身近に存在する音の大きさと、防音室の遮音性能について

今回は、防音工事をご検討中の方が、その工事に失敗しないためにおさえておきたい、身近にある音の大きさや防音室の遮音性能について解説していきたいと思います。

最近では、楽器の演奏など、特別な理由などが無い場合でも、専門業者による防音工事を検討する方が増えています。例えば、幹線道路沿いの住宅であれば、外から入ってくる自動車の走行音を防ぎたいから、マンションなどであれば、階下の人に足音で迷惑をかけたくないからなど、日常生活の中で身近にある音の問題で、防音工事を検討する方が増えています。

そして、こういった理由で防音工事を検討した場合、業者との打ち合わせ時に『Dr-60』などと言った表記を見かけることになると思います。これは『Dr値(D値):ディーアールち(ディーち)』などと呼ばれるもので、簡単に言えば防音室の性能を表している数値と考えてください。ただ、一般の方からすると、このDr値の意味が良く分からないまま話を進めてしまっているケースが多く、後になって後悔してしまう方が多いのです。
そこでこの記事では、防音工事を依頼する前に押さえておきたい基礎知識をご紹介します。

「Dr値」って何?

それではまず、防音工事を検討しているのであれば、必ず押さえておきたい『Dr値(D値)「ディーアールち(ディーち)」』について解説しておきましょう。簡潔に言うと、Dr値と言うものは、防音室などの遮音性能をあらわす指標です。専門業者に防音室の工事を依頼した場合、見積書などと一緒に提案書が提出されるのですが、その時には工事後に出来上がる防音室の性能がDr-40やDr-50と言うように「Dr」と数字を組み合わせた値が示されます。そして、これが防音室の遮音性能を表していて、防音室の中で出す音が、防音室の外でどの程度まで抑えられるのかを客観的にわかるようになる指標と考えてください。

例えば、防音室内でピアノを演奏する想定をしてみましょう。それなりの腕の方がピアノを弾けば「100dB」程度の音量が出る楽器です。そして、防音室の外でどの程度の音の大きさになっているのかを計測してみたところ、「50dB」になっていた場合、50の音を遮っているという効果が得られていますよね。この時の防音室の遮音性能が『Dr-50』と言うように表記されるのです。つまり、Drの後ろについている数字は、どの程度聞こえなくなるのかを示していると考えておけば間違いないです。

防音室の目的は、「できるだけ外に漏れる音を小さくしたい」と言うものですので、遮音等級の数字が大ききれば大きいほど性能が高いと思っておけば良いですよ。

※2000年1月より、『JIS A 1419-1』が改訂され、それまで「D-○○」と表記されていた物が「Dr-○○」と表記されるようになっています。業者によって「D-○○」と現在でも表記している場合があるので注意しましょう。

身近にある音の大きさ

それでは、弊社に防音工事に関するお問い合わせをしてくるお客様がどういった音に悩んでいるのか、また身近に存在する音はどの程度の音の大きさになるのかをご紹介しておきましょう。当たり前のことですが、防音工事を検討する方であっても、悩みの種となっている音はさまざまな種類が存在しています。防音工事は、「自宅で楽器の演奏をする人が必要なもの」と言った感じで、特殊な要望を持っている人のみが必要とする工事と言うイメージが強いと思います。しかし近年では、生活音を防ぐという目的で防音工事の相談をしてくるお客様も増えているのです。

ここでは、身近に存在する音の種類とそれぞれの音量について分類しておきます。

音の大きさ 音の対象(楽器関連) 音の対象(生活の中にある音)
130dB 生ドラム
ロックバンド
落雷・聴覚器官にダメージ、影響が大きいライン
120dB ライブハウス 新幹線鉄橋通過時の音
110dB サックス
金管楽器
至近距離での自動車のクラクション
100dB ボーカル
ファゴット
オーボエ
ハープ
地下鉄の構内
地下繁華街の音
至近距離で犬が吠えた時の声
90dB ピアノ
クラリネット
VOCAL
フルート
地下鉄車中
パチンコ店内
間近で感じる滝の音
80dB ステレオ中音量
生ギター
ヴァイオリン
電話
ボーリング場
機械工場の中
幹線道路沿いの走行音
70dB 掃除機・大きい声・テレビの中音 新幹線車内・乗用車・レストラン・工場
60dB 一般的な家庭の朝・普通の声
トイレ洗浄音・テレビの小音
学校の授業・銀行内の音
50dB 日常でうるさく感じないライン
換気扇エアコンの音・小さな声
静かな事務所
博物館や図書館
40dB 静かに感じるライン
小雨の音
すやすや居眠り
市内の深夜・静かな住宅地の昼

防音室の遮音性能について

それでは、何らかの音を防ぐ目的で防音室を作る場合、その性能によって得られる効果がどう違うのかを分かりやすく表にしておきます。

マンションに防音室を導入する場合

まずはマンションに防音室を作る場合で考えてみましょう。

遮音
等級
バンド演奏(生ドラム不可)
シアタールーム
ピアノ
管楽器
Dr-85dB    
Dr-80dB
Dr-75dB 外部に音は全く聞こえないレベル
Dr-70dB 外部に音は全く聞こえないレベル
Dr-65dB 基本仕様(騒音トラブルの危険は少ない) 基本仕様(騒音トラブルの危険は少ない)
Dr-60dB 曲がわかるほど
聞こえる(騒音トラブルの危険がある)
Dr-55dB 夜静かな時に
聞こえる(騒音トラブルの危険がある)
Dr-50dB これより下は時間制限が必要 これより下は時間制限が必要
Dr-45dB
Dr-40dB
Dr-35dB
Dr-30dB

マンションに防音室を導入する場合、Dr-65以上の性能を持たせるのが安心です。

戸建て住宅の場合は、案件ごとに条件がかなり異なるので、その都度、詳細な現地調査を行い、プランを作る必要があります。例えば、庭付き一戸建ての場合、騒音トラブルの対象とは距離がそれなりに離れることから、防音室の性能自体はそこまで求められないのです。しかし、都市部の戸建てのように、家と家の距離が非常に近いという場合、マンションレベルの防音室が必要になるケースも考えられます。

まとめ

今回は、防音工事の基礎知識として、身近にある音の種類と大きさや、それらを防ぐ為の防音室の性能についてご紹介してきました。防音工事の打ち合わせを行う時には、『Dr-○○』と言った数値を頻繁に耳にするようになります。日常生活の中ではほとんど聞くことのない単位ですので、何を表す言葉なのかがわからず困ってしまうという方も多いと思います。

これは、出来上がる防音室の性能を表していて、簡単に言うと「どの程度音量を下げられるか」の数値だと考えておきましょう。要は、防音室内で100dBの音を出したとしても、Dr-60の防音室を作っておけば「100-60=40dB」となり、外部には騒音と感じないレベルの音しか出なくなるという意味なのです。この辺りの知識を押さえておけば、自分に必要な防音室のレベルがわかると思うので、この記事の内容はしっかり頭に入れておきましょう。

スタッフ A

大阪で20年間にわたって防音工事に携わってきました。
防音工事に関しての事、音に関する豆知識などを配信しております。

[trustindex no-registration=google]

古民家再生ショールーム防音工事の匠はショールームがあります

ピアノ防音室

実際に防音工事の匠が施工した防音室で防音性能を体験することで、当社の防音室の機能・音響などを体感していただけます。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物にショールームがある会社さんが多い中、特に施工後にショールームと性能や音の反響がちがうといったトラブルが戸建てのお客様に多い業界ですが、町家再生事業として難易度の高い防音室を防音性能が最も出にくいとされる木造町家のショールームをご用意いたしました。

このページの先頭へ