気密性と防音性の関係について。新築の購入を検討しているならこの二つの関係を抑えておこう
近年の新築業界では、「高気密」や「高断熱」という言葉を耳にする機会が増えています。新築住宅のチラシなどを見てみると、紙面にでかでかと「高気密・高断熱住宅」という文字が並んでいるのを見ることが増えていますが、この高気密や高断熱というのは何を意味しているのかいまいち分からないという方も少なくないのではないでしょうか。
高気密・高断熱住宅は、簡単に言うと、そこに住む人が快適に過ごせるような空間を作る機能性が高いことを意味しています。高気密は、家に存在する隙間を少なくして、空気の出入りが少なくする、高断熱は断熱性を高めることで建物の内外での熱の行き来を少なくするといった対策をイメージしていただければ、おおよそ正しいです。
そして実は、高気密・高断熱住宅というのは、家の防音性も高くなるという副次的な効果も期待できるのです。そこでこの記事では、これから新築戸建て住宅の購入を考えている方に向け、気密性と防音性の関係を分かりやすく解説します。
高気密だと防音性が高くなる?
高気密・高断熱住宅が注目されている昨今では、このタイプの住宅は通常よりも建物の防音性能が高くなるといった解説がなされているのを見かける機会が多くなっていると思います。それでは、気密性が高い住宅などについて、なぜ防音性も高くなるのでしょうか?
そもそも気密性というものは、気体の流出・流入を防ぐ密閉度の高さを表すものです。住宅の場合で考えると、建物に生じる小さな隙間の有無や割合のことを指しています。ちなみに、「高気密」は高い気密性を保持しているという意味で、この場合は空気の出入りが少ないことを指しています。その逆に、気密性が低いと表現される家は、隙間が多く生じていて、空気が頻繁に出入りするといったイメージです。
気密性の意味が分かったところで、防音性になぜ影響するのかを考えてみます。このサイト内でも何度も紹介していますが、音には空気伝搬音と固体伝搬音と呼ばれるものがあり、前者は空気の振動を伝わって広がっていきます。つまり、空気音というものは、空気の通り道があれば、その空気を伝わって侵入してくるものなのです。
これからも分かるように、気密性が高い家は、建物内の隙間が少ないという意味ですので、音が出入りするための空気をきちんと遮断することができているため、防音性が高くなるのです。
気密性が高い場合のメリットとは?
昨今、高気密住宅への注目度が年々高くなっていると言われますが、この状況は、高気密住宅にすることでさまざまな恩恵があるからです。それでは、気密性が高い環境を作ると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、住宅の気密性を高めることで得られるメリットについて解説します。
防音性が高い住空間が得られる
一つ目のメリットは、気密性が高い家は、防音性が高い家になるという点です。上述しているように、気密性が高いということは、建物に生じる隙間が少ないことを意味していますので、音の通り道も少なくなります。
例えば、人の声やペットの鳴き声、テレビやオーディオの音声など、空気伝搬音が外に漏れていくのは、家に隙間が生じているのが大きな要因です。高気密住宅は、こういった空気音が外に漏れにくくなりますので、生活音を原因とした騒音トラブルの心配が少なくなります。また、室内からの音漏れを防止できるだけでなく、屋外で生じた騒音が室内に入ってくるのを防ぐという効果も期待できます。
高気密住宅は、このような高い防音性能も保持していますので、静かで快適な住空間を構築することができると人気になっているのです。ただ、注意しておきたいのは、楽器防音のような非常に高い防音性能を発揮するわけではないという点です。あくまでも、隙間が多くある建物よりは防音性が高くなるだけで、楽器の演奏音などの大きな音は普通に漏れていきます。
断熱効果を高める
気密性の高さは、断熱効果にも好影響を与えます。住宅の断熱性は、壁の中にグラスウールなどの断熱材を充填することで実現する場合が多いのですが、断熱材を利用していたとしても、気密性が低いと十分な断熱効果を発揮することができません。例えば、断熱材を敷き詰める際に、隙間が生じていればその隙間から風が入り込み、断熱効果が落ちてしまうのです。
したがって、住宅の断熱効果を高める時には、同時に気密性を高めてあげることで、熱の移動を可能な限り少なくすることで、室温の維持をできるようにするという対策が施されます。
高気密・高断熱な空間を作れば、室温が外部の温度に影響を受けにくくなりますので、エアコンなどの空調にかかるコストを削減することができるようになります。また、室外の気温の影響を受けにくくなりますので、災害時に空調が利用できなくなったとしても、比較的快適な環境を維持しやすくなるというメリットも得られるでしょう。
高気密住宅の注意点
住宅の気密性を高めることは、メリットばかりが得られるわけではない点に注意しましょう。気密性の高い空間は、以下のようなデメリットが生じますのでその点はきちんと頭に入れておきましょう。
カビが発生しやすい
気密性が高いということは、住宅に生じる隙間が少なくなるという意味ですので、外気を取り入れにくくなります。これにより、高い防音効果や断熱性が得られるのですが、その一方で、空気の循環する力が弱まるという弊害が生じます。
空気が循環しにくくなると、室内に湿気がこもりやすくなりますので、カビなどの繁殖に適した条件が整えられてしまいます。最悪の場合、目に見えない位置でカビが大量発生し、空気中にカビの胞子がたくさん浮遊することで、住人の健康被害につながるといった恐れがあります。
年々、住空間の高気密化が進む裏では、シックハウス症候群を発症する人が増加したという問題があり、現在では住宅の居室には24時間換気システムの設置が法律で義務付けられています。部屋の防音性を考えると、換気口は大きな弱点になりますので、この部分の防音対策が必須です。
ドアや窓の開閉時に重く感じる
気密性が高い空間を作ると、ドアや窓の開閉時に、重く感じるという弊害が生じます。これは、室内と室外に気圧差が生じているのが原因です。
例えば、室内の気圧が低くなると、外側から窓やドアを押し付ける力が働くようになりますので、開けづらく感じてしまう訳です。日常生活では、そこまで大きな問題に感じないかもしれませんが、万一、災害があった場合には、避難が困難になるなどの問題が生じるため注意しましょう。
室内外の気圧のバランスを整えるには、給気口を開ける、換気扇やレンジフードを弱めるなどと言った方法で調整すると良いでしょう。
まとめ
今回は、住宅の気密性と防音性の関係につい手解説しました。近年の新築業界では、高気密・高断熱という言葉を耳にする機会が増えていますが、これは、気密性、断熱性が高い住空間を作ると、外気の影響を受けにくくなるため、空調効率を高めることができ省エネで快適な温度環境を構築しやすいというメリットが注目されているからです。ただ、高気密・高断熱な空間は、部屋の防音性を高める効果も期待できますので、外部騒音に悩まされない静かな住環境を構築したいと考えている人にはオススメだと言えるでしょう。
ただ、一般住宅に用いられている高気密・高断熱という対策については、「防音性能を高める」ことを目的に施されているわけではないため、楽器音やホームシアターなど、大音量の防音に対しては性能不足と考えなければいけません。基本的には、人の話し声や近所の犬の鳴き声などを軽減できる程度の性能が期待できる程度です。
楽器防音など、高性能な防音環境を求めているのであれば、本格的な防音室を用意しましょう。