防音工事の基礎知識。防音・遮音・吸音の違いって知っていますか?
今回は、防音工事の基礎知識として、ご自宅の防音に関してインターネットなどで調べている時、必ず目にすることになる『防音』『遮音』『吸音』という言葉について、「それぞれが何を指しているのか?」についてご紹介したいと思います。
この記事を読んでいただいている方の多くは、何らかの音の問題を抱えてしまい、とりあえずネットで検索してみた…という方が多いのではないでしょうか。もちろん、音の問題と言っても「外から入ってくる騒音に悩んでいる…」という場合や、逆にご自宅から出ている音がクレームになってしまった…というように、真逆の悩みが考えられます。
近年では、マンションの様な集合住宅に住む方が増えており、近隣住宅との生活空間が非常に近くなっているため、音の問題は非常にデリケートになってきています。そのため、家のリフォームを検討する場合には「騒音を出さない・入れない家にする!」ということを重視する方が増えているのです。実際に、マンションに住んでいる方であれば、上階の住人の足音や椅子を引く音、ご近所さんの会話の声など、生活音に悩まされていた…なんて経験がある方は多いのではないでしょうか?逆に、ご自身の生活音が近隣の方に迷惑をかけていないか不安になってしまう…という方もいることでしょう。
こういった日常生活上の『音の問題』は、大きなストレスの原因となってしまうため、可能であれば解消したいと誰もが思うことでしょう。そこで、近年注目されているのが『防音工事』なのです。この記事では、防音工事を行う前に、皆さんがおさえておきたい防音の基礎知識をご紹介しておきます。
そもそも防音とは?
それではまず、「防音とは?」という点について簡単に解説していきましょう。そもそも『音』というものは、空気を振動させて人の耳に伝わるものなのですが、防音は読んで字のごとく「音を防ぐ」ということであり、外部の音が室内に入るのを防ぐことや、室内の音が外に漏れてしまうのを防ぐことを指しています。
そのため、何らかの騒音問題に悩んでいる方や、生活音や自宅で楽器を演奏する音が近隣住人に迷惑をかけないようにする対策として『防音工事』が行われているのです。しかし、当たり前のように使われている『防音』という言葉ですが、実は音への対策において『防音』というものは、具体的な対策や施工方法を指すものではなく、概念的なものなのです。
インターネットなどで『防音工事』について調べてみれば、さまざまな会社のホームページが表示され、そのサイトの中には『防音工事』や『防音施工』、『防音素材』などと言う言葉が使用されています。しかしこれらの言葉は、下で紹介する『遮音』や『吸音』がもたらす効果をお客様に分かりやすくするために『防音(音を防ぐ)』という言葉を使っているだけなのです。
つまり、防音工事や防音素材などと呼ばれるものは、実際には遮音や吸音を機能させる対策や素材のことを指しているのです。
『遮音』と『吸音』の違いとは?
それでは、実際の防音対策として行われる『遮音』と『吸音』について、それぞれがどういったものなのかについてご紹介しておきましょう。遮音と吸音がどのような特徴があり、どういった違いがあるのかをしっかりと理解しておけば、ご自身の環境に必要な対策も自ずと見えてくると思います。
『遮音』とは?
それではまず『遮音』がどういったものなのかをご紹介しましょう。上述したように、音は空気を振動させて人間の耳に伝わるものなのですが、遮音というものはそれを遮って音が伝わらないようにする対策のことです。遮音は、防音対策の中でも比較的に簡単に行える手段で、外部から内部に、または内部の音が外部に伝わることを『遮る』ものだと覚えておきましょう。
具体的な遮音対策の例を挙げると、2重サッシなどを用いて窓部分の遮音を行う、壁に厚く質量の重い素材を用いて音が伝わるのを遮るなどが有名です。こういった対策は、気密性の高い素材を用いて、空気と音を遮断することで、室内から外へまたは外から室内へ音が漏れることを防いでいるのです。
音楽教室などで、大きな楽器音が生じる場合に、音が外に漏れてしまい近隣に迷惑をかけてしまう…なんてことを防ぐ目的で、遮音性の高い防音室を作り音漏れの心配を無くすなどと言った利用方法が多い対策です。注意が必要なのは、遮音性を高めるあまりに、気密性が高すぎる部屋になってしまうと、室内で跳ね返った音が反響しすぎてしまうというデメリットがある点です。こうなってしまうと、音が聞き取りづらくなってしまう…本来の音と異なって聞こえてしまう…なんてリスクがあります。
『吸音』とは?
次は『吸音』についてです。防音が「音漏れを防ぐもの」、遮音が「音の伝わりを遮るもの」ですので、その名称からどういった対策なのかはある程度イメージできるかもしれませんね。
吸音に関しては、皆さんがイメージしているように『音を吸収する』効果を利用して室内から音漏れを防ぐほか、室内音の反響を限りなく抑えるものとなります。吸音は、「細孔(さいこう)」と呼ばれる細かな穴が無数にあいた素材を壁や天井に使用して音を取り込み、その穴で音を拡散させることで音を吸収します。吸音材として良く用いられるのはグラスウール、ロックウール、ウレタンフォームなどです。
吸音対策を行った事で、反射した音が小さくなればなるほど吸音性が高いという評価になります。吸音は、室内から外に音が漏れてしまうのを防ぐほかにも、室内で聞こえる音がクリアになるというメリットがあります。しかし、吸音性を高めすぎてしまうと、反響音がほとんどなくなってしまうため、演奏に迫力がなくなってしまう…音がなんとなく物足りなく感じてしまう…などと言うデメリットがあると言われています。
まとめ
今回は、防音工事の基礎知識として、『防音』『遮音』『吸音』それぞれの意味についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、騒音対策として行われる作業については『防音工事』や『防音対策』などと呼ばれるのですが、これはあくまでも概念的な話であり、具体的には音を遮る『遮音』と音を吸収する『吸音』対策をわかりやすくまとめているだけの言葉なのです。
したがって、何らかの騒音で悩んでいる方については、ご自身の環境によって必要な対策が全く異なるわけです。遮音や吸音にもさまざまな手法がありますので、「防ぎたい音」を明確にして、どういった対策を行えば良いのかを専門家に相談するのが最もオススメです。