窓の防音が大切と言われるけど、遮音性の高い窓はどうやって選べば良い?
今回は、住宅の防音対策を考えた時、非常に重要なポイントになるとされる窓について、そもそも遮音性が高い窓は何を参考に選べば良いのかを解説します。
新築住宅の購入を考えている方の中には、自宅で楽器の演奏をする、外部から侵入する騒音に悩まされたくないなどと考え、出来るだけ高い防音性を保持した住宅を建てたいと希望する方は多いと思います。住宅の防音性能については、木造ではなく鉄筋コンクリート造が望ましい、高気密・高断熱住宅が望ましいなど、いくつかおすすめできる方法はあるものの、これらの対策については、一般の木造戸建て住宅を建てる場合と比較すると、建築コストがどうしても高くなってしまいます。
実は、住宅の防音性を高める方法には、これら以外にも比較的低コストで行える対策があるのです。特に、窓部分の防音性に関しては、採用する窓の種類に注意するだけで、騒音に悩まされる可能性が劇的に少なくなると言われています。そこでこの記事では、窓の防音性を高めたいと考えている方に向け、遮音性が高い窓を選ぶためのポイントをいくつかご紹介します。
窓には防音性能を示す等級が設けられている
遮音性の高い窓の選び方をご紹介する前に、そもそも人がうるさいと感じる音とはどのようなレベルなのか、また窓の防音性を示す基準などがあるのかについて簡単に解説します。当然、性能の高い窓ほど、製品価格が高くなっていきますので、出来るだけ低コストに窓の防音性を高めたいと考えるなら、窓の性能に関する基準と、そもそも自分が対策を施したいと考えている音のレベルに関する知識が必要になります。
ここで、一般的に、騒音とみなされる音とはどのようなレベルなのかや、窓に定められている防音性を示す等級について解説します。
騒音の種類と音の大きさについて
一般的に「騒音」と呼ばれているものでも、音の大きさによって下記のようにレベルが分かれています。
- 120以上・・・ジェットエンジンの近くやモーターバイク、ロックバンドなど
- 110・・・自動車のクラクション
- 100・・・電車が通るときのガード下
- 90・・・工場の中や地下鉄の車内
- 80・・・ピアノの音・電車内
- 70・・・掃除機・騒々しい街頭
- 60・・・通常スピードの乗用車内
- 50・・・静かなオフィス
- 40・・・図書館・深夜の市内
- 30・・・深夜の郊外
- 20・・・時計の針の音
- 10・・・木の葉の音
- 0・・・一般人が聞こえる限界
音の大きさは「dB(デジベル)」という単位で表されています。テレビ番組などで声の大きさを計測する際に出てくるので、聞いたことがあるという方も多いかもしれません。そして、私たちの日常生活の中には、上記のようなさまざまな音が存在します。一般的には、人がその音を聞いたとき「極めてうるさい!」と感じるのが80dB以上の音と言われています。また、60dB以上の音でも、多くの方がうるさいと感じると言われていますので、時と場合によっては騒音トラブルに発展してしまう可能性があるでしょう。
窓やサッシの遮音性能を表す等級について
このサイト内でも何度もご紹介していますが、一般住宅における音漏れや音の侵入については、窓サッシが原因で起こる場合が非常に多いです。これは、窓が外壁などと比較すると、非常に薄い素材であることや、用途的に小さな隙間が生じるような構造になっていることからです。逆に言うと、窓サッシ部分について、出来るだけ遮音性の高い材料を採用するようにすれば、静かで快適な住環境を構築できる可能性が高くなるのです。
それでは、窓サッシの遮音性はどのようにして判断すれば良いのでしょうか?実は、窓サッシには、JISが定めた遮音性能の等級というものがあり、それを確認することでどの程度の音を防げるのかが分かるようになっています。窓サッシの遮音性能は「T値」と呼ばれるものが利用されており、T1~T4までの4段階の等級に分かれています。性能の高さについては、Tの後に続く数字が大きくなるものほど遮音性能が高いです。
このT値については、現在の住宅に採用されている最も一般的なサッシがT1程度の遮音性能のものが採用されていて、窓をきちんと閉めている状態で25dB程度の遮音効果をもたらすとされています。このレベルの窓サッシであれば、掃除機の音などが窓の向こうでは図書館レベルの静かさになる感じです。なお、窓サッシの遮音性に関しては、1枚物の窓サッシの場合、どれだけ性能が良いものであっても、T3程度の性能が限界とされています。そのため、これ以上の性能を窓に求める場合は、窓を二重にする二重窓工事が必要だと考えてください。楽器防音室レベルになると、窓が必ず二重窓になるのはこれが理由です。
遮音性の高い窓を選ぶためのポイント
それでは、新築住宅の購入を検討している方などに向け、実際に遮音性能の高い窓を選ぶため、具体的に何に注意すれば良いのかについて解説していきます。高い遮音性能を持つ窓にしたい場合は、以下のような点に注意しましょう。
気密性のある窓デザインを選ぶ
窓の気密性は、開閉方式によって違いが生じます。高い遮音性を持つ窓にしたいと考えている場合、気密性が高いデザインのものを選ぶのがおすすめです。気密性が高いということは、窓部分に隙間が少なくなることを意味しますので、空気音の出入りを少なくすることができます。
一般住宅の窓では、「引き違い窓」と呼ばれるタイプが多く採用されています。リビングやベランダに取り付けられている窓は、ほとんどが引き違い窓だと思います。ただ、高い気密性を誇る窓にしたい場合には、小窓やオフィスなどで採用されていることが多い、「縦滑り出し窓」や「ドレーキップ窓」と呼ばれるタイプがおすすめです。
静かな環境にしたい部屋などについては、窓のデザイン性にも着目して選びましょう。
サッシはT3以上のものを選ぶ
一般的な住宅のサッシは、2枚のガラスの引き違いになっています。そのため、どうしても隙間が生じてしまうことになり、そこから空気や音が漏れてしまいます。
この問題を解消し、高い防音性を求めるのであれば、「セミエアタイトサッシ」や「エアタイトサッシ」と呼ばれるタイプを選択すると良いでしょう。それぞれ、上述した遮音等級でT3、T4レベルの性能を持っています。
住宅の防音性は、一般的なガラスを採用していたとしても、サッシを工夫することで遮音性能の向上を目指すことができます。
窓ガラスは分厚いものの方が良い
窓に採用する窓ガラスにもさまざまな種類が存在します。そして、どのタイプを選ぶのかによって得られる遮音性能が変わります。一般的に、窓ガラスは厚みがあればあるほど遮音性が高くなりますし、さらに単板ガラスと比較すると、複層ガラスの方が高い遮音性を持つとされています。
ただ、注意しておきたいのは、音には「ヘルツ(Hz)」という単位で表される周波数(振動数)というものもあります。ヘルツは数値が大きい物ほど高い音に聞こえるなど、音の高さを表す単位と考えていただければよいかと思います。実は、ガラスの厚さと周波数はややこしい関係にあり、カラスの厚さによって特定の周波数帯の音に対する遮音効果が低下してしまうという現象があるのです。これは「コインシデンス効果」と呼ばれるものです。
さまざまな周波数帯の音を遮音したいと考える場合には、異なる厚さを持つカラスを組み合わせた「異厚ガラス」と呼ばれるタイプを採用することで、コインシデンス効果による性能低下を抑えることができます。
なお、一般的に防音ガラスという名称で販売されているものは、遮音等級がT2以上の性能を持つガラスを指しています。とにかく遮音性能にこだわりたいと考えている方が、ガラスに関してもこの等級を確認すると良いでしょう。
まとめ
今回は、住宅の防音上の弱点になりがちな窓について、出来るだけ静かで快適な環境を作るための窓選びのポイントについて解説しました。記事内でご紹介しているように、窓にもさまざまな種類が存在していて、どれを選ぶのかによって窓の遮音性能が変わります。
これから新築戸建て住宅の購入を検討しているという方は、快適に過ごせる空間を作るためにも、窓の性能に着目してみるのがおすすめです。