窓の簡易防音に使用されるカーテンにも種類がある!防音用カーテンの種類と効果的な使い方について

今回は、窓の防音対策として採用されることが多い「防音カーテン」について解説します。人が住む住宅には、採光や換気を目的に窓を設けることが義務付けられています。日本国内に建てられる建築物は、建築基準法に定められたルールに従わなければならず、人が居住する居室の場合、以下のように定められているのです。

建築基準法第28条
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
引用:e-Gov|建築基準法

建築基準法では、上記のように換気・採光を目的に居室には窓を設けなければいけないとしています。しかし、住宅の防音性能を考えた時には、この窓が音漏れや侵入の弱点になってしまう可能性があるのです。窓は、外壁などと比較すると、圧倒的に薄い素材で構成されていますし、スムーズに開閉できることが大切であることから、窓を閉めていてもレール部分などに小さな隙間が生じる構造になっています。また、どのような製品でも経年で劣化していくことを避けられず、築年数が経過した住宅では、窓を閉めても隙間風が入る…なんてことは珍しくないでしょう。

つまり、こういった窓の防音上の弱点を原因として、近隣住民との音の問題を抱えてしまうケースが増えているのです。現在の住環境を鑑みると、家と家の距離が非常に近くなっていることから、ちょっとした音漏れが騒音トラブルに発展する可能性が高いです。そのため、窓部分の防音性能を高める目的で、防音仕様のカーテンを設置する方が非常に多くなっています。ただ、防音対策に使用できるカーテンにもいくつかの種類が存在していてどれを使用すれば良いか迷ってしまうという声も多いです。また、音に関する知識がない方は、カーテンの設置方法をまちがっていることで、音の問題を解消できない…なんてことも多いようですので、この記事では、防音カーテンに関する基礎知識を解説します。

防音仕様のカーテンの種類

通常のカーテンと比較して、高い防音性能を保持するカーテンは「防音カーテン」という総称で呼ばれる場合が多いです。しかし、製品をよく見てみると、以下のような種類が存在しています。

  • ・遮音カーテン
  • ・吸音カーテン
  • ・防音カーテン

実は、防音仕様のカーテンにも、「遮音」「吸音」「防音」と、異なる名称がつけられて販売されているケースがあります。それでは、これらの製品については、それぞれが持つ性能も変わってしまうのでしょうか?ここでは、それぞれのカーテンについて、どういった効果を期待できるのか解説します。

遮音カーテンとは

まずは遮音カーテンです。「遮音」は、文字通り「音を遮る」ことを指していて、このカーテンは音を跳ね返すことで音漏れを防ぐ効果を持つとされています。

しかし注意が必要なのは、室内で大きな音を生じさせ、それが外に漏れていかないようにしたい場合、遮音カーテンでは室内が余計にうるさくなる可能性があります。というのも、遮音は「音を遮断すること」を目的としていて、音を遮ることはできるものの小さくなるとは限らないという効果です。それどころか、跳ね返された音は、逃げ場のない室内で繰り返し跳ね返ることになりますので、音が大きくなる可能性すらあると言われています。

一般的に、防音とは「吸音」と「遮音」をバランスよくしてあげることで音を小さくしていきますので、遮音だけで音漏れを防ぐことは難しいです。ただ、外から侵入する空気音への対策としては効果を期待できるでしょう。

吸音カーテンとは

防音仕様のカーテンには吸音カーテンとして販売されるものもあります。吸音とは、音エネルギーを吸収して小さくする効果を指しています。

例えば、防音室などでは、外に音が漏れないように遮音するだけでは防音室内で反響音が大きくなってしまうため、耳がキンキンする…と言った不快な場所になります。そのため、吸音効果も持たせることで、音の響きを抑え、音響環境を調整するといった対策が施されるのです。吸音カーテンは、この音を吸収する効果をカーテンに持たせているものです。

吸音カーテンは、ピアノなどを演奏する部屋にて、妙に音が響きすぎる…と言った場合に、音響調整のために設置するのには効果的だと思います。ただ、外への音漏れ対策として考えた時には、カーテンで多少の音エネルギーは吸収するのの、音を遮ることはできないため、大きな防音効果を見込むことはできません。そもそも、吸音カーテンを謳っていない製品でも、厚手の布を使用したカーテンなら、それなりの吸音効果を持っているため、特別に吸音カーテンを購入するメリットはあまりありません。

吸音カーテンは、既に防音環境が作られていて、「反響音を抑えたい」なんて場合に採用すると効果的な製品と考えましょう。

防音カーテンとは

最後は防音カーテンです。防音は「音を防ぐ」効果を持つことを指しているのですが、「防音」という言葉は具体的な方法を指しているわけではなく、あくまでも概念的な意味として使われています。防音カーテンも同様で、先ほどご紹介した吸音と遮音の効果を兼ね備えることで、音を防ぐことができるようになったカーテンを指しています。したがって、防音カーテンの場合は、中からの音漏れ、外からの音の侵入、どちらにも効果を期待することができます。

ただし注意しておいてほしいのは、防音カーテンは、あくまでも布が原料になった製品ですので、その防音効果は限界があります。また、布の性質として、防げる音の種類についても「人の話し声などの高音域の音」に関しては効果を期待できるものの、低音や振動を伴う音の防音は難しいです。低音や振動を伴う音の防音をカーテンでしたい場合、複数の防音カーテンをつるしてあげることで、繰り返し吸音と遮音がなされるという状況を作れば、それなりの効果を期待できますが、対策方法としては現実的ではないため、他の方法を採用したほうが良いでしょう。

なお、防音カーテンは、冒頭でもご紹介したように、使い方によって得られる効果が変わります。間違ったつるし方をしてしまうと、考えているような効果が得られない可能性が高いので、使用方法には注意しましょう。

防音カーテンの使い方

それでは、防音カーテンの効果をきちんと発揮させるための使い方についていくつかのポイントを解説します。防音カーテンを使って窓部分の対策を行いたい時には、以下のポイントに注意してください。

防音カーテンは重さが重要

ホームセンターなどで防音カーテンを選ぶときには、「重さ」を必ず確認するようにしてください。カーテンは、上からつるす製品ですし、余り重たいカーテンを選んでしまうと、レールごと交換しなくてはならなくなるため、「重すぎるのは良くないよね…」と考えてしまいがちです。

しかし、音は空気を震わす圧力で振動で広がっていくものです。つまり、音をきちんと防ぐためには、それをしっかりと受け止めるだけの、重たい物体である必要があるのです。窓ガラスが外壁よりも防音性能が低くなるのは、薄さ以外にも壁よりも軽量だからという理由があります。軽いカーテンを選んでしまうと、容易に音に負けてしまい、簡単に音漏れを許してしまうことになります。

防音カーテンを購入する目的は、やはり「音漏れ・音の侵入を防ぐ」ことなのですし、必要であればカーテンレールの交換まで想定し、出来るだけ重たいカーテンを選ぶのがポイントです。

隙間を作らないように設置する

防音カーテンに見られるよくある失敗は、せっかく防音カーテンを購入し、窓に設置しているのに、音の逃げ場がたくさんあるような取り付け方をしているというものです。

例えば、通常のカーテンであれば、カーテンの上部分や下に隙間ができるような構造になっています。分かりやすく言うと、上部は波うつような構造になっていて、カーテンレールに簡単に吊るせるよう大きな隙間が生じるような構造になっています。また、下部分は、窓をピッタリ覆えるようにサイズを選ぶ方がほとんどですし、左右は窓とカーテンの隙間ができるような作りになっているでしょう。

防音を目的としたカーテンでは、このような隙間が生じる吊るし方をしてしまうと、上や横の隙間からどんどん音が漏れ出てしまうことになります。高い防音性能を期待して防音カーテンを購入する時には、カーテンの性能だけに頼るのではなく、出来るだけ隙間が生じないように設置するという工夫も行ってください。例えば、以下のような取り付け方がおすすめです。

  • ・カーテンは窓に対して長めのものを選ぶ
  • ・上部の隙間を塞ぐため、カーテンレールカバーを付ける
  • ・カーテン上部のひだをなくし、窓にぴっちりフィットさせる
  • ・左右の隙間を塞げる構造の物を選ぶか、クリップなどで止める
  • ・カーテン同士の重なりを作る

防音カーテンは、可能な限り隙間が生じないように設置するのがおすすめです。通常のカーテンとして利用する場合は特に気にしなくても良いのですが、防音を期待する時には、上下左右に隙間が生じないように工夫しましょう。

まとめ

今回は、住宅における防音上の弱点である窓の防音対策について解説しました。窓の防音対策にも、さまざまな手法があるのですが、その中でも防音カーテンを利用した対策は、比較的安価、専門業者に依頼しなくて済むという手軽さが特徴です。ただ注意してほしいのは、安価で手軽にできる対策ですので、その他の本格的な防音対策と比較するとどうしても得られる効果は薄くなってしまいます。防音カーテンは、布で作られた製品ですので、防音効果が得られるように工夫が施されたとしても、そこまで高い効果を望むことは難しいです。

したがって、窓の防音対策について、防音カーテンを使用して行ってみたものの、満足できる結果が得られなかった…という場合、二重窓工事など専門業者による対策を検討しましょう。なお、防音カーテンによる対策は、そもそも人の声やペットの鳴き声など、生活騒音を軽減する程度の効果しかありません。例えば、自宅で楽器の演奏を検討している方が、窓からの音漏れを防止しようと、防音カーテンを設置しても、音を防ぐ効果などほぼ得られないと考えた方が良いです。楽器防音レベルになると、専門業者によるしっかりとした対策を施してもらうのがおすすめです。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

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