「部屋を防音室にしたい!」とお考えの方がおさえておきたい、快適な防音環境を実現するためのポイント
近年では、一般的な住宅でも自宅に防音室が欲しいと考える方が増えています。そもそも、現在では建築技術の向上や住宅に使用する建材の進化などもあり、新築住宅の高気密化が進んでいて、特別な防音工事などをしなくてもそれなりの防音性能を実現できるようになっています。ただそれでも、自宅で楽器の演奏をしたい、テレワークに集中したいという考えがある人は、快適な防音環境を実現するため、自宅に防音室を作りたいと希望するようです。
防音室の需要が年々高くなっている昨今ですが、まだまだ防音室を作った経験がある方は少ないのが実情で、普通の部屋を防音室に作り替えるには、具体的に何をどうすれば良いのか見当もつかないという方が多いと思います。部屋を防音室にするためには、正しい知識を持って適切な対策を行うことが最も重要になります。もちろん、専門業者に工事を依頼すれば簡単に防音室を作ることが可能ですが、防音工事の需要の高まりに比例して、防音に関する知識を持たない業者が防音工事の受付を行うようになっています。つまり、適切な工事を行える業者を見極めるためにも、お客様自身が防音に関する基礎知識を持っていなくてはいけない時代になってきたのです。
この記事では、これから防音室を作ろうと考えている方が知っておきたい防音室を実現するためのポイントをご紹介します。
適切な防音を行うために知っておくべきポイント
『防音』は、その言葉が表す通り「音を防ぐ」ことを意味しています。しかし、勘違いしてほしくないのは、「防音」という用語は、具体的な対策を示しているのではなく、あくまでも概念的なものなのです。実際に、部屋を防音室にしたいと考えた時には、以下のようなさまざまな対策を施すことで、初めて防音室が実現します。
- ・遮音
- ・吸音
- ・防振
- ・制振
防音というのは、あくまでも上記のようなさまざまな対策をバランスよく施すことで実現します。ここでは、部屋を防音室にしたいと考えている方に向け、それぞれの用語の意味を簡単にご紹介します。
①防音とは
「防音」は、文字通り音を防ぐことを指しています。例えば、室内で発生した音が外に漏れないようにしたり、室内にいる時に建物外の騒音が侵入しないようにすることを指しています。
ただ、上述している通り、防音は具体的な対策を示しているのではなく、下で紹介する防音対策全般をまとめて、その結果を意味していると考えた方が良いです。防音は、遮音対策や吸音対策、防振対策などによって得られた結果の事です。意外に、他の用語との区別がついていない人も多いので、この点はおさえておきましょう。
②遮音とは
ここからは、具体的な対策となってきます。遮音は、「音を遮る」対策を意味しており、音を遮り反射させることです。音を反射することによって、室内の音が外に漏れにくくなったり、外からの音が侵入しにくくなります。
防音対策として遮音したいときには、音を遮断・反射させることができる素材を使用するのが一般的です。例えば、石膏ボードや鉄板などが良く用いられ、基本的に重量がある素材ほど遮音性に優れています。こういったことから、建物構造による遮音性の高さは、「木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造」となります。
③吸音とは
吸音も文字通りの意味で、音を吸収することを指しています。音は、壁などの物質に反射してそれを振動させることで、私たちの耳に届きます。したがって、物質に音がぶつかった時、反射する前に音のエネルギーを吸収してあげることができれば、音は響かないのです。
吸音対策のために使用される素材は、ウレタンやフェルト、グラスウールなど、多孔質構造を持った素材です。多孔質構造とは、素材の中に小さな穴がたくさんある構造の事で、その穴に音が侵入した場合、音エネルギーを熱エネルギーに変換することで、防音効果をもたらせます。ちなみに、吸音材は、音の反響を小さくする効果を持っていますので、防音効果だけでなく、音をクリアにする音響効果も期待できます。
④防振とは
防振対策は、振動の伝わりを防ぐことを指しています。物体が振動して出る音を伝わりにくくすると理解していただければ間違いありません。
防振はいまいちイメージしにくいという方も多いのですが、例えば洗濯機を動かしている時の騒音を防ぐための対策を考えてみましょう。最新の洗濯機は静音タイプが登場していますが、それでも、脱水時にガタガタと洗濯機そのものが揺れ動くことで、他の部屋までその振動音が聞こえてうるさく感じるというケースは少なくありません。
防振は、こういった振動による騒音を防ぐための対策で、具体的には洗濯機の下にゴムやシリコンなどを挟むことで、床に振動による音の伝わりを軽減するといった対策になります。
⑤制振とは
最後は制振です。防振と勘違いする人も多いのですが、制振は物体の振動を抑える対策の事です。上述したように、防振は物体が振動した際に、その振動の伝わりを防ぐ対策なのですが、制振は物体の振動そのものを軽減する対策です。
制振対策は、工場の大型製造機械の防音対策として採用される場合が多いです。
防音室を作るには?
防音に関する基本を理解できたところで、部屋を防音室にしたいと考えた時、具体的に何をすれば良いのかについてみていきましょう。ここでは、いくつかの部位に分類して、必要な防音対策をご紹介します。
窓や換気口など、開口部の防音対策
外からの騒音に悩んでいて、部屋を防音室にしたいという場合、窓や換気口などが原因となっている可能性が高いです。そもそも換気口は、空気の通り道を作り、適度に換気できるように取り付けられているものですので、何の対策もしていなければ、音も出入りし放題になってしまいます。特に、昨今の住宅は、24時間換気システムの設置が義務付けられているため、気付かないうちに防音上の弱点が設置されているなんてことになっています。したがって、まずはこの換気口の防音対策が必要です。
さらに、室内からの音漏れや外部からの騒音の侵入は、窓が原因になるケースが多いです。というのも、一般的な窓は、外壁などと比較すると、非常に薄い素材ですので、音が通過しやすいわけです。この他にも、スムーズに開閉できるように、窓を閉めていてもレール部分に小さな隙間ができるような構造になっています。こういったことから、窓は音漏れ、音の侵入口になってしまうのです。
部屋を防音室にしたい場合、窓を無くすのが最も効果的な方法ですが、採光の問題などが生じますので、二重窓や防音ガラスの導入による対策がオススメです。なお、築年数が経過した建物であれば、サッシの防音性能が低いケースが考えられますので、この場合はサッシごと交換するのがオススメです。
同居家族向けの防音室ならドアの防音が必要
これは、テレワーク用の防音室など、家族が生じさせる音を室内に伝わらないようにする時に有効です。この他にも、間取りの関係などで、トイレの排水音や洗濯機の稼働音、家族の話し声と言った生活音が気になるというケースや、その逆に自分が部屋の中で生じさせる音で家族に迷惑を掛けないようにしたい場合に行いたいのが室内ドアの防音対策です。
ドア部分の防音対策については、使い勝手が多少悪くなっても良い場合、室内側のドア前に防音カーテンなどを取り付けると良いでしょう。ただ、部屋の使い勝手や景観が悪くなるので、そういった部分を気にする方は多いです。すっきりとした部屋の景観を維持したまま、音を防ぎたいのであれば、ドアを防音ドアに交換するのがオススメです。生活音程度であれば、安価な防音ドアでも効果を期待できますので、工事費を含めても10万円程度から対策が可能です。
戸建てでも床の防音対策を希望する方は多い
床の防音に関しては、マンションなどの集合住宅で生活している方が希望するものと考えている人が多いです。しかし、狭小地に3階建て住宅を建てるのが一般的になってきた現在では、戸建てでも床の防音対策を希望する方が多いです。現在の新築事情を考えた時には、リビングの真上に子供部屋が配置されるなんてこともあり、その場合、子供が騒いでいる振動音が階下に響くことが悩みとなるケースがあります。そのため、防音室工事とまでは言わないものの、床と窓、床とドアと言った組み合わせの防音工事を行う方が増えています。
ちなみに、床のみの防音対策であれば、クッション性のある床材に交換する、遮音フローリングに床材を交換するなどと言った対策が可能です。お子様が成長するまで一時的な対策で良いのであれば、防音マットやカーペットを敷くことで対策は可能です。ただ、カーペットなどは、飛び跳ねた時の衝撃音などを軽減することはできません。
壁の防音対策
部屋を防音室にしたいと考えた時には、最も面積の広い壁の防音をどうするか検討しなければいけません。壁の防音対策は、遮音シートや吸音材を壁に設置することで高めることができます。そして、現在では、ホームセンターやネット通販などを利用すれば、壁の防音対策用の防音パネルなどが簡単に手に入るので、DIYで対策を施すことが可能です。
ただ、音は小さな隙間からも漏れてしまいますし、室内の音響を考えると、単に遮音や吸音対策を施せば良いというわけではありません。例えば、自分が生じさせる音を外に漏らさないよう、壁全面に遮音シートを貼った場合、音が室内で反響しすぎて、苦痛に感じるようになるでしょう。
防音対策は、音を防ぐことに合わせて、音響環境まで整える必要があるので、快適な防音室を実現したい場合、専門業者に相談するのがオススメです。
防音を成功させるためのポイント
それでは最後に、防音対策を成功させるためにおさえておきたいポイントをご紹介しておきます。音は、人によって感じ方が異なりますし、さらに音にも種類がありますので、適切な対策を施さないと、コストをかけたに何に効果もなかった…なんてことになりかねません。そこで、防音対策を行う時には、以下のポイントについては絶対におさえておきましょう。
- ・防音を施す場所の優先順位を決める
部屋を防音室にしたいと思った時には、防音対策を施すべき場所を検討しましょう。防音工事は、決して安い工事ではないので、きちんと予算と工事を行うことで得られるメリットのバランスを考えないといけません。無制限に予算が使えるというのなら、全ての部屋を防音室にすれば良いのですが、そういう訳にはいかないですよね。防音対策の優先順位を決めるには、「どの音を防ぎたいのか?」で決めると良いでしょう。例えば、自分が出す音で近隣の方に迷惑を掛けたくない(外部への配慮)なら壁や窓、換気口の対策が必要です。これが階下の人に対してなら床の防音が必要です。このように、防音工事は闇雲に行うのではなく、きちんと優先順位を決めて行うことで、無駄なコストをかけずに効果を望むことができます。 - ・隙間は音漏れの原因
DIYによる防音の失敗でよく見かけるのは、隙間を埋め切れていないという状況です。例えば、防音パネルを購入して自分で設置しているという場合でも、よく見ると部屋の端に隙間が残っているなんてことは非常に多いです。この他にも、壁に対して防音対策を行ったものの、換気口の対策を無視しているなんてケースも少なくありません。どれだけ高性能な防音材を購入しても、施工時に隙間が残っていれば、そこから音漏れが生じます。DIYで防音工事を行う時には、細かな隙間をきちんと埋めるようにしましょう。
まとめ
今回は、「部屋を防音室にしたい!」と考えている方に向け、防音室を作るための防音の基本について解説してきました。近年では、人々の在宅時間が長くなってきたことから、防音工事の需要が急激に高まっています。ただ、『防音』という言葉の意味をきちんと理解していない方も少なくないようで、悩んでいる音に対して間違った対策を施しているケースも少なくありません。
この記事では、防音という用語の基本から、具体的にどのような対策を施すのかまでご紹介していますので、ご自身で防音対策を施してみようとお考えの方もしっかりと覚えておきましょう。なお、防音工事は、皆さんが考えている以上に専門性が高い工事ですので、プロの防音工事業者からすると、材料を集めただけで高い防音性能を求めるのはなかなか難しいと思いますよ。