バイオリンの防音室について!時間帯を気にせず演奏するなら防音対策が必須
今回は、弦楽器の中でもバイオリンの防音室について解説したいと思います。
楽器にはさまざまな種類が存在していて、自宅で時間を気にせずに演奏をしたいという場合、近隣に配慮するために何らかの防音対策が必須です。ちなみに、バイオリンを始めとする弦楽器については、その他の楽器と比較すると防音自体はそれほど難しくありません。しかし、バイオリンは、使用する弓による音色の違いや繊細な弦の音を吸収しすぎる防音室がNGで、ライブ気味の音を響かせるには、音響調整に注意しなければいけません。
この記事では、バイオリンの防音室を作る際の注意点や、防音室以外の防音対策について解説します。
バイオリンの防音室に求められる条件
バイオリンは、他の楽器と比較すると、そこまで大きな音が生じるわけではないというイメージを持っている方が多い事でしょう。実際に、我々のような防音工事業者からすると、ピアノや、ドラムなどの打楽器と比較すると、防音は容易な部類の楽器になります。
ただ、そうはいっても、クラシックなどで存在感のある音を響かせるように、バイオリンは最大で96dBほどの大音量が生じますので、自宅で時間を気にせずに演奏したいと考えた場合、防音対策は必須です。そして、その中でも、最も良い環境でバイオリンの演奏が可能になるのが専用の防音室を設けるという対策になるでしょう。
自宅に防音室を設ければ、昼間も夜間でもバイオリンの音を抑えることなく自由に演奏が可能になります。近年では、マンション暮らしの方が増えている、家と家の距離が近づいているなど、人々の生活空間が近くなっているのですが、そのような状況でも音漏れを気にせずにバイオリンの練習に没頭することが可能です。
なお、バイオリン用の防音室を作る場合、部屋の広さに注意しなければいけません。バイオリンは、弓の動かし方(ボウイング)によって、音の長さ、強さ、音色など、さまざまな表現をするのですが、逆に言うと、十分に動かせるだけのスペースが演奏のために必要になります。人ひとりが立っているだけであれば、1畳以下でも構わないのですが。バイオリンの演奏を考えた場合、最低でも1.5畳以上のスペースを確保してください。それ以下のスペースになると、腕の動きが制限され、バイオリンの練習ができない可能性があります。
さらに、立ったままバイオリンの演奏をしたい場合には、防音室の天井高にも注意すべきです。バイオリンの演奏に適した防音環境を作りたい場合、床面から天井までの高さは2m10㎝以上確保するのが望ましいです。あまりに天井が低い環境になると、腕の動きが制限される、さらに音響環境が悪くなるといった問題が生じます。
安価に防音室を用意したい場合、狭いユニット型防音室を検討する方が多いのですが、価格にばかり注目すると、防音室内に滞在することにストレスを感じる恐れがあるので注意してください。
バイオリン用防音室を作るうえで知っておくべきポイント
バイオリン用防音室を作りたいと考える場合、以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
バイオリンの音の大きさと音域
音に関する単位では、「dB」がの強さを、「Hz」は周波数帯域を表しています。「dB」という単位は、数値が大きくなればなるほど大きな音を表し、「Hz」は数値が大きくなればなるほど高い音を表します。
バイオリンの音の強さは、上述したように約96dB程度で、これはピアノに準ずる大きさの音と考えていただければ分かりやすいです。他の楽器の音を比較してみると、以下のような感じになります。
- ・バイオリン・チェロ:約90~100dB
- ・ピアノ:約90~110dB
- ・トランペット・トロンボーン:約90~110dB
- ・ドラム:約110~130dB
楽器の音の大きさは、演奏する人の熟練度なども関係し、腕が上達するほど強い音を出せるようになります。
次に、周波数帯域についてですが、バイオリンは200~3200Hzまでと中低音から高音まで幅広く奏でられる楽器です。人の可聴領域は20~20000 Hz(約10オクターブ)と言われているのですが、バイオリンはそのうち4オクターブをカバーする音域をもっています。音域に関しても他の楽器と比較してみましょう。
- ・バイオリン・チェロ:約200~3200Hz
- ・ピアノ:約27~4186Hz
- ・トランペット・トロンボーン:約100~1000Hz
- ・ドラム:約80~85Hz
バイオリン用防音室に必要な性能とは?
それでは、自宅にバイオリン用の防音室を設けたいと考えた時、どの程度の防音性能を実現しなければいけないのかについてもご紹介します。
バイオリンは、約100dB程度の音量を持つ楽器なのですが、この大きさの音がそのまま外に漏れていくわけではありません。というのも、防音工事を行っていない場合でも、建物そのものがそれなりの防音性能を保持していおり、一般的に木造戸建てで約60dB、鉄筋コンクリート造のマンションで約45~50dBの音が外に漏れていくとされています。ちなみに、環境省などが定めている騒音に関する環境基準では、一般的な住宅地で、昼間は55dB以下、夜間は45dB以下が他人に許容される限界の音量とされています。
ただし、音の大きさについて、30dB程度の音で人のささやき声の大きさと言われていて、昼間なら気にならないものの、就寝時には迷惑に感じてしまう可能性があります。つまり、先述したバイオリンを演奏した時に漏れていく音量となると、隣家に住む方の状況によってはかなり迷惑に感じられてしまう可能性があります。
したがって、昼夜問わず、自宅でバイオリンの演奏を考えているという場合、防音室を用意するのがマナーだと言わざるを得ないでしょう。そして、防音室が持っておくべき性能は、最低でもDr-30以上、理想を言えばDr-35以上となります。
防音室以外の対策とは
バイオリンの防音は比較的容易ですので、防音室以外にもいくつかの対策が考えられます。ここでは、防音室工事以外で、自宅でバイオリンを演奏するための対策をご紹介します。
消音器(ミュート)を利用する
一つ目は、バイオリンに消音器を取り付ける方法です。これであれば、数千円の出費で音漏れ対策が可能です。
バイオリンは、弦の振動が駒に伝わり、ボディが共鳴することで音が出る楽器です。したがって、バイオリンからの音を抑えたい場合、駒に消音機を取り付けることで、振動を抑えるという方法があるのです。
なお、消音器にもいくつかの種類が存在しています。楽器店などで購入できる消音器では、金属タイプ・ゴムタイプ・マグネットタイプ・ネジで固定するタイプなどがあり、最も消音効果に優れているのが、金属タイプです。金属タイプの消音器を利用すれば、防音室が無くても時間帯を気にせずバイオリンの演奏が可能です。ただ、バイオリンの重量が重くなる、バイオリンを傷つけてしまう可能性がある点がデメリットです。
消音器を利用すると、本来のバイオリンの音が聞こえなくなるわけですので、練習環境としてはあまりオススメできません。
電子バイオリンを利用する
あまり聞き馴染みが無いという方が多いと思いますが、バイオリンにも電子バイオリンという騒音を気にせずに演奏できるタイプが作られています。電子バイオリンは、弦の振動をマイクが拾って、電気的に音を増幅させるという仕組みになっていて、「騒音を気にせず演奏を楽しみたい」「静かに練習をしたい」という人のために作られています。
電子ピアノなどと同じく、ヘッドホンやイヤホンを接続して演奏すれば、音が外に漏れることが無いので、騒音トラブルの心配が一切ありません。ただ、電子バイオリンは、通常のアコースティックバイオリンとは音の響きが異なるので、その点は注意しなければならないでしょう。
簡易的な防音対策を自分で施す
バイオリンの音色は、中低音から高音までの音域を持ちます。高音域の音に対しては、窓からの音漏れを防止するため、防音カーテンなどで対策するのが有効です。防音カーテンは、特に高音域の遮音を得意としていますので、バイオリンの防音対策としては非常に効果的です。また、演奏する場所に吸音材をしっかりと配置することで、高音域の音は大幅に音漏れを防ぐことができます。吸音材を設置する際には、隙間があるとそこから音が漏れますので、隙間が生じないようにしっかりと設置するようにしてください。
マンションなどでバイオリンを弾くときには、バイオリンの音による振動が階下に伝わってしまうことがあるので、防音マットを敷いておくのがオススメです。バイオリンの振動は空気を介して伝わるので、5mm程度の厚さを持つもので十分です。
なお、こういった簡易的な防音対策については、どうしても音漏れの可能性が残ってしまうという点は注意しましょう。昼夜問わずバイオリンの演奏をしたいという場合、簡易の防音対策ではなく、きちんと防音室を作らなければ、近隣トラブルの恐れがあります。
まとめ
今回は、楽器の中でもバイオリンに注目して、その音の大きさや防音対策の方法について解説しました。バイオリンは、ピアノやドラムなどと比較すると、防音対策は容易な部類に入ります。しかし、小さな音しか生じないというわけではなく、幅広い音域とピアノに準ずる音量を持っていますので、時間帯を気にせずに演奏したいと考えている場合、防音対策は必須です。
この記事では、簡易的な防音対策も合わせてご紹介していますが、本格的なバイオリンの練習の場合は、専用の防音室を作るべきでしょう。防音工事の匠は、長年プロ仕様の防音室の施工を行っていますので、お客様の要望に合わせて、最適な防音室のご提案を行います。