ピアノやドラムなど楽器用防音室が欲しい!防音工事の計画で重要になるポイントについて
日本は、小学校時代の音楽教育があるからなのか、大人になっても楽器の演奏を行う方が多くいます。実は、2016年に行われた国による調査によると、推定人口(10歳以上):約1億1330万人に対し10.9%にあたる約1,240万人が楽器の演奏を行っていると答えているそうです。もちろん、これらの人すべてが楽器の演奏を生業としているわけではなく、趣味として自宅で楽器を楽しんでいるという方も多いと思います。
それでは、これほど多くの方が楽器の演奏を行っている中で、楽器の演奏音でトラブルになることはないのでしょうか?日本国内では、人々の生活空間が近くなっていることもあり、自宅で楽器の演奏を行う場合には、専用の防音室を用意するのがマナーだと言われるようになっています。実際に、我々のような防音工事業者のもとには、自宅に防音室が欲しいという相談が毎日のように入ってきています。
しかし、お客様からの防音工事のご相談をお伺いしている上で、少し気になることが多いのも事実です。というのも、防音工事に関する相談でご連絡いただく方の中には、防音室に関するご自身の希望などを何も考えていない場合があるのです。
防音工事は、「何を目的としているのか?」「どんな楽器を利用するのか?」「予算は?」など、最低限決めておかなければならない防音工事の計画があります。この辺りが分からなければ、業者側もお客様に最適な提案のしようがありません。そこでこの記事では、防音工事を検討している方が検討しておきたい防音工事の計画について解説します。
防音工事で考えなければならないポイント
ピアノやドラムなどの楽器用防音室だけでなく、カラオケやホームシアターなどの防音工事は、1年や2年使う想定で行うのではなく、工事完了後、何十年も使い続けることを想定しているはずです。
さらに、自宅に作る防音室は、日常生活にも密接に関係してきますので、さまざまな面についてきちんと計画を立てて工事を行わなければいけません。特に、防音工事については、次の3つの項目について事前に検討する必要があります。
- ・防音の目的を明確にする
- ・「音響」にどこまでこだわるのか
- ・予算と防音レベルのバランス
それでは、それぞれのポイントについて解説していきます。
ポイント1 防音の目的について
防音室を作るまでの防音工事については、「なんのために防音工事を行うのか?」という目的を明確にすることが大切です。
一口に「楽器」と言っても、さまざまな種類の楽器が存在してそれぞれの楽器ごとに音の特徴が異なります。例えば、フルートなどの管楽器の場合、空気音の対策を主に行っておけば良いのですが、ドラムのような打楽器やピアノなどは、振動音(固体音)の対策が重要になります。
したがって、楽器用防音室を検討している場合で、「自分はサックスの演奏を行うけど、奥さんがピアノを弾く。たまに友人がギターを持ってくる」などと言った場合に、防音室を作ろうとするのであれば、「ピアノの防音室」や「サックス用の防音室」と楽器を限定するのではなく、他の楽器の特性も考慮に入れて防音室の性能を検討すべきです。
ちなみに、これはカラオケやホームシアター用の防音室を作る場合も同じで、その防音室で楽器の演奏も考えているのであれば、最初の計画の段階で業者さんに相談しておきましょう。
防音室と聞けば、どのような音でも防いでくれると考えがちですが、専門業者の作る防音室は、お客様の要望とご予算に合わせて性能を持たせます。そのため、あらかじめお聞きしていた条件を逸脱するような使い方をすると、音漏れが生じる可能性があります。
ポイント2 「音響」にどこまでこだわるのか
楽器用防音室などの防音工事は、「自分が生じさせる音で近隣に迷惑をかけないようにしたい」など、「周りにいかに音や振動を漏らさないか」を重視するのが一般的です。防音室工事のほとんどは、音漏れを防いで騒音トラブルを防止するというのが目的ですので、防音性能に着目するのは当然と言えば当然です。しかし実は、防音室内で楽器の演奏をする人のこともきちんと考えておかないと、防音室完成後に後悔してしまう可能性があるのです。それが、防音室の音響環境についてです。
楽器用の防音室は、「音漏れで迷惑をかけない」以外にも、「楽器を心ゆくまで演奏したい」「大声で歌いたい」などの希望もあるはずです。またホームシアターなどであれば、映画館さながらの良い音で映像を楽しみたいと考えるはずです。
つまり、防音室を作って音漏れがしなくなったとしても、音響環境が悪く、音そのものを楽しめなくなった場合、防音室を作る目的の半分は叶えられていないのと同じとなってしまう訳です。防音工事の目的が、「上階の足音を聞こえなくしたい」とか「外部騒音の侵入を抑えたい」というものであれば、音が聞こえなくなる、もしくは気にならなくなる程度まで小さくできれば、防音工事としては成功です。
しかし、楽器用の防音室は、音漏れが防げた上で、演奏者は音を楽しめる環境を作らなければ、満足のいく防音室とはなり得ないわけです。
特に、プロの演奏者の方で、長時間防音室での練習を想定している場合、音響環境を無視すると、室内で音が反響しすぎてしまうことで、頭がキンキンして長時間滞在することができなくなる可能性があります。これは、ヤマハの「アビテックス」やカワイの「ナサール」など、既製品のユニット型防音室で良く聞く話で、防音室が狭いことから防音するのが精一杯で、音響まではなかなか理想通りにならず、防音室の導入を後悔してしまうというケースが一定数あるようです。
防音室の音響環境は、「使用する楽器などの種類」や「部屋の大きさや建物の構造」によって設定が変わるため、皆さんが考えている以上に難しいです。したがって、防音工事を検討した時には、業者さんに音響についても相談や提案をしてもらうと良いでしょう。なお、防音室の音響環境に関して質問したのに、まったく要領の得ない回答しかできない防音業者だった場合は、他の業者に相談すべきです。
ポイント3 予算と防音レベルのバランス
防音室を作りたいと考えている人は、「限られた予算の中で、最高の性能を持つ防音室を作りたい」と考えているはずです。「防音室を作るためなら、いくらでも予算をかけられる!」なんて方はほとんどおらず、各々が予算の上限を決めていると思います。
ただ、予算に上限があるとはいえ、防音工事業界の相場を無視して「プロ仕様の完璧な防音室を10万円以内で作りたい!」と考えても、それはやはり無理です。
防音工事にかかる費用については、防音室の広さや防音性能が主な要因で上下しますが、このほかにも、エアコンの有無や内装デザイン、インターネット環境などの条件によって変わってきます。したがって、あなたが防音室に求める条件と、予算のバランスを調整しながら、防音工事の内容を調整していかなければいけません。一般的にですが、防音室を作るまでの工事となると、「予算」に対して、防音室への「理想」の方が大きくなります。したがって、最初はあなたが考えている防音室の使い方と防音工事に使える予算を業者にぶつけてみるのがおすすめです。防音室を計画する場合は、「何を最優先したいか」「これとこれは、絶対ゆずれない」など、あなたの希望を明確にして、それを業者さんにぶつけることで予算内で実現可能かどうか判断してもらうことができます。例えば次のような感じです。
- ・ピアノを24時間気にせずに演奏できる防音室にしたい。予算は150万円までで考えています。
- ・大音量でホームシアターを楽しみたいでけど、リビング兼用にするので内装もこだわりたい。予算は300万円を上限で考えています。
- ・基本はピアノ用防音室だけど、息子がギターを弾くのでギターの演奏も考えている。
このように、防音室の目的や使い方について、具体的な希望を検討しておくと良いでしょう。お客様の希望が具体的であるほど、防音室の提案も的確なものとなります。
なお、予算については、あくまでも目安と考えておきましょう。優良な防音工事業者であれば、予算に合わせた提案だけでなく、希望を叶えるためにかかる費用についても納得のいく理由と一緒に説明してくれるはずです。防音工事は、通常の居室以上に多くの建材を利用しますし、ドアや窓などは特殊な建材を使用します。そのため、一般的な住宅リフォームよりも割高な費用がかかるのが一般的で、お客様の予算によっては全ての希望を叶えることが難しいケースも少なくないのです。そのような場合でも、次のような提案をしてくれる業者さんであれば、信頼できると思います。
「予算200万円だと、深夜まで楽器の演奏に耐えられる性能は難しいです。周辺の環境騒音的に、19時以降の演奏を控えれば、予算内で苦情の心配がない防音室が作れます。
ちなみに、ご希望通りの防音室を作る場合は、ご予算を50万円ほどオーバーすると思います。」
このように、予算と防音性能のバランスを分かりやすく提案してくれる業者さんが安心して任せられると思います。
まとめ
今回は、自宅で楽器の演奏を検討している方やカラオケ・ホームシアターを作りたい方などに向け、専門業者による防音工事の前にしっかりと検討しておくべきポイントをご紹介しました。
防音工事の施工そのものについては、当然、業者さんに任せるしかないのですが、施工に入る前の「防音室の計画」まで丸投げしてしまうと、あなたの要望に最適な防音室を作ることはできません。防音工事業者は、お客様の要望やご予算をお伺いし、それに合わせて防音工事の計画を組んでいきます。つまり、お客様側に明確な要望が無ければ、適切な提案を行うことが難しいわけです。
この記事では、防音工事の前に考えておくべきポイントをご紹介していますので、参考にしてください。