多い『ユニット型防音室』のメリットとデメリットについてご紹介したいと思います。

近年では、マンションなどの集合住宅で生活する方が増加していることから、足音やテレビの音声、話し声などの生活音で近隣との騒音トラブルにならないため、床や窓など部分的に簡易的な防音対策を施す方が増加しています。しかし、こういった部分的な防音対策の場合、部屋全体から漏れ出る音の対策にはならないため、楽器の演奏音などを防ぐことはできないのです。

例えば、お子様がピアノを習っている、音楽関係の仕事をしているという方であれば、自宅でも長時間楽器の練習を行いたいと考える方が多いです。しかし、こういった目的を持っている方に関しては、上述したような簡易的な、もしくは部分的な防音対策を施したとしても、音漏れを防ぐのが難しく、高確率で騒音トラブルを抱えてしまうことになるのです。それでは、自宅で思いっきり楽器の演奏をしたい…と考えている方は、どういった対策を取ればよいのでしょうか?

一般的には、防音の専門業者に部屋を直接加工して防音室を作ってもらうという手法と、ヤマハのアビテックスやカワイのナサールに代表されるユニット型防音室を設置するという2種類の方法が有名です。自宅に楽器演奏に耐えられるような本格的な防音室が欲しい方の場合、この2つの方法はどちらを選んだら良いのだろう…と迷う方も多いと思います。そこでこの記事では、専門業者の防音工事よりも低コストと言われているユニット型防音室のメリット・デメリットをご紹介します。

ユニット型防音室を設置する場合のメリット

それではまず、専門業者による防音工事ではなく、ユニット型防音室を設置するという選択のメリットからご紹介していきます。

まずユニット型防音室がどういったものかをわかりやすく言うと、防音対策が施されたプレハブ小屋のようなものをイメージしていただければわかりやすいと思います。専門業者による防音工事であれば、壁や床、天井などに直接加工して防音性能を持たせるのですが、ユニット型防音室の場合、部屋の中に防音性能の高い小さな部屋を設置するといった感じです。したがって、既存の壁や床などを加工する必要がないので、賃貸住宅などでも高い防音環境を得られるのです。

このユニット型防音室のメリットは、直接壁などを加工する本格的な防音工事よりも低コストで導入可能だということや、施工期間が短い、自由度が高いと言った点が指摘されています。以下で、ユニット型防音室のメリット面をもう少し詳しくご紹介しましょう。

メリット① コストパフォーマンスが高い

ユニット型防音室の大きなメリットは、そのコストパフォーマンスの高さです。ユニット型防音室は、楽器演奏に耐えられるレベルの物でも、安い物であれば100万円弱で購入できる製品もあり、専門業者に本格的な防音工事を行ってもらうのと比較すれば、かなり安価に導入することが可能です。

さらに、賃貸住宅などであれば、物件を傷つけることなく楽器の演奏ができるようになるのです。もともと、賃貸住宅で楽器演奏をしたいと考えた場合「防音仕様の部屋を借りる」か「原状回復可能なユニット型防音室を買う」の2択になります。通常の部屋に、実費で防音工事を施したいと言っても、ほとんどの場合オーナー様から許可がおりないと思います。

それでは、この2択であれば、どっちがお得なのでしょうか?一般的に防音仕様の賃貸住宅に入居することを考えたら、通常の部屋よりも2万円程度家賃が高くなると言われます。それに対し、必要最小限のユニット型防音室を購入する場合は、最低でも100万円前後のイニシャルコストが必要になります。これだけで見ると「100万円払うのはちょっと…」と考えてしまう人が多いかもしれませんね。

しかし実際には、家賃が2万円高い部屋を借りた場合、4年間住み続ければ総額が高くなってしまい、最初に防音室を購入していた方がお得な訳です。さらに、ユニット型防音室であれば、引っ越しの際でもそのまま持っていくことができますし、その気になれば何十年も同じ防音室を使い続けることも可能です。
将来的に、防音室が不要になった場合には、オークションサイトやフリマアプリなどで売却することも不可能ではない時代になっていますし、非常に高いコストパフォーマンスを発揮することができるのです。

メリット② 自由度が高い

ユニット型防音室は、上記のように引っ越しの際でも移動させることができる点も大きなメリットです。もちろん、移動させるために費用は掛かってしまいますが、自分の住みたい部屋を自由に選べるのは非常に大きなメリットなのではないでしょうか?

近年では、防音対策を施された賃貸住宅が人気で、その数が増えていると言われますが、それでもどこにでもあるとは決して言えない程度の数しかありません。また、供給数のわりに人気が高いため、なかなか希望する地域で防音仕様の部屋を見つけるのは難しいのです。
しかし、ユニット型防音室を所有しているのであれば、防音仕様になっていない物件でも、防音室の設置を許してもらえば良いだけですので、物件の選択肢が圧倒的に広くなるのです。ユニット型防音室の設置は、部屋自体をそこまで傷つけることもありませんし、大家さんに設置を断られてしまう…なんてことも少ないはずです。なお、高性能なユニット型防音室は、皆さんが考えている以上に重量のある設備です。そのため、長期間同じ場所に設置した場合、フローリングが凹んでしまうなどと言った状況になり、退去の際の原状回復費は多少高くなると考えておきましょう。

メリット③ 工期が短い

最後は、「工期が短い」というメリットです。これは、戸建て住宅や分譲マンションなど、専門業者に本格的な防音室を作ってもらうのと比較した場合のメリットになります。ユニット型防音室は、すでに出来上がったものを部屋に設置するだけなので、極端に言えば1日で効果的な防音室を作る事が可能です。専門業者に一から防音室を作ってもらう場合には、8畳程度の部屋で2週間程度かかるというのが一般的なので、圧倒的に施工期間が短くなります。

ただし、何か理由があって「一刻も早く防音室が必要!」といった以外の人にとっては、そこまで大きなメリットには感じないかもしれません。時間的余裕がある人であれば、内装などにこだわって理想の防音室を作りたいという人が多いです。また、ユニット型防音室は、楽器店などに見学に行き、設置する製品を選ばなければならないため、防音室の設置を検討した段階から考えると、完成までにそれなりの時間と手間がかかります。専門業者による防音工事の場合、業者側が現地調査に来てくれるので、オーダーメイドの防音室の方が手間が少ないと考える人もいるようです。

ユニット型防音室のデメリット

当然ですが、ユニット型防音室を設置するという選択は、メリットばかりがあるわけではなく、いくつか注意しなければならないデメリットも存在します。先ほどご紹介したように、賃貸住宅で楽器の演奏がしたいと考えている方にとっては、非常にメリットが多いように思えるユニット型防音室ですが、戸建てや分譲マンションなど、ある程度自由にリフォームができる住環境の場合、意外な盲点もあるのです。

以下でユニット型防音室のデメリットを簡単にご紹介しておきましょう。

デメリット① こだわった防音室はできないわりに高額

ユニット型防音室は、楽器演奏に耐えられるスタンダードなモデルで、2畳タイプが99万円~、3畳タイプになると120万円~程度が相場で、オプションなどをつけるとさらに高額になります。つまり、防音室を導入するためには、決して安くない費用を支払わなければいけないのです。これは、専門業者に一から防音室を作ってもらう場合も同じなのですが、ユニット型防音室は「自分の望みを全て叶える」ことが難しい点に注意が必要なのです。

部屋そのものを防音室にする場合であれば、使用する材料なども細かく選定できますし、防音性能だけでなく音響や内装の仕上がりなど、全て自分の好みに合わせることができます。しかし、ユニット型の場合、すでに出来上がっている防音室を現場で組み立てるだけなので、防音室自体の自由度は少なくなるのです。また、高さなども数種類しかなく、比較的室内の天井が低いため、防音室内にいると閉塞感をどうしても感じてしまうことでしょう。

実際に。ユニット型防音室を導入した人の中には、閉塞感が耐えられず、長時間続けて楽器の練習が難しい…と感じる方も多いようです。決して安くない費用をかけるのに、思い通りにできない点がある…というのは非常に大きなデメリットでしょう。

デメリット② 音響が良くない

ユニット型防音室は、部屋の中に部屋を設置するという仕様ですので、どうしても床上げと天井が低くなります。したがって、演奏空間がかなり狭くなってしまい、防音室内で演奏しているとすぐに頭が痛くなってしまう…なんて人がいるのです。特に、天井が低いタイプを購入し、その中でグランドピアノを思い切り弾けば、反響音などの影響ですぐに頭が痛くなると言われています。

ユニット型防音室は、基本的に狭い空間内で楽器の練習をすることが想定されていますので、直接音と間接音がほぼ同時に聞こえることになり頭が痛くなると言われているのです。また、狭い室内での演奏となるため、楽器本来の音響を楽しむことはできないと言われています。もちろん、比較的広いユニット型防音室もあるのですが、そうなるとかなり高額になりますので、「比較的安価に導入できる」というメリットがなくなってしまいます。

楽器の上達は、自分の演奏音を耳で聞きながら練習することが大切とされていますし、防音室内の音響環境が良くないという点は、想像以上に大きなデメリットになるはずです。

まとめ

今回は、本格的な防音対策の一つであるユニット型防音室のメリットとデメリットをご紹介してきました。この記事でもご紹介したように、ユニット型防音室は、専門業者に直接工事してもらうよりも安価に導入できることや、短期間で防音効果を得られることがメリットです。さらに、一度購入すれば、引っ越しの際に持ち運ぶことができるなど、居住場所の自由度が高くなるというのが大きなメリットと言えるでしょう。

しかし、戸建て住宅や分譲マンションなど、そこに長く住むことを考えた場合には、メリット面よりもデメリット面の方が大きくなってしまう危険があるのです。「安価だから」といった理由で狭いユニット型防音室を購入した場合、楽器本来の音響を楽しむことは難しいですし、長時間練習したくても閉塞感や音の影響などを受けると言った理由で難しくなるのです。

本格的な防音対策を施す場合には、この記事でご紹介した内容を覚えておき、自分のライフスタイルに合う手法は何なのかをよく考えて決定するようにしましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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